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北方戦闘記録 -JGSDF Battle Of Hokkaido 2030-  作者: まっとん
千歳地区奪還
1/3

北海道が暑いのは常識

いつこの戦いは終わるのだろうか。

いつからこの戦いは続いているのだろうか。


(あきら)はそんな同じようなことを何回も考えながら虹色の空を見てはため息をついて、そしてまたペンキで周辺の物品を塗っていくというルーチンを繰り返している。


熱で蒸れて痒くなった頭を作業帽で何回もかいてはまた被り直す。本州出身の隊員は嫌な暑さという。ただ暑くて不快なのではなく、やつらに操作されたことにより異状な高湿度が不快なのだ。


しかし、自分はずっとここで育ってきたからもうこの暑さにも慣れた。自分が生まれた頃はまだここは全国でも気温が低い地域だった。今でも緑の沢山あった風景を僅かに覚えている。しかし、自分が小学校に入学した頃からこの暑苦しい気候は始まった。その原因は恐らくこの空を覆う"膜"のせいだろう。

そして、やつらはどこからともなく現れたのだ...


「ここから先死にたくなければ早く塗装を終わらせろよ!戦いは待ってやくれないんだ」

「わや...」


つい愚痴が口から出てしまった。

部隊指揮を任されている1曹が何度も分かりきっている指摘をする。上にそんなこと言われなくても分かってる。砂漠地域でこんな森林迷彩なんて良い的だ。こっちだって出来るなら早く終わらせたい。

しかし人手不足な上にLAVと戦車4両、それに各物品の塗装作業だ。つい数ヶ月前までまだここはデザートカラーの必要な地域では無かったが侵食されてしまった。


当初の予定では自分たちの戦車中隊は千歳地区進出後各部隊と合流し、普通科小隊と戦車3個中隊で攻撃に移ることになっていた。しかし敵の待ち伏せに会い合流前に戦力を大幅に削られた。まさか6両も行動不能になるとは思わなかった。敵は戦車6両の2個小隊編成だった。数ではこちらの圧倒的有利の筈が良いようにやられた。原因は性能の差だ。今の時代、もう90では限界なのだ。


90とは正式名称90式戦車。1990年に正式採用された第三世代戦車だ。主砲の120mm滑腔砲を移動しながら撃つことによる高い攻撃力と複合装甲による高防御力が売りだ。重量50.2tという重さや、当時ソ連の脅威が囁かれていたこともあり、ここ北海道に限定配備された。


自衛隊は物品愛護の精神から日頃から細かい整備を欠かさない。そのため古い戦車でも未だに稼働率は高い。配備開始から50年が経った老戦車を未だに運用していたのだがついに限界がきた。いや、本当はとっくに限界だったのだ。無理に運用していた結果が戦車6両と10名を失うこととなった。

敵の戦車は恐らく4.5世代の無人戦車。以前鹵獲しようと試みた戦車隊員がいたらしいが、車内に乗り込んだまでは良いが、その時隊員の乗った戦車が勝手に動き出し、他戦車の射線上に出ていき

囲み撃ちされた。

なんとか撃破した車両の調査をしようにもセキュリティが働き自爆するので調査もままならないのだ。


敵の待ち伏せに会ったのが1週間前。そして昨日本州から主力の10式戦車二型が4両新戦力として加わった。港に比較的近いため戦車の補充は短期間でできた。しかし、それでもまともに敵の戦車と戦えば確実に殺られる。改修を重ね、3.5世代だった10式戦車から10式戦車改、10式戦車二型とバージョンアップをしてきたがそれでも楽観的に見積もって第4世代だ。4.5世代と正面から戦うのは厳しい。


ともかく今はそんなことを考えている余裕はない。今は早くこの10の塗装を済ませないといけない。作戦地域が砂漠化していることなど情報に無かった本州の整備隊は10を一通りの整備をしてそのまま送ってきたのだ。仕方ないとはいえお陰で小隊の隊員はペンキまみれだ。


今日もこの北の大地は暑い。気を抜けば敵の戦車砲で簡単に天に魂を持っていかれる。それがここでは当たり前なのだ。


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