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第一話



「殿下、突然で驚かれるかもしれませんが、実は私達、お付き合いをさせて頂いておりますの。」




説明しよう。

ここは皇宮の中にある、皇太子の応接間。


そこで私、ロゼリアとその恋人のローガン。

そしてロゼリアの幼馴染であり、この国の皇太子であるルーカスは向かい合って座っていた。






私、エリカはこの乙女ゲーム『プリチョイ』の世界の悪役令嬢、ロゼリア・リトマンとして転生した。


転生して数年過ごしたのち、学園に入学して乙女ゲームのヒロイン、リリアーナと知り合った。

彼女とは特別親しくはないが、何か因縁があるわけでもなく、いい感じの距離感でお互い接していた。


リリアーナがどのルートに入るのかを注視していた私は、彼女が大神官レナードのルートに入ったのを知るや否や、前世で一目惚れしてからずっと大好きだった、今や私の隣に当然のように座っているこの男、ローガン・アトラスの攻略を勝手に始めたのだ。




ローガンはこの帝国にある魔塔の魔塔主。

簡単に言えば、この国で1番強い魔法使いだ。


私が一目惚れした彼は、黒く癖のある髪に、エメラルドのような緑色の美しい瞳をしている。

そして左目の目元のセクシーなほくろに浅黒い肌。

魔法使いなのに何故か立派に作り上げられた、その完成された肉体美。

付き合った今でも、これが私の彼氏なのか…!と惚れ惚れしてしまうレベルの存在だった。




彼と初めて出会った時、あまりに私の性癖ドストライクのその見た目から、思わぬ刺激に耐えきれず、眩暈がして倒れてしまった。

そんな失敗をしてしまったので、"初対面から失敗した…!"と思っていたのだが、彼は案外、私を不思議で面白い奴だと思ってくれてたみたいで、逆にそれが功を奏して仲良くなるキッカケになった。

因みにこの時、私を医務室まで運んでくれた命の恩人は、隣にいた幼馴染のルーカスだった。まじありがたや。




ローガンのルートは、ヒロインと結ばれた後は別の国の魔塔に所属しその国で暮らすという極々普通のルート……。

というか、まだこのルートが可愛く見えるほど他のルートが残酷なのだ。



特に今、目の前に座っている皇太子ルーカスのルートなんかはもう一番と言っていいほどに最悪だ。


1つは1番人気の王道ストーリーで"みんな平和で幸せのハッピーエンド"なのだが…。



そこから一歩間違えると、地獄へと突入することになる。



その地獄のルートは"一生監禁ルート"



ルーカスは皇家の特徴である金髪碧眼に美しい顔立ちをして、普段は皇族として紳士的なフリをしてはいるが、実は少々荒っぽくて、腹黒な性格だ。

そこから来るのだろう、曲がった性癖。

それだけは前世の私は勿論、ゲームをやっていた人たちから見れば1番避けたいルートだった。



その観点から見てレナードを選んだリリアーナは彼女の好みもあるのだろうが、1番いいルートに進んだような気がする。


優しくて落ち着いた大人しい性格のレナードを選んだこの世界のリリアーナから見れば、レナードとルーカスの表の性格が少ーしだけ似ていると言う点で可能性はあったのかもしれない。


しかし本物の紳士を選ぶという点ではルーカスではレナードに"素直な心を持っている"という点で負けているので、恋愛対象にはならなかったのかもな、と思ったし、良い眼を持っているなと、純粋に称賛した。




勿論、先程言ったルーカスのもう1つのルートはちゃんとハッピーエンドで終わるし、それが1番人気で王道なルートだったと言える。



だからルーカスという人物自体は受ける人には受けるし、普通にかっこいいとも思うんだろうが、結局は好みは人それぞれという事だろう。



実際、私だってローガンに惚れてる訳だし。




一応、今日まで幼馴染としてそれなりに仲良くはして来ていたが、実はルーカスは何故だか私に好意を抱いているようだった。



しかし隙あらばローガンと結ばれる気満々だった私は、変に期待させるようなことはしたくなかったので、ルーカスから向けられる好意には絶対に応えないようにして来た。



私、ロゼリアとローガンが結ばれるというストーリーは元々ゲームにはなかったので、"因果律"というものは、ないにも等しいのかもしれない。



そう思っていたから、私は早くこの国を出たかった。



ゲームのシナリオ終了後の私の人生はまだよくわからない。



けどひとつ、困ったことがある。

それが目の前のルーカスだ。



先程も言ったが、彼はいつからか私に好意を持っている。



だけどいずれヒロインが現れたら、その気持ちも変わるだろうと軽視していた。

だから彼からのアプローチを躱しながら生きてきたのに、学園でヒロインに出会ってからもルーカスは彼女に全く見向きもせず、何故だかずっと私に執着していた。



正直、そのしつこい想いにめちゃくちゃ困っていた。



そして何だか最近は、日に日にアプローチが過激になって来ていたのだ。

その煩わしい視線や接触から逃れるためにローガンと結ばれて、ローガンルートのエンド、"国外に引っ越す"という結末で早くこの国を出て行きたい。


そしてその為にはゲーム内の、どのルートの終盤でも設けられていた試練の一つである、




"攻略対象者(それぞれ)への打ち明け"




をしなければならないらしい。


先ほども言った通り、"因果律"関係なくローガンと付き合った私ならしなくてもいいんじゃ?と思ったのだが、何故かここに来てそこにだけは"因果律"が存在するらしい。


これは私が悪役令嬢だとしても、攻略対象者と付き合っている時点で、私も例外ではないというサインのようなものだろう。



この試練は攻略対象者、一人一人に自分とローガンが付き合っていることを打ち明けて、それぞれに認めて貰わなければならないという意味のわからない謎の試練なのだ。



(まあ、乙女ゲームっぽいと言ったらそうなんだろうけど……。)



恋には試練が付き物、という製作者の意味のわからない発言から生み出されたゲーム終盤のこのシナリオだが、逆に言えばここさえ乗り切れれば、あとはローガンと結ばれて国を出るだけだ。

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