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雲、溶けて
仰ぎ見る空には、透き通るような青さがありました。
寒さの増して来た、ある冬の日のこと。
刺すような寒気は、昼の日射しに緩んでいました。
微かに残る薄雲が、空の単色にグラデーションを作っています。
太陽から少し外れた空に、一片。
千切れた雲が、ぽつんと浮かんでいました。
ぼんやりと、眺めていると。
ゆっくり薄れて、青さの中に溶けて行きました。
雲が消えて、残った青空も束の間。
暫くすると、空にはまた他の雲が流れて来ました。
思いの外、上空の風は強いのでしょう。
照らされた雲の群れが、溶け残った雪の様に輝いていました。
溶けて、流されて。
変わって行くことの自然に、焦り戸惑うのは自分くらいで。
移ろう空の表情は、淡々と時の経過を伝えて行きます。
浮き雲一つすら、掛替えなどないのでしょう。
出会うのは、いつも一度きりです。
撮影日2015年12月20日




