episode6 「おかしい」
お久しぶりです。
アクトとコイルの話し合いを終えたあくる日の夜。
蛍光灯がチカチカ光る共同スペースの小さなキッチンで、レーヴィは一人考え込んでいた。
コイルの圧倒的な周りへの調和。何よりもその一つに限る。
自分達が打ち解けるのにも時間がかかったのに、なぜあそこまで……麦茶を注ぎながら考えているレーヴィのもとにやってきたのは、トウマだった。
トウマ:「お疲れ。」
彼はそう放って、エアコンの風が当たる所へすぐに移動する。
レーヴィ:「お疲れ様。」
トウマ:「……なあ、やっぱりおかしいよな?あの新入り。」
レーヴィ:「……何が?」
あえて聞き返すレーヴィ。彼の眼は既に鋭くなっている。
トウマ「挨拶の仕方とか、目の動かし方もそうだけど……打ち解け方がおかしい。
あんなの、まるで周りに人当たりのいい模倣に見える。」
その言葉を聞いたレーヴィは、麦茶を入れたグラスを持ったまま少し黙って口を開いた。
レーヴィ:「……確かに最初から完璧すぎる。
あんなに人当たりよく振る舞うなんて、普通じゃ無理だよ。」
トウマ:「そうだよな……あんなに"常識"を知り尽くしたやつが、うちのところに来て一体何がしたいのかがさっぱりわかんないんだよ。」
キッチンは束の間の静寂に包まれる。エアコンの音と、
涼しくなっていく室内で、トウマはさらに踏み込んでいく。
トウマ:「レーヴィ、確か初っ端から突然呼ばれたよな。
『よろしくお願いします、レーヴィ君』って。俺らの事、何で知ってるんだよ?」
レーヴィ:「”誰から”かだよ。
どこかに監視されてるか、誰かが伝えたか、それか……」
トウマ:「それか?」
レーヴィは少し考えた後、
レーヴィ:「いや……なんでもない。」
トウマ:「俺はあんまりこういうこと言いたくないけどさ。
なんか、人じゃないようにしか見えないんだよな。」
レーヴィ:「それは……確かにそうかもしれない。
でも決めつけも良くないからなぁ…」
2人がそう悩む話を、ミレイはキッチンに入るためのドアのそばで聞いていた。
小声でミレイは心の声を漏らす。
ミレイ:「初めて出会ったはずなのに、
名前を呼ばれたんだもんね……
確かに、あれは明らかに人じゃないように見える。
知り得るはずのない名前をここに来る前から知っていた。」
しかし、ミレイは心の奥でその理論を信じ切れなかった。
ミレイ:「でももし……私の知ってる”あれ”だとするのなら……その予感はそうなのかもしれない」
そう言ってミレイはその場を去っていった。
レーヴィはその音は察知していたが、追う気になれなかった。
麦茶を持つグラスをもって、グッとこらえた彼の表情が曇るのをトウマは見逃してなかった。
トウマ「……どうした?何かあったか?」
そう言ってトウマもレーヴィの見ていた方向を見る。
レーヴィ:「僕の勘違いだったらいいんだけど……
この時間に誰か歩いてたかなって。」
トウマ:「まぁこの時間に出歩いてるのなんて大抵ミレイかアクトとかだろ。」
彼のその言葉はまさに図星だった。
ミレイがそこにいたことは間違いないが、同時刻で、
アクトも自分の部屋の灯りを落とさずにおいてあったのだ。
レーヴィ:「これで本当に当たってたら君が疑われそうだね。」
トウマ:「……確かにな」
苦笑いした表情でその場の空気に笑みがこぼれる。
動き出す物語。アクトとミレイは一体何を思っているのでしょうか…




