裏生徒会は逃さない
「はぁー疲れたぁ」
「遅刻してきたくせによく言うわ」
ぐでーと机に突っ伏したわたしに、携帯を弄りながらツッコんできたのは新山麻衣。肩までに切り揃えられた髪はサラサラだ。シャンプーなに使ってるんだろう?
「瑞希?」
ジーっと見ていたわたしを不思議に思ったのか、麻衣が首をかしげる。
「麻衣は特進科に進学しようとは思わなかったの?」
「なによ急に」
しまった。深い質問をしてしまった。
誰にでも答えたくないことはあるだろう。今日は朝から判断を間違えてばかりだ。
「ごめん、今のは失言だった」
「別に…兄さんが特進科だし、不要な争いは避けたかっただけ」
今は会社を継ぐのに男女なんて関係ないからねと手を振った麻衣。気を使わせてしまったのだろうか。
「ねえ、佐藤さんあっちで呼んでる人がいるんだけど」
クラスの子に呼ばれてドア付近を見ると、背の高い銀髪の男子生徒が立っていた。特進バッチをつけている。
今朝の特進バッチを付けた黒髪の神崎煌が頭をよぎる。なるべく関わりあいになりたくない。しかし、すでに注目を集めてしまっているため、それも難しいだろう。
「なんでしょうか」
しぶしぶ近づいていくと、ニコッとほほ笑まれた。
「ここじゃなんだし移動しようか」
キャーッと周りの女子の悲鳴が上がり、もうどうにでもなれという思いになってしまう。
「…はい。」
逃げるなんて許さない。そう笑っていない目に言われている気がして、頷いた。
「急に呼び出してごめんね」
ハハッと爽やかに笑う銀髪先輩。学科は違うが、学年によってネクタイの色が異なるのは共通なため先輩だと分かる。
「ご用件はなんでしょうか?」
「んーちょっと待ってね、ここ曲がってー」
促されるまま左折した先には森…。
「リンチ…?」
「ブッ」
急に吹き出した先輩は、肩を震わせている。心外である。
「いや、ごめん」
そう言いつつも肩がまだフルフルしている先輩。どうやらツボに入ってしまったらしい。
「俺が女の子に暴力するように見える?」
優しく微笑んで、首を傾げた先輩は、相当おモテになるんだろう。
「いえ、笑顔で精神攻撃してくるように見えます。」
「あっははは」
今度は笑いだした。なんなんだこの人は…。
「いやー、いいね。煌が見込んだのも納得だ」
煌…やっぱり今朝の神崎煌と関わりのある人のようだ。
「よし! 着いた」
「旧校舎?」
「正確に言えばその別館、だけどそんなことはいいか」
中に入ろうねーと半ば強引に入れられ階段を上って2階の奥にある教室。
「煌、連れてきたよ」
黒革のソファに座っていたのは、神崎煌…先輩だった。
「朝ぶりだな」
「…はい」
漆黒の長い前髪から覗く目は、獲物を見つけた虎のようだ。
「さっそく本題だ。裏生徒会に入れ」
入れという声と一緒に銀髪の先輩が持ってきたのは、A4の紙と高級感のあるボールペン。
「これは…」
「契約書だ。秘密事項の漏洩防止のための」
「拒否権は…」
「裏生徒会の存在を聞いてしまっているのに、あると思うか?」
「いえ…。」
これは脅迫ではないか? チラッとドアを見ると銀髪の先輩が逃さないよ♡ とでも言うようにニコッと微笑んできた。
「…分かりました。」
「物わかりがよくて助かる。ではここに署名してくれ」
特進バッチを付けているのは、ゆくゆくは経済や政治を担うような方達だ。そんな人達に目をつけられるのは、たまったもんじゃない。
「できました。」
「これで佐藤瑞希、お前は裏生徒会の一員だ」
トホホ。
「「あっれー! 見たことない女子はっけーん!」」
裏生徒会に入れられてしまったことを嘆いていると、急に閉まっていたドアが開いた。入ってきたのはお人形みたいなフワフワ金髪の双子だった。
「この子が新しく入った子?」
「そうだ。」
「お名前はー?」
「佐藤瑞希です。」
「わー! 1年生なんだ!」
「同い年だー!」
わたしを挟むようにして、ソファに座っていた金髪美人達。どっちも可愛らしさもありつつ、年相応の綺麗さもある。
「神様は不公平だ」
「どしたの急にー?」
「二人ともこんなに可愛いから、美人は羨ましいなぁって思って」
「可愛い?」
「とっても」
そう答えるやいなや、わたしの手をがしっと掴んで自分の胸まで押し当てた金髪美人の片割れ。
「えっ? えっ!?」
ない。あるはずの膨らみがそこにはない。
「ブアッハッハッハ」
「あーおもしろかったー」
目が点になっていると、金髪のカツラとワンピースを脱ぎ捨て、制服姿になった男の子二人。
「俺は藤城春輝よろしくな〜」
「同じく琉輝だ。よろしくー」
容姿がそっくりな双子は、ニヤニヤとしていた。
なんだろう。良い予感がしない…。




