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王都到着。え?王様に謁見ですか?!


王都に到着すると、まず騎士団詰所に入り団長の執務室へと案内される。

すると扉を開いた先から飛び出してきたのは、綺麗な赤い髪にエメラルドグリーンの瞳の美人さん。

その美人さんは迷うことなく団長に向かっていき、思いっきりむこうずねに蹴りを入れていた。

見ているしか出来ないが、この美女さん強いわ……。

両手を広げて油断してた団長は、声にならない声を上げてしゃがみこんでいる。


「まったく、黒の乙女様が現れたおかげで助かったものの。私を未亡人にするとこだった落とし前は、これで許してあげましょう」


言う前に足が出てます……。

とっても快活で、男前美人な姉御がそこにはいました。

私、こういう美人さん大好きだ!

つい目をキラキラさせて眺めていると、美人さんが気づいて声をかけてくれました。


「黒の乙女の前で失礼致しました。この、筋肉バカの妻で騎士団の事務官のマリア・アルバ・ミレイドです」


上品な仕草なのにニコっと笑うと可愛らしくもなる、とっても素敵な美人さんに私もニコッと笑って答えた。


「三島優羽です。ここではみんなユウって呼んでくれますので、マリアさんもユウって呼んで下さい! 今の蹴り、最高でした!」


「あら、ユウちゃん良く見てたわね」


「はい! あの、油断し切ったところにむこうずねは、流石としか言えません!」


変なところで意気投合する私とマリアさんにため息を着いてベイルさんが突っ込んだ。


「マリア、話が出来ませんのでとりあえず、ここの執務室に入りましょう」

「それもそうね! 先に入って待っててちょうだい。お茶を……」


そこにひょっこりと顔を出したのは、マリアさんにそっくりの瞳と髪の可愛い女の子だった。


「お母さん、それは私がメリッサおばさんに頼んでくるから。お父さん部屋に突っ込んで。さっさとお話、始めた方がいいよ」


そういうなり、クリストフさんはサラッとスルーして彼女は歩いて行ってしまった。


「ジェシカ、よろしくね」


そうしてとりあえず、団長執務室で今後の話し合いをする事になったのだった。


「いきなり、こんなでごめんなさいね。さて、黒の乙女が現れたということは、やはり四方の砦と周辺国の近況は変わらず。むしろ悪化していると見ていいのかしら?」


そう言ったマリアさんに、ベイルさんが答える。


「各砦からも、そのように報告が上がってますね。一番キナ臭かった西を撤退させましたが、今後は北か東が危ないでしょう」


それに頷きつつ、マリアさんが続けた。


「むしろ、どこかしらが手を組んで同時に攻めてこられると、こっちは大変だわ」


それにベイルさんが深く頷き、言った。


「ですので、早急に我が国に黒の乙女が顕現した旨を、周辺各国に知らしめねばなしません」


もしや、私これから結構大変なことになるのかな?

平穏無事に暮らせるようになるのは、どうやら当分先になりそうだ。

イベルダは現状周辺国に狙われていて、情勢が落ち着いてないみたいだし。

救世主って言われるくらいなんだから、そういう状況も仕方ないよね……。

出来るだけ、上手いことやれたら良いんだけどな。

戦争は双方に被害が出るから、出来れば回避したいなと思ってしまうのは、平和な国に育ったからかな。

そうだとしても、私にあるのは癒しの術と魔法の力だから。

それを頭使って考えて、平和的解決へと使っていくしかないんだ。


そして、平和になったら街中にこじんまりとしたお家を貰うなりして、ゆっくりのんびり暮らす。

それを目標にして、やれることをやって行こう。

私の中での方針が決まれば、私はここの話し合いがまとまるのを待つばかり。

白虎柄の子猫を撫でつつ待っていると、ジェシカちゃんが割腹の良い女性と共に戻ってきた。


「お待たせしたねぇ、本当に黒髪に黒目なお嬢さんだね。生きてるうちに、黒の乙女に会うことが出来るとはねぇ」


「メリッサおばさん、ありがとう」


「ジェシカちゃんの頼みだからね。今度はお菓子も作っておくからね!」


お茶を持ってきてくれたメリッサさんは準備だけすると、さっさと部屋を出ていった。




持ってきてくれたお茶を飲んで一息つく。


「あー、やっぱりメリッサさんのお茶はイイわー」


すっかり、ほやーんとお顔の表情が緩んだマリアさんに、ジェシカちゃんもホッとしている。


「ジェシカ。お父さん、帰りました」


やっと落ち着いたらしいクリストフさんが声を掛けるも、ジェシカちゃんにツーンとそっぽ向かれてしまい、かなり落ち込んだ顔をしたものの、今後について話を進めねばならず、泣きつつ立ち直っていた。

お父さん、ファイト……。 そっと涙を拭って見守っていたら、ベイルさんに声を掛けられた。


「ここの親子はいつも、こんな感じなので、お気になさらず。さて、ユウ様。私か団長のどちらかを後見人に選んでください」


そのベイルさんの言葉を聞いて、マリアさんとジェシカちゃんの目がキラリと輝いた。


「ユウちゃん、うちを選びなさいな! ジェシカも喜ぶし、アラルもきっと喜ぶわ!」


なんと、マリアさんにはもう一人お子さんがいて二児の母なんだとか。

アラルくんはまだ小さいので、詰所の別の部屋で乳母さんが面倒見ているらしい。


「マリアさんとクリストフさんが、ご迷惑でなければ……」


私の返事にジェシカちゃんが嬉しそうな顔をして、寄ってきて声を掛けてくれる。


「ユウ姉様って、呼んでいい?」


ズキューン!!

可愛いは最強で、正義だ!

こんな可愛い子に、そんなこと聞かれたら私にイエス以外の返事はない!

「もちろん、ジェシカちゃんが呼びやすいように呼んでくれていいの!」


思わず抱きしめていると、マリアさんが羨ましそうに言った。

「あら、ユウちゃんずるいわ!私もぎゅーさせて!」


三人でギューッとして和気あいあいとしていると、ベイルさんがモノクルを上げて聞いてきた。


「それでは、後見人は団長でよろしいですね?」


「はい、マリアさんにジェシカちゃんも良いと言ってくれてますし。団長、お願いします」


私が頭を下げると、クリストフさんはニカッと笑って言った。


「もちろん、歓迎だ!ユウは今日から我が家の娘だからな!」


こうして、私の後見人は団長にお願いして今日から団長であるクリストフさん一家の一員となることになった。

そんなクリストフさん一家、実はこの国の伯爵家だそうで貴族でした! 貴族になるとか聞いてないよ!?


「大丈夫よ! ユウちゃんにはこれから色々と教えるから」


バチッとウィンクがよく似合うのも、美人さんの特権だと思う。


「よろしくお願いします、マリアさん」


「ユウ姉様、一緒に頑張ろうね!」


そうだね、ジェシカちゃんと学ぶくらいがちょうど良い感じだよね。

むしろ、最初は教わりそうだよね!


「ジェシカちゃん、よろしくね! 色々教えてね」


そんな感じで決まってホッとした所に、執務室のドアをノックする音が響き、騎士さんがなんだか神経質そうな男性を引き連れてやって来た。


「こちらに黒の乙女がいらしたと聞きおよびまして、お邪魔させていただきました」


神経質そうな男性が話すとそれに応えたのは、ベイルさんだった。


「さすが、兄上。情報が早いですね。さて、御用はなんでしょう?」


この方、ベイルさんのお兄さん? 確かに似てるけど! 雰囲気とか知的な感じもそっくりだし、兄弟なんだね。


「宰相閣下自らおいでとは、やはり黒の乙女は我が国にとって重要だと言うことですね?」


二人に割って入ったのは、もちろんクリストフさん。


「それは、もちろんでしょう。歴代の黒の乙女が残した功績を考えて、迅速に対応するのは当然です」


そこで区切ると、宰相だというベイルさんのお兄さんは私に視線を合わせて言った。


「私からは、国王陛下が会いたいと言っておりますので、早急に謁見頂きたく案内に参りました。ご一緒頂けますね?」


め、目力半端ないですね……。

流石は宰相閣下。

これは、断れるものでもないよね。

国王陛下に会うのにこの、普通なワンピースで良いのだろうか? 移動してきたばかりで、私の格好はシンプルなワンピースに乗馬用のパンツを合わせていた不思議な格好のままである。


ワンピースにパンツ合わせるのは現代日本ではアリだったけれど、この国ではこれアウトではないかしら? と考えてしまう。




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