紙飛行機と少年
「……うーんこれ持って帰れないなぁ」
夕陽が町から消えようとしてる頃、とある小学生の少年が河原に座りながら困惑していた。彼の手には一枚の紙が握られていた。
それは今日学校から貰ってきたテスト用紙。そこにはお世辞を言えない点数が記されたテストが握られてた。
「なんていい訳しようかなぁ」
テスト前日にゲーム三昧、友達と遊びに行ったりと、とても両親にいい訳できない状態だったのだ。
「はぁ~~」
一人で河原に向かってため息を吐く。河原から少年は動けなかった。足から根っこが生えて、河原とくっついてしまったように。
「なんだ、坊主? こんな所で何やってんだ?」
そんな少年に後ろから声をかけてきたのは、近所で料理店を営んでるタバコを常にくわえている店主だった。
「いえ何でもないよ」
少年は咄嗟にテスト用紙を隠してしまう。
「ん? なんだそれは」
隠そうとしたのが店主の目にも入ったしまったらしく、盗られてしまった。
「う~んテストかこりゃ、うわぁ。ヒッデヒッデ」
煙草をくわえたまま店主は笑い始めた。
「そんなの自分でもわかってるよ、だから返して下さいよ」
店主の手の中にある、テスト用紙を取り戻そうと試みる。
「おっとっと~、そいつは無理な相談だな」
店主はテスト用紙を、少年がどんなに背伸びしても届かない距離に、腕を振り上げる。
「なんでだよー」
少年は店主に訊く。そして店主はテスト用紙で何かを作り始めた。
「よーし、できた!」
そして、店主が完成させたのは――紙飛行機だった。
「そういえば、さっき何で返してくれないのか、訊いてきたな?」
少年は首を縦に振ってうなずく。店主は紙飛行機を持った腕を振りかざし始める。
「――こうするためさ!!」
俺のテスト用紙で作られた紙飛行機が天高く舞った。
「ええーー!」
俺は店主がとった行動にただただ驚くしかなかった。
「なんてことしてくれたんだよー、うぅぅ」
少年は涙目になりながらも、店主を睨みつける。
「ふぅ~、お前バカか?」
タバコを吸いながら、飛んでいく紙飛行機を見つめている。
「あんな紙一枚如きに、苦しめられてんじゃねえよ」
「え?」
店主の一言は少年の心を揺るがした。
「あんなもんで、おめーの全てが決まるんじゃねえ。あんなもんで決まってたら、俺の人生なんて地獄よ地獄」
紙飛行機は未だに飛び続けている。何か少年に伝えたいかのように、大空を目指し飛んでいる。
「今はお前が好きな事をやりまくれ。学校も大切だが、あんなものに苦しめられるな。まだまだお前の人生長いんだから」
これはただの店主の個人的な考えだった。
だが、少年を底から動かすには十分な言葉だった。
「うん! わかったよ」
少年は立ち上がった。
「ありがとう」
そのまま少年は家に向かって走って行った。少し成長して少年を、少しの困惑では止められない。
店主もそれを見届け終わると、タバコを消して、夜から開店する店に向かう。
少年の困惑を乗せた紙飛行機は、役目を終えたの悟ったのか、河原で流れていた川に着地して、そして流れて行った。少年から離れて行くように。
――その後少年は母親に怒られて、泣いてしまったのは、後の祭り。
こんにちは。りょーすけです。
知り合いから、
お題出すから、それで書いてみてよ」
と言う訳で書いた作品です。
「紙飛行機」「タバコ」「河原」と言うお題でした。
お時間あれば読んでいただけるとありがたいです




