2-12.【オーガ討伐同時視聴】変異種に会うまで20体 2
ファンコミュニティは半年以内に終わる。
竜輝の言葉でコメント欄が勢いよく流れたが、特に荒れるようなことはなかった。
『せやな』
『応援できるだけで助かる』
『九十円でも高いか』
『真白ちゃんがお寿司食べれたら良いや』
『いいねと高評価か』
『うおおおおお』
『青鬼』
『青鬼を燃やした』
『水は燃える』
『おめ』
雑談になってしまっているが、映像では真白がオーガを倒しているからか、竜輝の話は気にせず、コメントをするリスナーもいる。
ただ竜輝はそのコメントを気にせずに雑談を続けていた。
「真白は最低限の生活が出来れば充分ですからね。僕が来てからですよ。ペットの我が儘に付き合って貰っています」
『青鬼を楽々倒している』
『青鬼について何も言わんのか』
『ペットのわがままって何?』
『聞き捨てならない』
『何を欲しがったんだ』
我が儘の一言で竜輝に詰め寄るようなコメントが増える。竜輝はそのコメント達をくすくすと笑いながら読むと一つ質問コメントを拾う。
「何を欲しがったんだ? 食べ物です。真白の記憶にある美味しいものを全部食べたいだけです」
『記憶……』
『真白ちゃんに美味しいものを食べて欲しいが、記憶か』
『記憶はな』
『記憶はだめだろ』
『真白さんはパフェ好きなんですか?』
「真白はパフェが好きなんですか? 小さい頃、ショーケースのパフェを見ていたんです」
真白の記憶を愛おしむように微笑みながら言った。その言葉にコメントの勢いが増す。
『可愛い』
『てぇてぇ』
『若いうちに美味しいものいっぱい食べて欲しい』
『幸せになって欲しい』
『真白ちゃんの昔話を聞いて良いのか?』
『言ったらあかんやろ』
『やはり記憶を見るのは禁止カードだな』
「記憶を見るのは禁止カード? そう言われましても、僕は真白の記憶がないと野蛮な竜ですよ」
『竜も出すのは卑怯なり』
『記憶があっても変な竜だよな』
『あっ緑鬼だ。かわいそうに』
『かわいそうにじゃないのよ』
『俺らが望んだばっかりに』
真白が圧倒しているからかのんびりとしたコメントが流れる。
そのコメントを見て竜輝は誇らしげな表情をすると当たり前と言わんばかりに口を開いた。
「真白は強いですからね」
すぐに竜輝の言葉に反応したリスナーのコメントが流れていった。
『どや竜』
『画面に映っていなくてもどや顔しているのがわかる』
『いうても俺らも強いしか言えんやろ』
『そうか? 真白ちゃん。強いって言うより真面目って感じがする』
『俺だったら竜王に任せるわ』
『わかります!』
『なんか格好良いよね』
『見てる分にはヒヤヒヤなんだけど、やっぱり、格好良いよ』
『そうそう。俺たちのヒーロー』
「ふふっ。やっぱり真白は素敵ですね」
先ほど真白に伝えていた言葉を思い出したのか、竜輝が目を細めた。
『素敵Bot』
『そんなに言うと薄っぺらくなるぞ』
『軽いんだよな』
「言葉が軽い? 竜が人の言葉を話しているんですよ。もう少し重く受け止めて下さいね。ふふっ、些細な言葉が出てしまう程に真白が素敵なんです。真白は真っ直ぐで……あなた方もそうでしょう。だから僕のようなこの世界では異端なり」
『異端やな。そうそうペットになりたいと言う成人男性はおらんしな』
『俺も飼われたい』
『うらやますぃ』
『いるやん』
『朝だぞ』
『センシティブな話はだめですよ』
『小さい子も見ていますしね』
竜もと言おうとし瞬間にいつものような軽口を叩くようなコメントが流れる。そのコメントを見ると竜輝が口元を緩めた。
「真白のペットの座は渡しませんよ。竜王の特権ですからね」
『ちょっと強いからってずるいぞ』
『ちょっとじゃないと思うがずるいぞ』
『竜王出したら俺ら敵わないだろう』
『そもそも人の姿でペットはアウトだろ』
『さすがに真白さんのご家族の前では言わない方が良いかもです』
『初手ペットとかお兄ちゃん泣いちゃう』
『お姉さんも泣いちゃう』
『相変わらず家族ヅラしている』
「真白には素敵な家族がいるので、親戚のおじさんくらいにしていてください」
真白の家族を思い浮かべながら竜輝が言った。
『後方親戚ヅラね。了解』
『おじさんがお年玉をあげよう』
『えっ。お年玉投げ銭ま?』
『投げ銭オンはよ』
隙あらば集金を促すリスナーを見て竜輝が小さく笑う。だがすぐにわざとらしい不機嫌な表情へ変えた。
「それは真白に怒られるから禁止です。あなた方が高額投げ銭をしたから、真白に怒られたんですよ。もうこりごりです」
不機嫌な声色を作ると言うが、変わらずにコメントが流れる。
『リスナーのせいにするな』
『投げ銭出来るならするだろ』
『記憶で投げ銭切った経緯知っているだろ』
『都合の良い時だけ記憶にないはだめだぞ』
『ちゃんと真白ちゃんの記憶と向き合え』
『草』
『ダブルスタンダードw』
流れてくるコメントに竜輝が頬を膨らませ、口を尖らせるように言う。
「真白以外の事を全て覚えるのは無理ですよ。あなた方が空気を読んでください」
『俺らのせいか』
『まぁ、普段切っているからな』
『わかっていても、財布に延ばす手は止められねぇ』
『17体目』
『おめ』
『もう3体か』
『誰もすごいと言わなくなってしまったな』
『真白ちゃんならって思うようになってしまった』
『わかる。ゴブリン耐久と同じだな』
「そうですよ。流石にシュテンはまだですが、もう少しでゴーシールシャと互角ですからね。現れたら真白に任せるべきかどうか迷っています」
『もうゴーシールシャか』
『後方親戚ヅラ』
『自認親戚おじさんですが何か』
『あーあ化け物が生まれてしまった』
『親戚のおじさんを認めちゃうから』
『魔衛庁に通報されろ』
『2匹同時だ!』
『18、19』
雑談の後ろで真白が赤鬼と緑鬼を同時に討伐するとコメント欄が大きく沸いた。
「もう、オーガは敵ではなさそうですね」
『1時間ちょっとで格下か』
『やっぱり、格下相手に無双できるの強いな』
『あっという間に感じる』
『本当にあっという間だからな』
『20体10分か』
『ゴブリンから二週間でオーガまじか』
『正確には十二日』
『12日』
「二十体討伐できましたし終了しますね。次回の予定は決まり次第ご連絡します。本日もご視聴ありがとうございました」
『おつ』
『同時視聴サンクス』
『おつ』
『ありがと~』
竜輝はそう言うと配信終了ボタンを押した。配信が切られていることを確認すると、すぐに真白の隣へ向かう。
「真白。二十体倒しましたよ」
「え? あっ、だから急に声をかけないで下さいよ」
「ふふっ。倒した分は体に振っちゃいましょう」
「はい」
真白が気まずそうな表情で返事をする。
すぐにスキルレベルをあげると竜輝の方を見る。すると柔らかい表情で真白を見ていた。
「どうしたんですか?」
「リスナーが投げ銭をさせろとうるさかったです」
「オンはだめですよ」
「わかっています。リスナーが真白が美味しいものをたくさん食べて欲しいって言っていましたので、心配しないように今日の昼はキッシュとケーキでも食べに行きませんか?」
突然の誘いに真白が苦い表情をする。
「だから毎日美味しいのはだめです。次のお給料日まで我慢です」
返事をするように真白が言い切ると竜輝が柔らかい表情で微笑んだ。




