2-9.【オーガ】変異種に会うまで30体 4
竜輝さんの先制攻撃のせいか、どうやら私もオーガ達に警戒されているようだ。オーガは私の前に現れず、気配を殺して遠くから攻撃してきた。
それでも一匹ずつだからなんとか対処出来ている。問題ない。よし、つぎ
「おっと」
私に向かってきた水の弾丸を避けた。水と言うことは次は青鬼か。不利だけど燃やせば良い。
ならまずは青鬼の場所だ。水の軌道が見えているので、どこから攻撃が来るかわかる。
飛んでくる弾丸を避けながら飛んでくる方向に向かっていく。
「よし」
近距離から放たれたような弾丸を避けると目の前には青鬼がいた。青鬼は私が来るとは思わなかったのか、少しひるむように後ろへ下がる。
今だ。そう思った瞬間目の前に火柱が立った。自動発動? けどちょっと火力が足りない。
あとちょっとなんだけど。
「あれっ?」
そう思った瞬間、段々と火の勢いが強くなった。これならいけるかもしれない。このまま全力だ。そう思うと畳み掛けるように更に火の勢いが強くなった。
それからすぐに青鬼の魔力が火を通して流れ込んでくる。吸収できてる。ただ気は抜けない。
そのまま集中して吸収していると青鬼の魔力はすぐに感じなくなる。急いで確認するように目の前を見ると青鬼が消えていた。
どうやら討伐出来たようだ。
良かった。ただ相手は青鬼だ。スタミナ切れが気になる。問題ないかな? 確認するように小さな火を出した。
「良かった」
いつも通りだ。と言うことはスタミナ切れは起きていない。
あっ。次の鬼が来る。この気配は緑鬼だ。風の場所は?
風の気配を感じた部分に火の魔力を注ぐ。なんかわからないけど、青鬼と戦ってから一気に楽になった。
よし。これならいける。
この勢いにのって何匹か倒していると、突然、目の前に光の壁が出来た。
光の壁? 変異種? 警戒しながら見ると「僕ですよ」と言う竜輝さんの声が聞こえた。
そのまま声が聞こえた方へ視線を動かすと何も前触れもなく、竜輝さんが立っていた。
「竜輝さん?」
「はい。竜輝です。真白。今のでちょうど三十体ですよ」
相変わらずのんびりとした口調だった。だからか三十体という言葉が頭の中を通過して何処かへと行きそうになる。
「三十体」
その言葉を引き留めるように呟く。三十体!? えっ? 討伐数? まだ十体くらいしか倒していないと思っていた。
「本当ですよ。ねっ」
実感がわかないので、思い出そうとしていると、竜輝さんがカメラに向かって問いかけるように言い、私にスマホを向けた。
そのままスマホを見るとコメントが視界に入る。
『ちゃんと三十体倒した』
『真白ちゃん。まだやれますけどって顔してる』
『さっき初オーガって言っていたよね』
『まだ一時間たっていないのに』
『三十体おめでとうございます!』
リスナーさんが祝福してくれている。切り上げようとしていたら、こうものんびりしていない。ならそう言う事なんだろう。
「知り合いに確認してもいいですよ」
竜輝さんが駄目押しのように言った。やっぱり倒したんだ。
『信用されていないwww』
『日頃の行いか』
『草』
信用されていない。これはまずい。リスナーさんに竜輝さんが我慢すれば嘘をつける事をバレてはいけない。急いでコメントを見ながら話す。
「あ、ありがとうございます。大丈夫です。竜輝さんが嘘をつかないのは知っています」
するとスマホに誇らしげな表情でカメラ目線の竜輝さんが視界に入った。
『ドヤ竜』
『竜王が人に好意的なんだと思うしかない。腹立たしいけど』
「ふふっ。竜王の特権ですよ」
いつの間にかコメントを読んでいた竜輝さんが微笑みながら言った。
竜王ってなんだろうな。凄いはずなんだけど。突っ込みたくなるが我慢してコメントを見る。
『都合の良いときだけ竜王の肩書きを持ち出すのは良くないぞ』
『竜王は禁止カード』
『俺も竜王になって真白ちゃんのペットになりたい』
『おいやめろ』
『通報しました』
コメント欄がいつも通り変な方向に行ってしまう。
平和だな。ヤバかったらこんなのんびりとしたコメントは流れないし、きっと三十体倒したんだ。
だけど実感がわかない。
「実感がわかない」
「僕はちゃんと見てましたよ。真白の勝ちです」
小さい声で呟いたつもりだったが、どうやら竜輝さんには聞こえていたようで、すぐに竜輝さんの優しい声が聞こえた。
見上げると優しく笑った。相変わらずずるい言い方だ。それでもちょっと嬉しくて、口元が緩む。
「そっか。出来たんだ」
呟くくらいだと思ったけど、リスナーさんには拾われていたようだ。
一気に文字が流れ始めた。急いで視線をスマホに戻す。
『うおおおおおお』
『おめでとうございます』
『流石俺たちの真白ちゃん』
『まじで青鬼まで燃やした』
『凄いですね』
『水は燃やして倒す』
『蒸発するしな』
青鬼を燃やしたというコメントが多い。そう言えば青鬼を倒していた気がする。
「燃やせましたね」
まだだと思っていたのに、討伐出来たんだ。
『燃やせましたね』
『強者の言葉』
『そうだね』
『この世界の物は大抵燃やせばなんとかなるからね』
『青鬼も燃やされるとは思わなかっただろうな』
『いつもより火が強かったしな』
『スタミナ切れしてませんか?』
「スタミナ切れ!?」
そうだ。青鬼も討伐していたし、スタミナ切れが起こっていてもおかしくない。急いで手のひらを前に出し火を出す。
すると私の心配が消してくれるように、小さな火がユラユラと煌めいていた。




