二人の合格者
入試試験から3日たった、2月14日。この日は男子も女子もソワソワする日だろう。しかしソワソワするにも二通りがある。一つはバレンタインデーだ。チョコを上げる方も貰う方もドキドキのワクワクだろう。そしてもう一つの理由はここ、聖光学園ーーまたの名を能力者育成学校ーーの合格発表に来ている受験生達だ。しかしここにいるのは受験生だけでは無い。中等部の3年生と高等部の全校生徒がいる。
合格発表会をする場所は入試試験をしたコロシアムだ。
合格発表をする前に聖光学園学園長の無駄に長い話を聞かされ、落ちた後も決して自殺などを考えないようにするための注意を聞かされた。
合格発表会が始まってすでに30分が立っている。だが全員に疲れが見え始めた頃学園長の緊迫した声が響いた。
『これより合格者の発表を始める!!』
聖光学園の合格発表はテレビでも報道されるほどの規模だ。
『それでは1人目、受験番号4番!麻間 帝君!』
「はい!」
帝は返事をして壇上へ行く。
受験生達は「これで1から3番の不合格が決定したな」などと言う声が聞こえた。
そして学園長はーー
『二人目、21番!神谷 圭君!』
受験生たちは驚きを隠せないでいた。これで5番から20番の受験生の不合格が決定した。
「ん?何?いきなり俺?」
圭はポケットに手を入れたまま堂々と壇上へ行った。
受験生は圭の事を親の仇のように見ていた。
しかし受験生……いやこの場にいる全員は次の学園長の言葉に絶句した。
『以上二名を聖光学園一年生として向かえ入れる!』
前代未聞だった。今までは少なくとも10人、多くて15人は合格していた。しかし今回はたったの2人だけだ。受験生の中には納得できないと訴える者も居た。
圭と帝は合格者として「聖」という字が星の形と合体したような校章を胸につけられた。(制服が届いたら付け替えるが)
そして記者の一人が「何か一言!」とマイクを渡して来たので帝はそれを受け取った。
『えーっと。凄く嬉しいです。合格できたのはいつも支えてくれた方々のおかげなので、これからは恩返しできるように頑張りたいです』
帝は礼儀正しく答えた。だが圭はそんな帝に「お前は教科書でも読んで話してるのか?」と文句を言った。
圭は帝からマイクを貰い、まるであざ笑うかのように話し始めた。
『俺が受かったのは当然の結果だ』
「な!」「あの野郎!」などと受験生は圭を睨むよに見ていた。
だが圭の口調は緩むことは愚か、ますますバカにしたように話続けた。
『お前等に伝えるのはただ一つ……運が悪かったな……』
ぷちっ!……
受験生の一人から血管が切れるような音が聞こえた。
『俺という最強と同じ年に生まれて運が悪かったな』
「ふざけるな!俺が落ちたのはただ運が悪かっただけだというのか!」
一人の受験生は今にも殴りかかりそうな勢いで拳を握っていた。
『バカかお前は。せっかく俺が落ちたのは実力の差じゃなくて運が悪かっただけってことにしてやってんのに、自分から運を否定するのか』
「余計なお世話だ!」
少年は圭に向かって火の玉を放った。
だが圭は中指のデコピンだけで火の玉を消滅させた。
「そんな……」
『お前が受からなかったのはどうやら実力のようだな。これじゃあ受からないのも当然だな』
圭が反撃しようと人差し指を向けた所に一人の男が止めに入る。
「そこまでだ!これ以上聖光学園の品を下げる行動を取ると言うなら僕も力尽くで止めに入るぞ!」
立ち上がったのは次期生徒会長の風呀 雅也だった。
圭は雅也を見ただけでどれだけ強いかわかった。
『イヤ、やめておくよ。戦ったら俺の方が強いだろうが、あんたに恥をかかせるのは悪いからな』
「理由はどうあれ賢い判断だ」
二人の殺気はまるで龍と虎を具現化させたような威圧感があった。