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魔法

「そう言えば、ポルちゃん以外のモンスターって何してるの?」


素朴な疑問。


「みんな自分の家にいますよ?」


「家?家あるの?」


「家くらいありますよ。何だと思ってるんですか、モンスターを?」


モンスターの存在は知ってても、生態とか何にも知らない。


ダンジョンに現れて、勇者や剣士に倒される位しか知識がない。


「まさかとは思うけど、お店とか町とかも、あったりする?」


「当たり前じゃないですか!ありますよ、お店も町も。私達だって生きてるんですよ。買い物だってしますよ。」


あるんだ、町。


どんなだろう、モンスターの町って。


お店って何売ってるんだろう?


あー、見てみたい!


「ポルちゃん、私を町に連れてって!」


「へ?え?」


「連れてって!行ってみたい!お願い!」


「ま、待って下さい!私の一存じゃ決められません!ちょっと聞いてきますので、待って下さい!」


「えー、ポルちゃん、優秀な執事なんでしょ?だったらいいじゃん。」


「それとこれとは話が違うんです!私の勝手に決められることじゃないんです!分かってくださいー。」


あんまりいじめると泣いちゃいそうだから、ポルちゃんの言うことを聞くことにした。


…のに、ポルちゃん、全く聞きに行こうとしない。


鼻唄混じりに小さなはたきを持って、本棚の掃除を始める始末。


いつになったら行動するんだ!


「ポルちゃん?聞きに行く気、ある?」


笑顔で振り向いて、何か言いそうになったのに、私の顔を見てポルちゃんの顔色が変わった。


「もしかして、怒ってます?」


「私はね、行ってみたいの。でもポルちゃんいじめてもかわいそうだと思って無理強いはやめたの。それを…」


「はわわ!わ、分かりました!今すぐ聞いてきます!」


ポルちゃんは慌てた様子で跳ねて行った。


かなり慌ててるのか、途中で『ベチャ』っと音がした。


あれは絶対こけたな。





ポルちゃんが部屋を出ていってから1時間が経過したのに、まだポルちゃんが戻ってくる気配がない。


私がモンスターの町に行くことは、そんなにいけないことなのかな?


ベッドに横になって天井を見ていたら、お腹が鳴った。


そう言えば、何にも食べてない。


起き上がって部屋を見渡したけど、元々私の部屋には食べ物なんてなかったんだから、そうそう都合よく食べ物があるはずもなかった。


「あー、お腹空いたー。こう、目の前にボンってご馳走でも出ないかなー」


そう言いながら手を振りかざしたら、手からボワンと煙が現れ、目の前にテレビでしか見たことのないようなご馳走が現れた。


「え?嘘?何これ?」


触れてみると、温かくて、ちゃんと存在してる。


幻じゃない。


おまけに凄い良い匂いまで立ち込めてくる。


お腹が激しく鳴り、口の中にヨダレが溢れてきた。


「これ、食べちゃっても、いいよね?」


誰もいないのに、そう尋ねていた。


食べてもあまり支障の無さそうな、バスケットに入った真っ白いパンに手を伸ばした。


焼き立てなのか、まだ温かく、たまらなくふわふわしてる。


「いただきます!」


パンにかぶりつくと、想像していた以上に柔らかく、それでいてしっとりしてる。


小麦の香りとバターの香りが鼻を抜けていく。


お腹が空いていたからか、あっという間にパンを食べ終えてしまった。


けど、まだまだ食べ足りない。


「いいよね、食べちゃって」


辺りを見渡してみたけど、やっぱり誰もいない。


「冷めちゃったら料理が台無しになるから、食べちゃうよ?」


誰も聞いてないのに、言い訳のようにそう言うと、私は料理に口をつけた。


金色に輝くばかりのスープは、見た目からは想像ができないくらい濃厚な鳥の味がするのに、口当たりはとってもあっさりしていて、あっという間に皿は空になった。


丸く型どられた、カラフルな何かは、ゼリーみたいな食感の中に、様々な野菜がバランスよく入っていて、周りにかけられたソースと絡めるとまた違った味になり、驚くほど美味しい。


「こ、これってトリュフってやつじゃない?」


程好く焼かれたお肉の上に、薄っぺらくていびつに丸い黒い物が乗っている。


ナイフとフォークでお肉を切り、上にその黒いのを乗せて、ソースを付けて食べると、口の中に肉汁が溢れ、お肉がまるで溶けていくように無くなっていった。


夢中で料理に食らい付き、気が付いたら皿はきれいに空になっていた。


「食べちゃった…怒られるかな?…でも、これ、誰が用意したんだろう?…まさか私が出したとか?ないない、そんな魔法みたいなこと…」


その時、大賢者様の言葉を思い出した。


私、尋常じゃない魔力を持ってるんだっけ?


まさかとは思うけど、私が出したのかも。


「ないとは思うけど…」


何かを出せるかもと、手を振りかざしてみた。


ポワンと手から煙が出て、空になった食器が消えた。


「嘘?!消えちゃった!」


もう一度手を振りかざすと、今度はデザートがたくさん出てきた。


また手を振りかざすと、デザートは跡形もなく消えてしまった。


少し、デザートが食べたいとは思ってたけど、まさか出てくるとは。


じゃあ、私が具体的に出したいものを思い描けば、もしかしてそれが出てくる?


具体的に何かを思い描こうと目を閉じたら、浮かんできたのはポルちゃんで、次の瞬間、手からまたポワンと煙が出て、目の前にポルちゃんが表れた。


突然の事に、ポルちゃんは慌てふためいている。


「あれ?あれ?私、長老の家にいたはずなのに?あれ?何で?あれ?」


「やっぱり…私って凄いかも!」


「ノベラ様が何かされたんですか?私、どうやってここに?」


「ポルちゃん!私、魔法が使えるみたい!」


私の言ってる意味が飲み込めない様で、ポルちゃんは混乱した顔をしてた。





「じゃあ、私を召喚したって事ですか?」


起きたことをポルちゃんに説明したら、ポルちゃんにそう言われた。


「召喚?何それ?」


「召喚とは、使役していたり、契約を交わしているモンスターや神獣、精霊等を魔法で呼び出す事ですよ。知らないんですか?」


「へー、召喚って言うんだー。ん?でも、あれ?私、ポルちゃんと契約とかしてるんだっけ?」


「いいえ、してません。確かに執事を仰せつかりましたが、まだ何の契約も交わしてませんからね。?あれ?じゃあ、何で私はここに?」


「もしかして、私って、契約とかしなくてもモンスター呼び出せちゃうんじゃない?」


そう言うと、ポルちゃんは「まさか」と言いながら、考え込んでしまった。



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