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貧乏農家に転生したので異世界でスキマバイト始めます。  作者: たまご


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第五話 父親の帰宅。

 今日は朝から皆そわそわしていた。

 出稼ぎに出ていた父親が二週間ぶりに帰ってくるのだ。

 日が昇ると同時に町を出るだろうから、着くのはおそらく昼近くになるだろう。


 残念ながら肥料代わりになりそうなものは手に入らなかったが、森の土を少しばかり〈収納〉に入れてある。

 土が良くなれば、多少なりとも畑の状態も良くなるだろう。


 リンは先程から何度も父親が帰ってくる方向を見に行っていた。ルイもそれに付き合って外に出ている。

 ラナや母親は、昼から始まるボーショの収穫の準備を整えていた。


「おとうさん!」


 弾んだリンの声が聞こえ、ラナも母親もぱっと顔を上げた。

 いそいそと父親の出迎えに向かう。


「ただいま」


 歩き続けて埃まみれになった顔に、父親は見慣れた穏やかな笑みを浮かべていた。

 井戸水で顔を洗い、着ていた上着を脱ぐと父親はリンを抱き上げた。


「いい子にしていたかい?」


「うん!」


 リンを降ろすと、父親は両手でラナとルイのそれぞれの頭を撫でた。


「留守番ありがとうな」


「えへへ……」


「……」


 照れ笑いを浮かべるルイとは真逆に、ラナは固まったように動かなかった。


 この感情はなんと言えばいいのだろうか。

 ほっとしたような、嬉しいような、泣き出したくなるようなこれは。


 前世で親の愛に恵まれなかったラナにとって、それはいまだうまく飲み込めない感情だった。


「子供達にお土産だよ」


 そう言って、父親は小さな包みをラナ達に手渡した。

 中には蜜飴が三粒ずつ入っていた。


「うわぁ!」


 ラナもルイも思わず声を上げた。

 リンは不思議そうに首を傾げている。


「これ、なぁに?」


「蜜飴だよ」


「すっごく甘くて美味しいんだから!」


 恐る恐る口に入れたリンの目が輝く。


「んー! んー!」


 声にならないリンを見ながら、ラナも一粒食べた。

 ゆっくりと噛むと、ルッコの実とは比べ物にならない甘さが口の中に広がった。

 蜜飴はスカイビーという蜂の蜜を固めたもので、食感は飴というよりグミに近い。


 無言になる子供達に、両親は微笑みを浮かべていた。

 だが、ゆっくりしている暇はない。

 父親は明日の昼にはまた町に戻ってしまう。

 その前にボーショの収穫を終え、畑の土に鋤をいれなければならない。


 蒸しておいたボーショに塩をふって簡単な昼食をすませると、ラナ達は家族総出で畑に出た。


 父親が土の中から抜いたボーショを、母親とラナが拾い集める。

 それをルイが土を払って丁寧に籠に収めていく。

 リンも小さな手で畑にぱらぱらと落ちているボーショを大事そうに一個ずつ拾っていた。

 相変わらず薄い桜色のボーショだったが、葉は刻んで食べられるし、茎も灰汁抜きをすればやはり食べられる。

 ラナ達家族にとっては、大切な食料なのだ。


 小さな畑なので、夕暮れ前には収穫を終えた。

 父親が種芋を選別している間に、ラナと母親は夕食の準備を始めた。

 くたびれたのだろう、ルイとリンは既にうとうととし始めている。


 今日はご馳走だ。

 ボーショを蒸して潰し、ラナが採ってきた粘り気のでる野草の根をすり潰したものと混ぜて生地を伸ばし、そこに父親が買って来てくれた干し肉を小さく刻んで混ぜた。

 それを丸めたものを熱した油で上げる。

 ファロといってコロッケに近いが、小麦の育たないこの地方ではパン粉や卵はつけず、素揚げにしている。


 それと、薄くスライスしたボーショと茸を炒めたもの、灰汁抜きをした木の実をすり潰した粉を水とやはり粘り気のある野草の根を混ぜて練ったものを焼いた平べったいパンのようなものもある。


 父親が家に入る頃には、辺りはすっかり暗くなっていた。

 テーブルの上にある灯りを見て、父親はひどく驚いているようだった。

 油を買う余裕などない事は、父親自身がよく知っているからだ。

 また、テーブルに乗るファロや炒め物を見て、父親は無言で母親の顔を見た。

 それに対し、母親はくすりと笑うと「まずはご飯にしましょうよ」とそう言った。




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