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シャーロキアンのアドラー〜虚構アドラーの誕生〜  作者: ヨハン•G•ファウスト


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7/8

第七幕:残酷な推理

ねえ、あなた。私はアドラーよ。

そして、アドラーを愛するシャーロキアンの一人なの。

なのにーーアイリーン・アドラーと名乗っている。


第六幕では、シャーロキアンのホームズたちと接触する事になった。

私の今の状況をどうしても、解決して欲しかった。

それから私は、あわよくばーー彼らの厄介になろうと思ってた。


そこはカムデン・タウンの南端だった。そこの倉庫の前で、ホームズたちはインディアンのようにたむろしていた。

私の荷物を見て、

首長ホームズが言ったのは冷たいものだった。

「ここは女性を泊める場所はない。

それにお茶も出さない。ホームズは依頼人に、お茶をわざわざ用意なんてしない。」と言った。

「もしかしたら、アーサー・コナン・ドイルが書き忘れたのかもしれないわ。」

「ハドソン夫人がいたら、お茶を任せているさ。もし君が彼女なら大歓迎だった。

でも、ーー君はアドラー。アイリーン・アドラーだった。

ーーさて、くだらん井戸端話の内容なら、このままお引き取り願うけどーーどうなんだい?」

首長ホームズは少し苛立ちながら、私に話した。

「私は命を狙われているの。あなた方に助けてほしい。」

「命の危険。ふむ。そりゃあ、大好物かもしれない。」

そして彼は、私をある部屋に案内した。

その部屋の中央には円卓があり、囲むようにして木椅子があった。ーー私は近くにある椅子に座った。

「さあ、話したまえ。」

そう言われたけど、私は自分が何から話せばいいか悩んだわ。

話は語りすぎたら、とたんに嘘くさくなる。

私は自分をなるべく美しく語る事にした。

「ねえ、あなた。私はアドラーよ。

そして、アドラーを愛するシャーロキアンの一人なの。

なのにーーアイリーン・アドラーと名乗っている。」

「ブルネットのカツラさえつけて、それらしくふるまえば誰だって、アドラーさ。」と首長ホームズ。

「なぜですって?」と私は彼を睨みつけた。

「おや、すまない。彼女はボクらのホームズから尊敬されている方だ。

君のような美女が演じるなら、悪い気はしないよ。」

「私は......コナン・ドイルの書いた彼女の美しさ、そして強さに惹かれて、

この名前を時々名乗っているの。

ーーでも本気じゃないわ。

ーーマスクみたいなものなの。

ーー私には、もう一つの名前がある。

だけどねーーあなたに、

言うべきかーー悩んでいる。」

「別に興味はない。ボクには謎が必要だ。ーー続けたまえ。」


そして私は、彼に物語として聴かせた。私の人生を。あなたが聴いてるみたいにーー。


語り終えた時、少し寒くなってきた。

部屋には暖炉もない。

首長ホームズは黙ったまま、私を見ていた。しばらく真顔だった。でも、やがてニヤニヤし始めた。

「結婚詐欺師に騙されて、親族からたらい回し。アドラーになって知性ビンタ。

はは、叔母から銃までもらってやがる。」と言った。それから彼は考えを述べた。

「前からやってきた浮浪者は、確かに君を狙ってた。君の話から推測するに、ブルネットの髪を狙った。

間違いなくね。君の叔母さんは、君を怖がらせまいとウソをついた。

キャロラインが無事なのかさえ、怪しい。一生びっこか、頭がおかしくなっているかもしれない。」

彼は、私を揺さぶるような事を言った。


「そんなーーそんなーー」と私は息をするのが苦しくなった。

「ボクは君の叔母さんがウソつきだと指摘しただけだ。そんなに苦しむ事じゃない。問題は君が狙われる理由だ。

何年も狙われなかった君が、突然狙われるなんてない。結婚詐欺師とは別だ。遺産分配が関係する。」

「でもーー」

「ボクは君の復讐とかも、鏡のアドラーも気にしない。医者じゃないんだ。

何の遺産か。気になってたまらない。

うん。遺産なら、弁護士が怪しい。

それか叔母さんと一緒になって遺書を読めるやつだ。叔母さん以外にその家に出入りする人間は?」

「私と家政婦と庭師よ」

「ーーそれと弁護士だ。足腰の弱いババアを歩かせない。

彼女は弁護士を呼んだ。

犯人は、しぼられたぜ。」


「ーー弁護士が私の命を狙ったの?」

「庭師と家政婦はババアの生活に不可欠だ。彼らは君を傷つけるなら、いつでもやれる。弁護士だ。遺書を他人に見られるバカは、このロンドンにはいない。」

「そんなーー」と私は騙されたように感じたわ。彼の推理は、まるで、なんというか、機械のように書き出された。

悪夢のようにーー。

「ボクは弁護士を調べる。

誰が入ったかなんて、教えてもらわなくていい。ボクにはネットワークがある。君が知らなくていい事だ。」

「私はどうすればいいの?」

「ここには泊められない。でも、一番マシなところがある。彼もホームズだ。きっと君を助けるさ。」と首長ホームズはウインクしてみせた。


(こうして、第七幕はホームズのウインクで幕を閉じる。)

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