2-11.【オーガ討伐同時視聴】変異種に会うまで20体 1
視点が変わります
羊川竜輝はスマホを開くと、配信サイトにアクセスした。
【オーガ討伐同時視聴】変異種に会うまで20体
概要欄:変異種は眷属が倒します。
※この配信は魔衛庁の許可を得ております。
以前の説明をコピーすると器用に編集し、すぐに待機中の画面となった。
「枠は……今からにしましょうか」
開始時間を設定すると、ツブッターを開く。
「経緯は最初に触れれば良いですね」
独り言のように呟くと手慣れた手つきで、”もう少ししたら始めます”と文字を入力する。
送信をし、投稿されたことを確認すると再び配信画面に戻った。
待機人数が増え、三千人になっていた。
『バグった?』
『配信事故?』
『俺たちの記憶を消す準備は出来てるぞ』
『討伐数が減ってる』
『同時視聴とは?』
『消えた青鬼』
『そうかもう青鬼を燃やせるのか』
『青鬼。一時間しか粘れなかったか』
『つぶったーの連絡ある』
『二回行動サンクス』
『頑張って』
竜輝が配信の案内を投稿するよりも前に気付いたリスナーがコメントをしていた。
そんなコメントなど気にせずに竜輝は待機人数を確認する。
すぐに待機人数は増え、一万人を超えたころを見計らい、竜輝は配信開始のボタンを押した。
「みなさん、おはようございます。羊川竜輝です。今見ている配信は正常です。ふふっ。始めますね」
竜輝が挨拶をするとリスナーたちが反応するようにコメントが流れていく。
『おはよう(二回目)』
『二回行動さんくす』
『真白ちゃん戦ってる?』
『どゆこと?』
『配信ありがとー』
竜輝がコメントを見る。リスナーが状況を飲み込めていないのは明確だった。
まずは説明をしようと竜輝がわざとらしく高い声で話し始めた。
「真白が戦っているのを同時視聴しましょう」
『同時視聴?』
『どゆこと』
『説明キボンヌ』
「真白が後二十体くらいオーガを倒せそうでしたので、おかわりをします」
『オーガ耐久をおかわりとは?』
『そんなに戦って大丈夫』
『さっき青鬼を燃やしていたし』
『疲れてない?』
「真白は以前ゴブリン体耐久をしていましたし、その時と同じ気持ちで見てください」
『ゴブリン耐久と同じ?』
『了解~』
『何かあったの?』
『通知来てびびった!がんば!』
「何かあったの? リスナーが新人のうちは作業は配信外でするなと言ったせいですよ」
竜輝が真白の記憶を探りながら話した。
新人は配信して顔を売れ。リスナーからそのアドバイスを聞いて以来、真白は律儀に守っていた。
『俺らのせいなの?』
『まぁけど後から言われるよりはいいか』
『スライム百体倒したって話を聞いて肝を冷やしたのは今となっては良い思い出』
その事を知っているリスナーは竜輝の説明に納得したようでいつも通りにのんびりとしたコメントが流れていった。
「スライム百体。ふふっ、配信一か月くらいの時ですね」
『あれ? その時竜輝はいたっけ?』
『ヒント:記憶』
『記憶が捏造されている』
『一ヶ月目でスライム百体ま』
『いつの動画』
『動画ないけど』
『配信外だから…』
『撮れ高ゼロだから』
『配信外で何やってるの』
『3月18日の冒頭。非公式解説サイトに書かれていた』
「非公式解説サイト? ああ。真白の倒した魔物を記録しているサイトですね」
竜輝がサイトの頁を頭に浮かべながら言った。
どこまで言って良いか考えているのか、ほのかに硬い表情をしていた。
『竜王巡回済みか』
『ええんか』
「事実をまとめているだけなので問題ないですよ。きっと。ですが小姑のように修正依頼がかかっているのはかわいそうなので、止めてあげてください」
『修正履歴怖い』
『俺の他にもいるのか』
『やめろ』
『竜輝は編集しておらんの』
『こわっ』
「僕は編集していないのか? はい。誹謗中傷が書かれていなければ気にしません。……ただ問題ありそうなのは魔衛庁に通報しています」
竜輝が魔衛庁と言うまでに僅かに間があった。ただリスナーは気付いていないようで、変わらずにコメントが流れていた。
『節度守っておけよか』
『ま、魔衛庁』
『弁護士とか頼まないの』
『声かければ一瞬で来そうな気がする』
「魔衛庁ありきですからね」
表情は微笑んでいたが、これ以上聞くなと言わんばかりの口調だった。
竜輝の反応でこれ以上話題にしてはいけないのを察する。
『リスナーが弁護なんかやだな』
『魔衛庁に任せるのが一番ですからね』
『真白さんが裏でオーガ二十体やりそうなのは伝わった』
『オーガだよな』
『魔衛庁のサポート手厚いし、このままガードマンになるのかな』
『空気嫁』
『ここはオーガの話に戻る所だろ』
「良くないものは選ばないので、コメントをする分には構いませんよ。このままガードマンになるのかな? それはないですよ。真白は配信を続けていくと思いますよ」
リスナー同士で言い争いをすると真白が悲しむ。なるべく大事にならないようにと竜輝が補足する。
「ただ僕の予想だとファンコミュニティは半年以内で終了しますよ」
これも言っても問題ないだろうと考えながら竜輝が言った。その言葉にコメント欄が一気に流れた。




