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○○の仕方

作者: 光紗

 砂浜を歩く。海を見ると、日が登り海面はキラキラと光っている。こんな気持ちでも朝日は美しく感じる。

 しばらく歩くと、少し先に何かがうち上げられている。それが何なのかすぐにわかる。僕はポケットから携帯を出して電話をかける。

 サイレンが近づいて来る。僕は死体の少し離れたところに座り考える。なぜ、広い海に身を投げ出すのに、こうして地上に戻ってくるのか。そんなことを考えていたら、ザクザクと砂浜を歩く音が近づいて来る。

 「こんにちは、**警察ですが、通報された方ですよね。これから、お時間を頂くのですがよろしいでしょうか?」

 よろしいでしょうか?よく言えたものだ。僕には拒否権はほぼない。毎度めんどくさいが、付き合おう。

 声をかけてきた奴は、意外とベテランの54歳の村田警部。長年警察をしてるだけあって、機械的に発見時の状況を聞いてくる。そして、僕も淡々と説明する。

 しばらくすると、身を投げた場所が見つけられた。防波堤の一番先。靴が綺麗に並んでいる。僕はそれに指を指すよう言われ、その姿を写真におさめられる。近くに落ちていた子供の頭ほどの石も同じく指差すよう言われた。

 ある程度聴取も終わると、僕は本題を繰り出す。

「どうして、死体はうち上がるのでしょうか。岩を体に縛り付けてるのになぜ?」

 村田警部は驚いた顔を見せる。そして笑った。

「何でだろうね。見つからない事は多いけど、君はいつも打ち上げられるよね。海から嫌われているのだよ。」

 いつもと違う返事が返ってきて僕は驚いた。

「もう何度目なんだい?なんで、そこまでして死にたいのかい?うち上げられれば、またやり直す。どうして、また戻ってきて、また死のうとしているのかい?」


 死にたい理由なんてもう忘れてしまった。身を投げ、失敗するたび、気付けば砂浜を歩き、自分の死体を見つける。いつも警察から何となくのヒントを貰い、もう二度と戻らないようにしているのに僕は何度も繰り返す。自分が誰で、何故死にたいのか忘れるほど、僕は何度も何度も死んだ。けれど、死ぬ瞬間の記憶はいつもない。


 僕は村田警部をじっと見て答えた。

「もはや自分には、生きる意味も死ぬ意味もすべてを無くしてしまいました。」

 村田警部は優しく微笑み言った。

「すべて海が溶かしてしまったんだね。それなら生きることを選べばいいのに。それとも、その体をすべて海に溶かすのかい?」

 それも良いかもしれない。僕はほとんどの感情も失っているから、次は体を失おう。次は手を、脚を、目を、すべて溶かされて消えてしまえばもう戻ることはない。

「また、やり直すのだね。君はいつも僕を傷付けるよね。やり直すのなら、もう僕を呼ばないでくれ。」

 村田警部は涙を流しながら、僕の頭を撫でた。

それじゃあね。

捜査も終わり引き上げる時間。もう辺りは暗く、今度は月が海面を光らせる。僕は防波堤に戻り、まだそこにあった石を抱き抱え息を整える。もう怖くもない。ゆっくり歩き、僕はまた海に落ちた。揺らめく水面。慌てて逃げる魚と、悠々と横を通りすぎる魚。月の光が水の中でもキラキラと揺らめいて僕を包む。

 思い出した、自分の一生を。

父と同じく警察になりたかった。しかし、何度も落ちる試験に耐え兼ね、警察を諦め就職をしようとするも何社受けても受からない。自分は社会に必要とされていない気がしてくる。バイトを始めるが上手くいかず、すぐに辞めてしまった。そのたびに父と母から浴びせられる罵声に僕の居場所は何処にもないと悟った。それなら、こんな人生は要らない。


 思い出した。僕の名前は村田紀之だ。


 父よ、もう失敗などしない。死ぬことまで失敗を繰り返すなんて…もう父を泣かせたりしない。



 僕は、砂浜を歩いている。ふと、腕を見ると、右腕がなくなっている。

 さぁもう一度自殺の仕方を教えて貰おう。

思い付いたまま書いたので、若干雑かも知れないですね。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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