これは困った
趣味なので定期更新を期待しないで……
その戦争はものの3日で片がついた。
バイソンの群れが荒野のアリを踏み潰している、ハルはそう思った程だ。
もともとまともな建築技術も持っていないような遅れた国だ。
苦戦する事も無いと思っていたが、差し引いても圧巻の結果。
そして、将軍であるハルは国の英雄として凱旋。
全ては順調に思えた。
ただ一つを除いては……
リヴィウス王の第一声は意外なものだった。
「おぉ、よく来てくれた。先の戦争時には世話になった。君の提案したの西洋の兵法は実に革新的だった。」
今日はリヴィウス王から直接話があると、王都の一つエルドラのシーンヨーク城に呼ばれていた
「国の中でもね、君の評判は日に日に大きくなっているよ。」
一見王から直接賛辞を貰い名誉な事のように思えるが、リヴィウス王はこんな事で部下を呼びその働きを激賛する男ではない
変だな、ハルは漠然とそう感じた。
「今回はそんな君の功績を称え褒美を与える事にした。喜べ…」
ゆうに3秒は溜めた後リヴィウス王は続けた。
「土地だぞ」
一瞬何を言ったのか分からず、いや、言葉は聞こえても理解ができず、短い沈黙が王の間を包んだ。
領土だって……
まさか、あのリヴィウス王が家臣に土地を?それに土地と言っても……
「それは大変光栄なお話です。しかし恐れながら陛下、この国にもうその様な土地が残っておりますでしょうか……」
そう、この国にはもうそんな土地は残ってない。この国を作った時に王族同士でで土地を分けてしまったからだ
そしてその事は、ハルでなくとも国民の皆が知っている事だ。
しかし、王は余裕を持って続けた
「何を言ってるあるではないか、豊かで広大な土地が……」
だからそんな土地はもう……
その時、最悪の考えが一つ頭に浮かんだ
でも、まさか……
「まだ分からないか?先日、君が自ら平定した土地があるじゃないか。」
はっとなって顔を上げる
見ると王のが口角グニャリと上に上がったのがわかった。笑っている……恐怖と驚きで思わず目を伏せた。
「ここから700ノーム離れた元ロト王国のあった場所に城を築いておいた。直ぐに入城してくれ。新しい国に王、と言っても公国の王だが、それでも王が居なくては始まらんからな」
体の先から血の気が引くのが分かる。
最悪だ……
ハルは思った。
こんなものは褒美でも何でもない。王都から700ノームだって⁉︎冗談じゃない。馬を走らせても10日はかかる。
明らかにこれは罰に近い
「いや、恐れながら王。考える時間を頂けませんか」
どこだ、どこで王の怒りを買った
だいたいどうして私なんだ……
ハルの頭は、今までにない速度で回転していた。が、答えは出ない。
「ハル貴様何か勘違いをしているな。私は行って見るかと提案したのではない。行けと命令しているのだ」
「しかし、王……」
「黙れ!」
ピシャリと反論を打ち切られた。
そして、予想もしない言葉が返ってきた。
「いいか心して聞け。貴様には今、逆心の疑いがかかっている。早急に王都から出ていかねば首を刎ねねばならない。言っただろう、貴様の評判は日に日に大きくなっている。」
この時初めてハルは理解した
そう、ハルは人気を取りすぎた。そして王の怒りを買ったのだ。たとえハルに逆心など欠片もなくとも、もし万が一あった時、ハルが兵を率いて戦争に来た時、果たして止められるか、リヴィウス王は考えたのだ。
そして、島流しに近いこの方法にたどり着いた。
たとえ自分を脅かす存在であったとしても、証拠もなくいきなり一将軍、あまつさえ今国の英雄と言われている男の首を取ってしまうほど、リヴィウス王は耄碌していなかったのだろう、下手をすれば国民の反感を買いかねない。
しかし、今言える事は一つ、命令に従わなければ首を刎ねる理由をむざむざ与えてしまう事になる。
覚悟を決めるしかない
ハルは軽い深呼吸をして、肩の力を抜いた
「謹んでお受けいたします」
そう力強く答えた
次の朝、土けむりで咽せ返るあの国目指し、ハルは王国を後にした
また三ヶ月以内には書きますm(__)m