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1-42.魔物と恋

 私に会いに来た。衝撃的な言葉に頭が混乱してしまいそうだ。なるべく冷静になれるように小さく深呼吸をして、リンドヴルムさんの言葉を待つ。


「リンドヴルムさんは私に会いに来たんですか?」

「はい。真白なら僕に寄生している魔物を討伐してくれると思ったんです。真白は僕と考えが似ていましたからね」

「リンドヴルムさんと? 私が?」


 全く似ていないと思うけど。そのままリンドヴルムさんの言葉を待っているとリンドヴルムさんがゆっくりと口を開いた。


「似ていますよ。僕が魔物に襲われている間、真白は増えた厄介な魔物を間引いてくれましたからね」


 ああ。なんだ。私が魔物の討伐をしていたからか。


「それを言ったら他の冒険者もリンドヴルムさんと同じですよ」

「そうですが、そもそも日本橋に来るのはここ半年で真白だけでしたし、僕が頼れるのは真白だけでしたよ」


 確かに同期の友達は他のダンジョンに行っていたし、専門の研修もまだしていなかった。必然的に日本橋ダンジョンは私の貸し切り状態だった。偶然だけど、必然と言う言葉を否定出来ない状況だった。


「ですので真白が僕に寄生していた魔物が間引き対象だと思ってくれることを信じて会いに行ったんです」

「命の恩人みたいに思われているみたいですが、実際私はリンドヴルムさんを助けたつもりはないですからね。そう良く思われるのは正直複雑です」


 寧ろ討伐しようとしていた。結果としてリンドヴルムさんは助けられた事は良かったと思っている。だけどだからと言って感謝されるのは後ろめたさもある。


「知っていますよ。でも今の真白なら僕が同じ状態になったら助けてくれます」


 ふわりと笑った。本当にそう言い切るのがずるい。関わりを持ってしまった以上私はリンドヴルムさんを見捨てる事は出来ない。

 ただその言葉に素直にはいというのも少しムカつくのも確かだ。


「そんなのそんな状況にならないと知りませんよ」


 視線をそらして言うとリンドヴルムさんは小さく笑った。


「ふふっ。だから少し意地悪なんです」

「そうはっきり言うからですよ。私の事を知っているって、何かリンドヴルムさんの言った通りになっているみたいで嫌です」

「でしたら僕に命じて下さい。僕に余計な事を言うなって。僕は伝えるのは苦手なのでどうやら言い過ぎてしまうみたいですし」


 さらっと言わないで欲しい。確かにリンドヴルムさんに振り回されるのは嫌だ。だけどだからといって命令して自分の思い通りにするにはもっと嫌だ。


「それは嫌です。命令するのはあまり好きじゃないので」

「ふふっ。真白らしいですね。僕はあまり気にしませんよ。元々言葉を持っていなかったですし、真白と一緒にいれれば充分ですからね」

「でしたら、意志疎通出来ないと困るんじゃないですか?」


 人と意思疎通をするために人の姿になったって言っていた。そしたら話せないと困るんじゃないのかな。


「余計な事を言わなければ最低限は話せますし、それで十分です。魔衛庁とも話せるのでダンジョン攻略も影響が出ませんよ」


 そう言えば話すなではなく余計な事を言うなって言っていたな。なんだかんだでしたたかだな。なら良いかもしれない。ってそれは良くない。頭の中に浮かんだ言葉を消すように頭をふる。


「ダメですよ。ちゃんと自分の伝えたい事を話してください」

「はい」


 私の言葉にリンドヴルムさんがふわりと笑った。手玉に取られるのは確実だけど、これで良い。


「討伐も嫌な時は嫌って言ってくださいよ」

「討伐ですか?」

「はい。リンドヴルムさんと同じ魔物ですし、辛いならなるべく無理はして欲しくないです」

「ありがとうございます。ふふっ、真白は優しいですね。ただ僕は魔物に対してもどうも思っていないんですよ」

「どうも?」

「僕にとって人も魔物もそんなに変わらないですからね。寧ろ討伐したら真白といられる存在です。とても素敵な存在ですね」


 討伐したら私といられる。その言葉に頭が痛くなりそうだが、他の魔物に対してここまで言ってくれるとすっきりするのも確かだった。


「ありがたいって」

「ふふっ。僕なりの恋の駆け引きです。人のようなやり取りは苦手なので、目に見える方がわかりやすいので助かります」

「恋の駆け引きってなんで本人の前で言うんですか。と言うか恋って。それは本当に恋なんですか? 私の知っている恋と違うからと言っていますが、違いすぎて正直、私はリンドヴルムさんの気持ちがわからないです」


 リンドヴルムさんはどこか壁がある。好きだと言っているのに、どこか私に対して線を引いているように感じる。

 一緒にパフェを食べに行く外出。危ないから手を繋ぐ。そんな事を言うからわからなくなるんだ。


「恋ですよ。真白の記憶を通して知った恋はずっと横で愛でて欲しいと思う自分勝手で一方的な気持ちです。僕のこの気持ちにぴったりな言葉です」


 リンドヴルムさんは恋を自分勝手で一方的な気持ちと解釈したと言うことなんだ。

 私は好きになって欲しいという純粋な気持ちなのに。なんか苦しくなってくる。


「他の人の前ではそんな事を絶対に言わないで下さいよ」

「言いませんよ。恋と言ったら付け入る隙を見せてしまいますからね。僕は真白の唯一の可愛い眷属。真白は恋をしないから僕以外寄せ付けない。完璧です」


 完璧? どこがだ。私には到底理解出来ないが、なんとなく言っている事はわかる気がした。一緒にいてくれれば良い。それだけなんだろうな。


「そもそもリンドヴルムさんは私に恋をして欲しいとは思わないんですか?」


 自分勝手で一方的な気持ち。その言葉が似合うくらい私の気持ちは無視されている。だからだ。凄くもやもやしているのは。


「はい」


 とても良い笑顔ですぐに答えた。腹立つほどに。


「真白が恋をして変わってしまうのは怖いです」

「私が変わる?」

「はい。人は移ろいやすいようですからね。真白が恋をして変わってしまうのは怖いです。僕は今が一番好きですからね」


 今の私が良い。だから恋をしないでこのまま一緒に暮らしたい。その言葉がしっくりと来た。いつもの私と記憶のようにパフェを食べたい。リンドヴルムさんにとって大切なのは今の私。

 

 ただリンドヴルムさんはそれが口説き言葉になることを知らない。リンドヴルムさんのその純粋な言葉は意図せずに私の心を揺さぶっていく。

 それは恋をしていると言っているが、本当は恋を知らないからだ。


「私は恋をしませんよ」


 そんな男を好きになると苦しくなるのは自分だ。自分に言い聞かせるようにリンドヴルムさんに言う。

 その言葉にリンドヴルムさんは満足したのか嬉しそうに笑う。


「その言葉が聞けて安心しました。ふふっ。僕はあなたの可愛い眷属としてずーっと一緒にいますね」


 リンドヴルムさんは格好良くて優しくて、仕事も出来る。私に都合の良い。酷い男だ。

第一章をお読み頂きありがとうございます。

次回からは二章になります。引き続きよろしくお願いします。

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