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空港にて

作者: 紅鶴蒼桜

人々が行き交う飛行場

その中をゆっくりと歩く少女が一人。

大きな旅行バッグを引きずりながらトコトコと歩いて行く。


「何か騒がしいわね」

前方で騒ぎがあったらしい。

気にせず横をずんずんと進むと、

「おいコラ。ここは通行止めだぜ」

と、男が拳銃を片手に通せんぼしてきた。

周りを見ると何人もの人が通れずにここで止まっているようだ。

仕方がないので周囲の人と同じ様に立ち止まる少女。

「ちゃんと時間までに乗れればいいけど」

と呟く。



拳銃を持った男達は5、6人はいるようだ。

その中のリーダーらしき男が叫んだ。

「おい、てめえら。ここで荷物検査をするぜ、金目のものがあったら出しな、ケータイもだ」

荷物を開けて金や金目のものがあったら取り上げてゆく。抵抗しようにも武器を持った男達がこちらに照準を合わしているのでそれも出来ない。

「や、やめて」

女の子が男達の一人に髪を引っ張られて引きずられて行く。顔にあざが見えた。

「こいつ、助けを呼ぼうとしてたんだぜ」

「それは想定内だ。とっとと取っちまって早くずらかろうぜ」

早めに逃げても捕まると思うけどな、という言葉は飲み込んだ。

少女は自分が乗る時間を確認してとりあえず事の成り行きを見ていた。

「おい、お前いい旅行鞄持ってるな。何か良い物でも入ってるのか?」

男が少女の鞄に手を伸ばす。

「私の事はほっといて。早くやることやって帰りなさい」

少女はしっ、しっと手を振る仕草をする。

「オイオイ。お前、自分の立場が分かってんのか?」

男が少女に拳銃を向けた。

少女は、

「ふぅやれやれ」

と呟いた。



少しして、リーダーらしき男が、

「おい、そろそろずらかるぞ」

が、声を聞いて駆け寄るのは数人のみ。

「おい、他の奴等は?」

見回しても仲間らしき男達はやけに少なくなっていた。

「どういう事だ?怖くなって逃げやがったのか?」

「それはないと思いやすが」

見渡して、

「こっちの奴等が主に見当たりませんぜ」

男達が騒いでこちらに拳銃を向ける。

「おい、俺たちの仲間はどうした?」

銃を向けられて人々が怖々ととある少女を前に差し出す。

しかし差し出された少女は怖がりもしない。

「あらあらあら、まあ、怖い。私をどうするのかしら?」

おどける様なその仕草が、男の心をさかなでした。

「おい、死にたいのか!」

拳銃を向けた。


するとフッとその両手が、

肘から先が無くなった。


「ぎ、ぎゃぁぁ!」

手が無くなった男は混乱して後ずさるが。


次に腰から下がいきなり消えた。

男の身体が床に落ちた。そして、

「た、助けて」

と言う男など最初からいなかった様に消えてしまった。

後には何故かバリバリと咀嚼音だけが残っていた。


男の仲間達は混乱だ。さっきまでいた奴が目の前で消えたのだから。


「おいコラ何をした?」

リーダー格の男が怒鳴ってきた。

「あら、貴方も同じようになりたいの?」

「っ!」

一瞬ビビったあと、

「相手はガキ一人なんだ、複数でかかれば怖くない、お前達、かかれ!」

数人が少女に拳銃を向けてきたが、先程と同じ様にそれぞれが、腕が消え脚が消えてそしてそこに居た存在すらも消えていった。

あとには絶叫の残滓と何か食べたかの咀嚼音だけ。

「ひ、ひぇぇ」

男一人が逃げて行く。

パン、と乾いた音が鳴った。

「逃げるな」

リーダーの男が硝煙を漂わせて、

「ふうん、なるほどな」

と一言。

「少し見てたが影らしきものが仲間を喰われた正体か」

とこちらを見て言う。

「だったらなんなの」

少女が呟くとリーダーの男は

「こうするんだよ」

バンバンッ

銃弾が次々に照明に当たり粉々にしてゆく。

明かりが無くなって辺りは薄暗い。

「これで影の攻撃は出来ないだろ、さあどうするお嬢さんよぉ」

リーダーの男は拳銃を少女に向けた。

少女はあどけなさが残る顔で、

「そういえば、私の荷物の検査、まだだったわね」

と両手で、

「ほら、開けるわよ」

そう言うと自分の大きな旅行鞄を開けた。

その瞬間、男は見た。

中は何も無かった。

真っ暗だった。

ただ黒の中心で大きな瞳だけがこちらを見ていた。

リーダーの男は何故か寒気がした。

「ひっ」

そして逃げようとしたが鞄の中から何本もの黒い腕の様な物が素早く出て、ガシッと男の体を掴んで鞄の中に引きずり込んだ。

身体が完全に消えると鞄が閉まって鍵がカチャとなる音と咀嚼音、男の絶叫だけが辺りに響いた。

その音も聞こえ無くなると、少女は、

「さあ、邪魔者がいなくなったから早く帰りましょうか」

と言ってスタスタと歩き出す。

少女が去ると、他の旅行者達も我先と走って逃げて行った。


結局は事件にならなかった。

強盗犯たちが誰も居なかったからだ。

少女が何かしたという情報もあったが、監視カメラの映像が何故かその部分だけ無かった。

結果、何も分からずこれは闇に葬られた。



そして少女はと言うと、

「もー、飛行機遅れたじゃないのさ!」

一人地団駄を踏んでいたのだった。

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