最強と無敵
「(彼は…いや彼等は何者なの?三つの異能を使うものと、異能を消す異能を使うもの。今年の新入生は期待できそうね)」
司会の女性教師は満足気な顔で言った。
※
二人は向かい合った状態で立っている。
先に口を開いたのは神谷 圭だ。
「なぁ、お前の異能は異能を消す異能なのか?」
「君こそ三つの異能を使うなんて何者なの何だい?」
「疑問があるのはお互い様って訳か」
「いいじゃないか、戦ったら分かるんだから」
二人は戦闘の体勢になった。
「(残ってるのは俺らを入れて10人ってところか)」
「よそ見してる暇はないよ!」
帝は拳を握って圭に向かって走り出しす。
「はっ!だったら俺に当ててみろよ!」
圭もまた帝に向かって異能を発動させ走り出しす。
二人の距離は一瞬にしてなくなった。拳が重なった瞬間、圭の異能は消され拳だけがぶつかり合う。
だが、圭は攻撃を緩めはしない。帝はその攻撃に防戦一方。
「いくらでも消してみろよ!その分何回でも作り直してやるよ!」
「君みたいに強い人は初めてだ」
二人は会話をしながら戦っている。
「僕の異能を見た人は大抵勝ち目がないと諦める。でも君はそんなもの気にしないで攻撃を続けて来る。こんなに楽しいのは僕も初めてだ!」
「図に乗んなよ!」
圭は手のひらを帝に対してかざすように向け、一歩下がって異能を発動させた。閃光と同時に迸る炸裂音。
「雷光!!」
「消去!」
衝撃で舞い上がった砂ほこりに一つの影が浮かび上がる。
帝の周りには半円の透明な膜ができていた。
「まだまだ行くぞ!」
氷の槍や落雷、光線、上から大木を落とすなど様々な攻撃をする。その一つ一つがクレーターの様な後を残した。だが、帝には傷一つついていない。
「何度やっても同じだ、僕に異能は通じない」
「(っち!あいつの言う通りだ。何度やっても通じないか。でも…)」
圭は静かに深呼吸をして。
「やすやすと引けるほど俺は人間できてねーんだよ!」
圭は叫んだ。
「炎の竜巻」
圭は自分を中心に竜巻を作った。
「さっき、その技を止められたのを忘れたのか!何度やっても同じだ!」
竜巻が帝を襲う。
「消去!」
竜巻は消滅した。だが……。
「ど、どこに行った!」
圭は姿を消した。帝は精神を研ぎ澄ましている。刹那圭の声と共に上空が輝きだした。
「上だよ!五竜滅殺」
火、水、雷、地、光の五つの異能が龍の形になり帝を襲う。
「消去!」
帝は五体の龍を消そうとした。だが、五体の龍は一瞬で消滅しなかった。
「(僕が一瞬押された?異能を消しきれなかった?どういう事だ)」
帝は少し焦っているが不安はなさそうだ。
「何度も言っているだろ!無駄だと!」
「いや、無駄じゃねーよ…」
圭は中指と人差し指を立てて、何かを引き寄せるように手前に捻った。
「地面の刃!」
「なっ!」
後ろから土でできた大槍が向かって来る。
「後ろがお留守だぜ!」
「こっちが本命か!」
帝は異能を使うのを諦めて紙一重で回避した。
「(あ、危なかった。)」
右腕を掠っただけで大きな外傷はない。
「必殺技並みの攻撃を囮に使うなんて…」
「っち!おしいな」
「君が初めてだよ、僕に傷をつけたのは」
「あ?そうかよ、でもやっぱり小細工じゃ致命的な一打には繋がらねーな」
「今のは少し危なかったけどね」
二人は睨み会っている。
「あー……なんかもういろいろとめんどくせーや」
「めんどくさい?」
「ああ、だからこれで終わりにする」
「随分自信のある技みたいだけど、僕に異能は通じないよ」
「もちろん知ってるよ、だからこそそれを打ち破った時俺は成長できるんだよ」
圭は自信に満ち溢れていた。
「なぁ知ってるか?絵の具を全色混ぜると何色になると思う?」
「黒だろそれぐらい知ってるよ」
「正解」
「だったらなんなんだい?」
「それは、異能も一緒なんだよ」
「え?」
「だから…こういう事だよ!」
圭は自分の使える全ての異能を一気に発動させた。そして全てを混ぜ合わせた。
「な……に……」
色はどす黒い球になり、まるで
「まるで暗黒魔法じゃないか!」
そう、暗黒魔法。魔界でも禁術として扱われている程危ないものなのだ。
「これは魔法じゃねーよ、異能だ」
「暗黒異能なんて聞いたことないぞ!」
「そりゃそうだ、これは俺のオリジナルなんだからよ」
他の受験生たちはそれを見て降参していく。
圭はどす黒い球を手のひらサイズにした。
どす黒い球は全てを呑み込む様な轟音を生み出している。
「止めてみせる!僕の異能で!」
帝は手のひらに透明な球を作り出しす。
「止めてみろよ!!」
二人は同時に走りだす。
「「はあぁぁぁぁぁぁ!!!!!」」
全てを破壊する異能と全てを消滅させる異能。
その二つがぶつかり合いコロシアムは爆発で崩壊した。