朔夜姫の「力」
新ヒロイン登場、妹の秘密露呈します。
「・・・ん、朝か」
瞼を閉じていても眩しい程の光を感じ、俺は目を覚ました。
(あいつよりも早く起きるなんて珍しいな)
俺はそんな事を思いながら、目覚まし時計に手を伸ばして、タイマーを切った。ふと何者かの気配を感じ、布団をめくった。
「・・・何してるんですか?朔夜姫」
『添い寝ですよ?見て分からないですか?』
「・・・何故ここで寝てるんですか?昨日麻衣の部屋に押し込んだ筈ですけど?」
『えぇ、だから起こしに来たのですけれど、貴方の寝顔が余りにも可愛いかったので、つい』
「つい、で添い寝しちゃうんですか?」
『えぇ、貴方の寝顔は破壊力抜群ですよ」
頬を紅く染め、にっこり笑っていた。朔夜姫はかなりの美少女なので、その気が無くても照れてしまって、こっちまで紅くなってしまう。
「じゃあ、制服に着替えちゃうんで、部屋から出てって貰って良いですか?」
『え~?』
「え~じゃ有りませんよ。ほら、行って下さい」
『でも~』
「でももへったくれも有りません。それとも手伝ってくれるんですか?」
『え!?良いの?じゃあ喜んでー』
「すんませんっしたーー!」
俺は完璧な土下座を即座に行った。冗談が通じない人(?)だった。俺はどこかで見たような・・・と思いつつも朔夜姫を説得し、着替え始めるのだった。その後は何事も無く平穏無事に過ごしていたが、登校直前、朔夜姫が爆弾を投下してきた。
『今日から貴方は美少女に迫られるので、頑張って下さいね』
「何をどうゆう風に頑張れば!?」
『それを考えるのは貴方ですよ』
「投げやりにも程が有る!」
・・・だ、そうだ。前途多難っぽいなぁ。登校した後から、昼休みまでは普通だった。それ以降、彼女の言った事をイヤと言うほどに思い知るのだが。
「ねぇ升君、お昼一緒に食べない?」
俺に声を掛けて来るのは勿論美少女。幼馴染の紅林鈴菜だ。こいつとは家が近くで幼い頃からの付き合いだが、積極性に欠け、余り自分から声を掛ける事など無く、数える程しか記憶に無い。そんな幼馴染が声を掛けて来た。高校に入って漸く積極性が出てきたなあと思う反面、これが朔夜姫の言っていた事か?とも思う。俺としては断る理由も無いから首を縦に振った。
「じゃあ、屋上で食べようよ。私、升君のお弁当も作ってきたんだ」
「マジで!?そりゃ助かる。毎回学食や購買行くの面倒だし、あそこは戦場だからな。ってゆうかお前料理出来たんだ?驚きだな」
「勿論出来ますぅ!」
ぷくーと頬を限界迄膨れさせた。失敗したと思い、すぐさま謝る。
「いや、悪かった。そりゃ出来るよな。高校生なんだし。」
「そうですー。私こんなんでも高校生なんですよー!」
鈴菜自身が言っている通り、彼女はとても高校生には見えない体躯なのだ。・・・言ったら怒られるから絶対に言わないけど。150にギリギリ届かない小柄な女の子なので、隣に並ぶとまるで兄妹と見間違う程の身長差が有る。
「悪かったって。それより、屋上行くんだろ?さっさと行かないと昼休み終わっちまうぞ。」
「そうだね。じゃあ行こう?」
昼休みはこれ以上のイベントは無かったが、放課後にも似たようなイベントが待っていた。
「升君、一緒に帰ろう?」
「俺は妹と帰るから鈴菜は先に帰ってな?」
「麻衣ちゃんと?なら私も一緒に帰って良いよね?」
「ん、別に構わないぞ。麻衣が良いならな?」
と、丁度教室のドアが開き、麻衣が入ってきた。
「お兄ちゃん、一緒に帰ろう?」
「良いけど、今日は鈴菜も一緒でも良いか?」
「え?・・・・・・・・・・・・・・良いけど」
「やたらと間が空いてないか?そんなにイヤか?」
「・・・・・・・・・そんなこと無いよ?」
「また開いてるだろ!?」
「お兄ちゃんが良いなら良いけど・・・」
「ならお許しも出たことだし、帰るか。麻衣、鈴菜。」
「えぇ」
「うん」
昇降口で妹を待ち、3人並んで家路についたのは良いんだが・・・左に俺と腕を組んでいる麻衣。右に俺と腕を組んでいる鈴菜。正に両手に花だが、なにやら不穏な空気を感じる。
「ちょっと、なんで鈴姉腕組んでるのよ。お兄ちゃんは私のお兄ちゃんなんだから。離してよ」
「あら、貴女のお兄ちゃんかも知れないけれど、だからって貴女のモノではないんだから、彼がイヤだと言わない限り私はやめるつもりは無いわよ。」
「うぬぬぬぬ」
「何よ?」
・・・鈴菜ってこうゆう奴だったっけ?もっと引っ込み思案で大人しい奴だった筈なんだが・・・。
俺は2人の緩衝材に徹しつつ、家に帰る羽目になった。が、こうゆう鈴菜も良いなぁと、思っている自分も居たりする。家に着き、私服に着替え、夕食を終え、ベッドに横になっていると、朔夜姫が俺の部屋を訪ねて来た。俺はここで疑問に思っていた事をぶつけてみた。
「何で親は何も言わないんですか?」
『記憶を弄らせて貰いました。私は貴女の義理の妹だという風に』
「他人の記憶を弄ったのかよ!?やることえげつねぇな!」
『そうでもしないと面倒じゃないですか』
「理由は分かりますけど!何もそこまでしなくても・・・」
『じゃあ貴方のお世話をしに来た甲斐甲斐しい彼女という風に記憶をまた弄りますか?』
「義理の妹でお願いします」
俺は土下座して頼んだ。・・・弱いな俺。
「それは良いんですけど、何か用事が有ったんですか?」
『えぇ、とても大事なお話が』
急に真面目な顔をして、おふざけ要素無しで言ったので、俺もつられて真面目になる。
『それでですね。とても言い難いんですけど、貴方の妹の麻衣さん』
「麻衣になにかあったんですか!?」
俺は心底慌てた。今まで一緒に暮らしていた妹の身になにかあったのかと思ったが、そうではないらしい。
『危険な事は何も起こってないですから、心配なさらなくても大丈夫ですよ』
「そ、そうですか」
俺はホッと胸を撫で下ろした。しかし、朔夜姫の次の一言に俺は心臓が止まるかと思った。
『貴方の両親の記憶を弄った時にちょっと見えたのですけど・・・』
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」
麻衣視点
朔夜さんがお兄ちゃんの部屋に行ったのがたまたま見えたから、こっそり後をつけて中の様子を伺った。
ドアに耳をくっつけて、中での会話を聞き取ろうとした。切れ切れにしか聞こえて来ないけど、記憶を弄った、みたいな事を言っていた気がする。全くあの人(?)は何をやってるんだか。そして、私が聞き取れた最後の1文が、
『麻衣さん、貴方と血の繋がりが無い、本当の義理の妹さんですね』
これからどんな風に話を繋げて行こうかとワクワクしております。それなりに期待していて下さい(笑)