三日目、「よく 人に そう 言われ る」
三日目です。進行が遅いです。しみません。
「うわっ!!」
壁から竹槍。
「うわわっ!!」
弓矢が突如どこからともなく降ってくる。
「うわわわわわっ!!」
巨大トンカチが勢いよく振られてくる。
「ここは刻○館ですか!! 何でこんなに二階に上がってからトラップが多くなったんですか!?」
「いやぁ、だから」
「防犯上でしたね! 忘れてましたよ、すっかり!! というか――」
間をおいて桜田会長を振り返る。
「なんで桜田会長そんなにボロボロなんですか!! 満身創痍じゃないですか!!」
「いやぁ……妖○夢のEasyで良かったよ。五回コンテニューできるんだもん」
「そう言う問題じゃないですよね!? これ現実ですから! コンテニューとかありませんから!!」
桜田会長はほぼ全てのトラップに引っかかっていた。
先程の弓矢やトンカチ、これまでに受けてきた頭上から地雷、召還、転び石、腹減り、吹き飛ばしに落とし穴などなど……どこの風来人ですか、あなたは。
「いやぁ、おもしろがって雛見沢のトラップマスターに頼んだのがいけなかったね……」
「時代が違います! あれは昭和!! こっちは平成!!」
時系列を無視してなんてことをしているんだこの人は……。
そんな風にやりとりをしながら進んでいくと、目の前にすっごく怪しいボタンがある。
なにやら「Cau……こーしょん!!」「押すなよ? 絶対押すなよ?」「ホントに押さないでね?」とかシールがこれ見よがしに貼ってある。ていうかcautionくらい書けよ。
「桜田会長、なんかこれ見よがしに怪しいボタンがありますけど、押すなんて事は」
「ん?」
ぽちっ。
「なんか言った?」
「言ってません。言ってませんけど何してんだアンタァァァァアア!!」
思いっきりな全力のつっこみ。アンタアホか!!
「え? だって怪しいボタンは押すのが礼儀でしょう?」
「でしょう? って当然のように聞くな!! アホなんですか!? ホントはあなたアホなんですか!?」
「よく 人に そう 言われ る」
「文節事に区切って言わないでください!! あと最後だけ間違ってる!!」
と、つっこんでいると後ろからなにやら「ゴゴゴ……」と妙な音が……。
「ま……まさか……」
「わくわく、わくわく♪」
なんかもう、伝説の会長がアホにしか見えない。
目の前にはジョーンズ先生も真っ青の巨石が壁をぶち破って出てきたぁ!! 横から!!
「て、いくら何でもでかすぎだろぁぁぁ!!」
「あっははははははは!!! すごいすごい!! ホントに注文通り作ってくれたんだ!!」
「んな事言ってる場合ですか逃げますよ早く!!」
こうして僕らはやっとの思いで三階へ。
巨石から逃げるのが必死でどこをどう曲がったのか見当がつかない。
どころか、僕の体力はもはや限界になっていた。
「ぜひーっ……ぜひーっ……」
「お疲れのようだね? 紀夫君」
「疲れる……?」
お気楽な顔でそう言ってのける会長は息一つ乱れていない。
「あなたとは、違うんですよ……僕はそんなにすごい人間じゃない」
「ほうほう? すると?」
僕は何を思ったか訥々と話し始める。
「僕は今の今まで何もかもを平均的にやっていました。勉強も、先生から与えられた課題も、人間関係も、何もかも平均的にやっていました」
「へぇ。平均的」
「そう」
テストで点数を取ろうものなら平均点ぴったり。どう頑張っても平均点より上には行かない。
さらには体力測定をしても学校平均と並ぶ。
「でも、平均はいい事じゃないの? ……あ」
「そう……僕がいたのは○○中学です」
○○中学は全国でもトップクラス……というか、むしろトップの成績を生徒のほとんどが収めている、という中学校で、そこに通う生徒は一部では「超人」とか言われていたりする。
「そんな中、僕は一人、平均的に過ごしていたんです」
周りのライバル……いや、ライバルと呼べていたのかすら分からない。……は皆トップの成績を取っているというのに、僕だけ平均、並の成績。
「……僕は突出して何かに秀でている、というわけではないんです。会長」
桜田会長は適当に「ふぅ~ん」と相づちを打った。そして「で?」と言う。
「え?」
「いや、疑問符に疑問符で返すのはよそうよ、紀夫君」
桜田会長はこちらをまっすぐに見て、
「私が知る限りでは、何にも突出していない人間なんていないと思うな。そんなことを言う人間は何かに熱中したことが無い人か、楽しくない考えをしている人間だと思うよ」
「楽しくない考え……?」
「うん。後ろ向きで、悲観的。楽観的に物事を見れない人間」
はっと気づかされる。
「私は君の以前の生活なんて知らない」
「え……?」
「だから、高校の紀夫君を見てみたい。何かに突出していない人間というのは、いないものなんだよ? 紀夫君」
今の、僕?
「うん。中学までの紀夫君は知らないけど、今の紀夫君は興味ある。だから――」
会長は手を僕に伸ばして、こういった。
「今のサイコーの自分、見つけよう?」
今の、サイコーの自分。
考えたこともなかった。
僕は「前」か「後ろ」しか見ていなかった。
でも、「今」を見たことはなかった。
目の前にいる会長は、「今」を見ることを進めている。
「……はい」
僕は、会長の手を取った。
瞬間。
ぽーん。
「へ?」
ぽーん。ぽーん。ぽぽぽぽーん。
「な、なんだ?」
「ふっふっふ……」
会長が俯きながら笑っている。な、なんだ? 一体……。
「紀夫君。おめでとう。ここがゴールだよ」
「え?」
そしてなんだかドットが剥がれていくように周りが明るくなる。
そしてドットが全部剥がれた後、そこには僕が見知っている校舎になっていた。
そして目の前には生徒会室のドアが。
「え……? なんですか、これ」
「柊コーポレーション謹製、3D体感アミューズメント。楽しんでくれた?」
「いや……楽しんだも何も……」
僕は一気に力が抜けてへなへなとへたり込む。じゃあ今までの罠は……。
「うん。ぜーんぶ、3D」
「は……え……?」
「みんなー、出てきてもいいよー!」
そう言って生徒会室から出てきたのは入学式に出てきた生徒会のメンバー……+月島さん。
「つっ、月島さん!?」
「あ~。紀夫君も生徒会に入ったんだね~?」
「え?」
生徒会に、入った?
「今の今までのは生徒会入会試験……のような物、かな? 卒業していったOGにお金持ちの人がいてねー。その人に作ってもらったんだ~」
桜田会長が嬉々として説明する。そんな桜田会長に呆れていると、
「ハルさん。また柊先輩に頼み事して……どうなっても知らないですよ。というか、いつ会ってたんですか?」
こちらもあきれ顔で話すツインテールの毛を揺らす副会長、桧木抄華先輩。身長は小学生と同じくらい、そしてなんかこう、すっごく幼児体系的な……もしやこれがロリ――
「何か言った?」
「言ってません」
高速で何かが顔の横をかすめる。目の前ではいつのまにか桧木副会長はハンドガンを抜いて撃っていた。神技。
「抄華さん、そこまでやらなくてもいいじゃないですか……」
と、にこやかな顔で諫めているのは生徒会の会計、紅則春樹先輩。影の薄さにおいては生徒会一だと言われている先輩だ。
「いつからいたんですか?」
「さっき出てきたんだけどなぁ……」
苦笑している先輩を見た後に月島さんと目が合う。そのままにっこりと笑いかけられごふっ。
「うわぁぁ!! 新しい子が早速血まみれに!!」
「抄華ちゃん、清水先生呼んできて! あと担架!!」
そんな声を聞きながら僕の意識はフェードアウトしていく……。
いろいろあって疲れた。少し寝る。
抄華「抄華と!」
春樹「春樹の!」
抄華・春樹『サクコー放送室~!! イェイ!!』
抄華「というわけで皆さんこんにちわ、みんなの永遠のロリっ娘、桧木抄華です!!」
春樹「はい、相変わらず影が薄いと言われている紅則春樹です!」
春樹「ところで抄華さん、この後書きでは何をするんですか?」
抄華「うん、ここではサクコーの様々な情報をお届けする、いわゆる『執○通信』てきな事をするところです!! お便りとかも待ってるよ!!」
春樹「相変わらず作者はそう言うことをするのを好きですね……」
抄華「というわけで、面白い人はこっちで掲載されちゃうかも? それともこのまま雑談で終わっちゃうかも?」
春樹「どちらにせよ読者に丸投げしているというのはよく分かりますね」
抄華「余計なことはいわんでよろしい!!」
春樹「そんなわけで次回! 気になるあいつについに密着!」
抄華「血湧き肉躍るサスペンス劇場、個々に開幕!? 四日目、「いや、そんなのありませんから」!! こうご期待!」
春樹「見よ、東方は赤く燃えている!」
抄華「そんなことを言ったのは別の人!!」
春樹・抄華『ばいばーい!!』