非日常へのスタートライン
皆様おはこんばんちわ。
この度は閲覧していただきありがとうございます。
なにぶん初心者、文体が乱雑などの欠陥があるかもしれません。
下手くそですので、指摘があるとそれはとても嬉しいなって。
―走る―
それは、この地上に存在する陸上生物の殆どが行う運動だ。理由は色々だが、大体走る行為には何かしらの意味がある。
基本は「逃げる・追いかける」だろう。
因みに俺は走っている。逃げる為に。何から逃げてるのか忘れたが、脚を止めてはダメな気がしていた。
「はぁ…はぁ…」
20分以上は走った気がする。息も絶え絶え、肺と心臓はこれ以上活発に動かすことは不可能という事を懸命に伝えている。
暫くすると右手に公園が見えてきた。限界に近かった俺は本能的にその公園へ脚を踏み入れた。
「ぜぇ…ぜぇ…」
公園に入った俺はその瞬間、糸が切れた操り人形の様に芝生に倒れ込んだ。静かな公園には俺の荒々しい呼吸音だけが響く。
「はぁ…はぁ…ふぅ」
深呼吸をし、呼吸を落ち着かせる。落ち着いた後に身体を起こし、ポケットの中の携帯を取りだし時刻を確認する。携帯の待ち受けの時刻は夜10時を過ぎていた。
色々考えたいが、このままこの公園に居ても巡回中の警察官に職質され面倒な事になる。幸いにもこの公園は俺の家の近所にあるようだ。
一旦考えるのを止め、とりあえず俺は棒のようになった脚を引きずりながら家路につく事にした。
「ただいま」
誰もいないアパートの部屋に声をかけ、部屋に入る。
俺、如月翔は高校生だが一人暮らししている。両親は居るが、母は俺が小学生の時に死んだ。事故か自殺かは知らない。警察は自殺として片付けたらしい。父とは、母が死んだときに叔母に引き取られてから会っていない。どうやら父が自ら引き取ってくれと叔母に頼んだそうだ。
そして月日が経ち、俺が高校に進学したとき、叔母に自立を申し出た。自立とは言うものの、学費やら家賃やらは叔母が出してくれている。だが食費等はバイトだ。バイトを始めるに当たって、陸上部だった俺はあんなに好きだった陸上から離れることになった。だが身体は忘れることは出来なかったため、休日は走り込みをしていた。
…話が逸れた。
そして今日は件のバイトが有った。そしていつも通りにバイトが終わり家路についた。そこまではいつも通りだった。だった筈だが…
そこまで思い出したら不意に記憶が蘇った。本当は思い出したくなかったから、ついさっきまで忘れていたのかもしれない。人間ってのは強いショックを受けたら記憶にプロテクトでも掛かるのだろうか。だが思い出してしまった以上、記憶を辿らないわけにはいかない。そう結論を出し、俺は記憶を辿らせることにする。
時刻は夜9時。いつもの様にバイトから帰る途中だった。夜食が入った袋を持ち、鼻歌交じりで歩いていた時、俺は路地から異様な雰囲気を感じた。好奇心旺盛な俺は気になり、その路地へ足を踏み入れた。
路地へ入る。その先は行き止まりだった。だがそこには、まるで現実から切り離されたような空間が有った。
「なんだよ…これ…」
辺りに漂う噎せかえる程の血の臭い、地面を真っ赤に染め上げた夥しい量の血。たった一つしか無い街灯で確認できたのはそれだけではなかった。
「あ、あれは…?」
その血溜まりの上には、本来人だったと思われるモノがあった。身体のパーツ…四肢は地面に長いアイスピックのようなもので打ちつけられ、胴体は見当たらない。頭は、打ちつけられた四肢の中心に鎮座していた。さながら花のようだ。
「うっ…」
思わず吐きそうになる。
その前には人影が見えた。格好は灰色なのか黒色なのかよくわからないレインコート、例えるなら某アニメのレイニーデヴィルのような出で立ちだ。身長は俺より少し低い。約165cmと言ったところか。後ろ姿だけでは、男か女かは分からない。
(早く此処から逃げよう…)
そう思い、曲がれ右をしようとした時、転がっていた石を蹴ってしまった。静かな狭い路地に、石が転がる音が反響する。
奴がこの音に気が付かない筈が無い。
驚いた様子で奴は振り向いた。
その顔はフードを目深に被っているため、表情は窺えない。(観察してる場合じゃない…早く逃げないと!)
そう思ったが脚が動かない。蛇に睨まれた蛙ってのはこんな気持ちなのだろう。今睨まれてるかは知らないが。
「………」
無言でレインコートの人物はゆっくりと近づいてきた。その遅い一歩一歩が俺の心に恐怖を植え付ける。
「あんたは…誰だ?」
「………」
勇気を振り絞り問いかけてみるが、やはり無言でそいつは近づいてくる。
やがてあと数歩で奴の手が俺に届く距離に入り、奴が手を伸ばしてきたとき、俺の携帯からけたたましい音が鳴った。その音は戦慄していた俺の意識を一瞬で現実に引き戻した。
その直後、俺の脚は足枷から解き放たれたように動くようになった。
「捕まってたまるかよ!!」
掴まれそうになった瞬間、大声で相手を一喝し、夜食が入った袋を投げつけ、俺は駆け出した。夜食なんかいらない。大切なのは自分の命だ。
陸上から離れても走り続けてきた俺の脚は、現役の頃よりも速いスピードを叩き出した。もう速くは走れないと思っていたが、日頃の走り込みが功を成したらしい。トップスピードに入った俺は後ろを振り返ることはなく、ひたすら走った。
そこで俺の記憶はぷっつり途切れた。
そして現在に至る。思い出してみると、ふと気になることが幾つか有った。
「そういや…アイツ何も持って無かったな…」
たった1人で一体どうやったのか?他に仲間が居たのか?気にはなったが、疲労困憊の今の俺の身体はそれ以上の思考を許さない。
そうして、俺の意識は暗い闇の底に落ちていった。