空野霙
万は巨大な釘を二つ取り出し両手に持った。そして、いざ反撃、
「はいそこまで。あなたは武器をしまいなさい。全員両手を上に」
とはいかなかった。
いいところで全身真っ黒で豊満な女性が現れたのだ。
「お姉さん誰だい?」
万は当然の問いを投げかけた。
五人組は一切口を聞かず諦めたような、悔しいような、そんな表情をしていた。
「あなたには質問する権利はありません。こちらの指示に従ってください」
(なんかやばそうだし、とりあえずしたがっとこうかな)
万は黙りながらこくりと頷いた。
そして真っ青のスポーツカーに乗せられ、走ること40分。
要塞のようなところにたどり着いた。
「ごくろうさまです」
門番とは別に、入口に立っているとても真面目そうな男性が挨拶をした。やはりスーツを着ている。
どうやらこの女性の帰りを待っていたようだ。
(⋯⋯。この建物、それにこの人たちの見た目、警察みたいなものかな⋯)
「ええ。あっちの五人は第一ホワイトルームへよろしく。この子は私が受け持つわ」
「了解しました」
軽いやりとりの後、男性と別れた。
「あなたは私についてきて」
そしてついて行って着いたのが、第四ホワイトルームと書いてあった。
部屋に入るとその名の通り真っ白で机と椅子しかない部屋だった。
(僕尋問されるんだ。生まれて初めてかも。ていうかほんとにホワイトルーム)
万は表情には出さなかったが、少しわくわくしていた。
「そこに座って」
言われた通り椅子に座った。
「今から聞く質問に一言で答えて。あなたの名前は?」
「御神楽万」
「年齢は?」
「17」
万は聞かれた質問に淡々と答えていく。
「住所は?」
「⋯わかんない」
「そんなこと言っても無駄よ?顔認識で一発なんだから」
「どうぞお好きなように」
(出てくるわけないのになぁ)
「じゃあじっとしてて」
言われた通りじっとする万。
そして、赤外線のようなものを万の顔に当てる。
「お姉さん、まぶしいよ」
「黙ってて」
「えー」
「もうちょっとで終わるから」
「はーい」
認識が終わった。
「ほら、一発⋯で⋯、出ない?!」
「ほらね?」
「こんなことって、あ、今日この都市に来てまだ住むとこないとか?」
てんで的外れだ。
「違うよー」
「じゃあ、あなた何者なの?」
「んー、さぁ?」
万は表面上は困った顔をしているように見えるが、この状況を楽しんでるようにも見える。
「あなた、楽しんでるでしょ?」
「まさかぁ~」
万はへらへらと笑った。
「まぁいいわ。じゃあ御神楽くんて呼ばせてもらうわね」
「だったらお姉さんの名前も教えてよ?僕だけってのは不平等だよ」
「私の名前?空野霙よ。好きに呼んでくれて構わないわ」
「わかった。霙お姉さんだね?よろしく」
万は人懐っこい笑顔で言葉を返した。