10・メッセージ
もう見慣れたと思った彼の顔は、改めてみるとやっぱり恐ろしいと思えるほどにはインパクトがあることを思い出し、だけどその太陽を思わせる瞳は、私に恋しさを募らせる。
『どう説明すればいいか。ああ、まずは、久しぶりだな。俺は、とりあえずまだ生きている。こんなみっともない姿では、俺が誰かもわからないよな。グライブだ』
そうやって始まった映像に、誰もが一言も口を開くことなく黙って見入っているようだった。
一夜明けた診療所の仮眠室に、朝ごはんが出来たと呼びに来てくれたドクと、昨夜は遅くまでドクと話をしていたらしいファランスさんと3人で、私は朝ごはんをいただき、早速今日の予定を聞かされた。
昨夜のうちに連絡のついたグライブの友人の何人かが午前中に来ることを知らされ、何とかメモリーオーブを開く目途もついたとのこと。
朝食もそこそこに、来客用のお茶の準備をしていれば、来ると予定されていた人たちが早い時間だというのにもかかわらず集まってきて、なんだかんだと広く思っていたドクの仕事部屋――私が最初に通された部屋だ――が狭く感じるほどだった。
集まった人たちは、なんというか、グローバル色が豊と言うか、1人として同じ種族の人がいなかった。最初に診療所に来たのは天使と悪魔の夫婦。次にドワーフ。その次に来たのは、綺麗な白い甲冑を身に着け赤いマントを翻した、威厳たっぷりな黒い豹の獣人。あとは、癖の強い紫色の髪のお胸が大きい美人な女のひととか。で、ドクが鬼でファランスさんはエルフ。そして、私が異世界の人間と言う……何か、スゴイ絵面。
でも、人間の友人がいたとしても、結果的には人間のほうが短命なことを考えると、人間の知り合いがここに現れないのは、ある意味仕方ないことなのかもしれないと思う。何しろ100年と言う月日が経ってしまっているなら、もうすでに人間なら生きてはいないだろうし。
改めて、今日集まったひとたちの中で、グライブが最後に仕事をしたのはモニカ・エルディースさんというひとだった。
天使と結婚した悪魔な奥様だ。見た目は人と変わらないけど、少しだけ耳がとがっていて、濃い灰色の長い髪と、縦に細長い瞳孔の特徴的な赤い目をした人で、二カッと笑うと大きな犬歯がちらりと見えて、何とも可愛らしい人だなと思った。
ちなみに、天使である夫のジェリエル・エルディースさんは、エルフのファランスさんに負けないくらいの美しいひとで、男性でも女性でもない中性的な見た目をしていた。金髪の青目で翼は見当たらなかったけど、たぶん仕舞ってあるだけなのかもしれない。
エルディース夫妻は今現在、そろってレンジャーと言う仕事をしているのだとか。
「モニカがまだ傭兵してた時の話なんでしょ。本当に100年以上前なのねぇ」
古い記憶を掘り返すように、癖の強い紫の髪の女性、サンタナ・ユミルさんがそう言って自分の腕を胸の前で組んだ。大きなお胸が腕に乗っているのが、どうしても気になってしまうが、そこは、うん。仕方ないよね!
サンタナさんは妖精族の人らしいのだけど、見た目は人と全く変わらない。ただ違うところがあるとすれば、彼女の左腕に巻き付く何かの植物くらいだろうか? 肩辺りに細い花びらが特徴的な淡いピンクとも紫とも言えるような色合いの大きな花が咲いていて、時折、その花から甘く爽やかな香りが漂ってくる。
サンタナさんは、機械工学士と言う仕事をしているらしい。
「当時のことはよく覚えてるよ。だって、丁度、旦那さんと結婚するかどうかの話し合いが家族の間でもめにもめてた時だったからさ」
サンタナさんの言葉に、モニカさんも当時を思い出したようで、旦那さんであるジェリエルさんを見上げて懐かしむように笑って見せた。
「そうだな。当時は自分のことでいっぱいだったこともあって、グライブのことを気にかけてやれなかった。友人である彼が大変だというときに、彼には色々助けてもらっていたのにな」
ジェリエルさんがそう言ってどこか切なげに微笑むと、モニカさんはそっと彼に寄り添ってその背中をやさしくさすって見せた。
「いろいろな事情が誰にでもあるだろ。ジェリが気に病むことはないと思うぞ。それぞれ、グライブについては思うところもあるだろう。俺だってアイツには助けられてばかりだった」
気落ちしているジェリエルさんを励ますように、黒豹のユーデス・グロブ・オーガイムさんがそう言った。
とても豪華な白銀の甲冑を身に着け、背には赤いマントをはためかせ、騎士のような凛々しさをまとううひとと言うのが、私の最初の印象だった。
そして、どうやら私のイメージは間違っていなかったようで、ユーデスさんは、この国のとある騎士団の団長さんをしているそうだ。真っ赤な目と、闇夜に染められたかのような漆黒の体と、正反対の白い甲冑が、彼の凛々しさをより際立てているようにさえ見えた。
「グライブに助けられたことのない奴はいねぇだろうよ。ワシだってアイツが一番のお得意さんだったしなっ。ワシはアイツの立派な尻尾を見送るのが大好きだったんだ。そいつが拝めないなんて、悲しすぎて泣けてくらぁ」
そう言って鼻をすするようなしぐさを見せるドワーフのアーケイ・サドズさんの言葉に、誰もがしゅんと気を落としたように見えた。
そんなグライブの友人たちの姿を見ていると、本当に彼がみんなに深く思われていることを感じさせてくれる。
そして、そんなしぼんだ空気を打ち消すように。
「まっ。思い出話にしんみりするのは後回しにしようか」
と、ファランスさんがメモリーオーブを取り出し、モニカさんへと手渡した。
「鍵は前と同じって、言ってたのよね?」
モニカさんはオーブを受け取ると、確認するように私に顔を向ける。
「はい。そう言ってました」
私がそう返せば、モニカさんはひとつ頷いてテーブルにオーブを置くと、オーブを包むようなしぐさで両手をかざした。すると、オーブは淡く光りだし、光の文字が帯のように連なり、幾重も浮かび上がってオーブの周りを回り始める。
『我ら夜の女神に勝利を捧げるものなり』
モニカさんが発した言葉には、不思議な響きがあった。頭の奥で反響するような。耳ではない別の器官が『音』を表したかのように謎めいていて、黄色かったオーブは、モニカさんの鍵により開き、青く色を変えた。
そして、ふわりと浮かび上がる映像に、誰かが息をのむ音が聞こえた。
空中に透明なモニターでもあるかのように、オーブから発せられる光が中身を再生していく。
「ここまで進行してたのか……」
映し出されたグライブの姿に、そう呟いたのはドクだった。
私は、彼のこの姿しか知らない。だから彼の友人たちが口元を抑え、苦しそうに眉を寄せるその理由を、正しく感じ取れていないかもしれない。
だけど、少なくとも、彼らがグライブの姿を見て、彼が生きていることを知って、安堵していたのは感じ取れた。それが、私には嬉しかった。
映像は彼の状況や私のことなどの説明だったり、彼の友人たちへの最後の言葉と続き。どれだけ言葉を尽くそうと、時間が足りないと、映像の中のグライブは笑っていた。
『――この姿を見せるときっと、お前たちは自分を責めるだろうから映像を残すつもりはなかったんだが。そうも言っていられなくなった。やはりこれは身勝手だな。本当に申し訳なく思っている。一方的にしかメッセージを送れないのは、こういう時には便利かもしれないな』
映像の中の彼は、終始懐かしそうに、穏やかに話していて、まだそこまで時間もたっていないはずなのに、私は彼のぬくもりが恋しく感じた。彼の声を聞きたくて、私の前を歩く彼の姿を思い出すとたまらなくなる……。
思い出すのは彼の優しい瞳、彼の話してくれた思い出も、何もかもが、私の中にあふれて、彼のいない不安に、私は自分の体を抱きしめてしまう。
そうやって彼の映像を食い入るように見つめていれば、ふと映像の中の彼が顔をそらして柔らかく微笑んだ。
『俺は、幸運だと思う。残り少ないこの命を、誰かのために使える。それは俺の我儘でもある。それに付き合わされる彼女には申し訳ない気もするんだ』
そこに、私がいるの、だろうか?
『俺は、彼女の笑顔に救われた。彼女は、優しい人で、好奇心旺盛、だな。夜の女神と同じ黒い髪と、黒い瞳が、とても美しい。耳心地よい声はいつまででも聞いていたくなるし、ずっと話していたくなる。もっと一緒に居られたら……いや、やめよう。未練だな……』
彼はそう言うと、軽く首を横に振る。
そしてゆっくりと息を吐くと、真っ直ぐにこちらを見つめ。
『最後に、みんなありがとう。心から感謝している。リオを、頼むな』
そういって微笑む彼の映像がプツリと終わる。
なんで、最後の最後まで私のことなのかと、私は両手で自分の顔を覆った。
泣きたくもないのに、涙が流れて仕方ない。止めようにも後から後から湧き出てしまって、まるで壊れた蛇口のようで、そんな私の背を誰かがずっと優しくなでてくれて、そのせいで、余計に涙は止まらなくなってしまった。
私が泣き止んでやっと落ち着いたころ、ドクが糖蜜を入れたミルクを持ってきてくれた。若干、子供扱いされてる気もしないでもないが、こんだけべそべそと泣いていれば仕方ないのかもしれない。
気が付けば、私だけではなく、ジェリエルさんやアーケイさんも泣いていたようで、私と同じようにドクから暖かい甘いミルクをもらっていた。なんか、ちょっとだけ親近感。
そして、それぞれが出された飲み物を口にしつつ一息ついたところで、ドクが口を開いた。
「進行度から見るに、末期だと思う」
医師の口から出るそれは、事実上の『終わり』を意味していた。
「延命処置はできるでしょ」
ドクに顔を向けて、モニカさんがそう言葉を吐き出すが、ドクは首を横に振るだけだった。
「専門じゃないけど、普通の腐敗じゃない。呪いによるそれにたいして、実際の延命処置がどれだけ有効かは分からないわね」
と、サンタナさんが言葉を発すると、それにつけ足すように。
「そもそも呪いを受けた体に直接触れるのは危険すぎるし、なにより、それで俺たちが傷ついてみろ。心を痛めるのは他ならないグライブだぞ」
ユーデスさんはそう言って、深くため息を吐き出した。
ここに居る人たちは、きっと誰一人として呪いに触れることなんて恐れてはいないんだ。そう思った。
私は自分の右腕にそっと触れる。あの痛みを思い出して、私は下を向いた。この痛みをほかの人たちに与えるなんて、グライブは絶対に嫌がるはずだ。そんなの、ほんの少し一緒に居ただけの私にだってわかる。
「だが、ある意味、呪いがグライブを生かしているのは間違いないだろう」
ジェリエルさんの静かなその言葉に、またみんなが複雑な表情で下を向く。
「本来の腐食の毒なら、あそこまで進行していればとっくに中身が液状化して死んでる。生きているということは、通常の腐食毒とは違うってことだな。外側より中身のほうが進行してない可能性もあるが……リオの話を聞いた限りじゃ、生きてることが奇跡としか言えねぇな」
ドクそがう言葉を吐き出してお茶を一口飲みこんで見せた。
奇跡か……と、ドクの言葉に私は大事なことを思い出した。
「とは言え、グライブをそのまま放置しておくなんて私は嫌よ。運ぶだけなら何とでもなるし、私なら直接触れなくても彼を運べるわ」
そう言って顔を上げるサンタナさんに、ユーデスさんも頷いては見せるが。
「リオの言う通り、グローブや装備品の上からなら大丈夫だというなら、ここに運び込むことはできるだろう。だがその後はどうするんだ」
そう言って難しい顔を見せる。
「それに関しては診療所の地下を使えないかな? 隔離はできるよね?」
ユーデスさんの言葉に返すように、ファランスさんがそう言ってドクに顔を向ければ、ドクも難しい顔を見せながらも、一応、頷いて。
「地下を使うのは構わんし、そもそも隔離患者専用に作った場所だ。問題はない。だが、治療ができないことが大問題なんだ。医学で呪いは解けん」
ドクがそう答えれば、ジェリエルさんも頷いて。
「神に近しい『神族』であっても、神が与えた直接的な呪いは解けない」
と答える。
そう、呪いを解く方法なんて限られているのだ。
だからこそ、私はミルクを一気に飲み干すと、テーブルにカップを静かに置き。
「あの、皆さんの中に『奇跡の水』について知ってるかたはいませんか?」
そう聞いてみることにした。
気持ちがあふれて頭がいっぱいになってしまったが、私の目的の一つでもある。みんなが知らないのであれば、知ってそうな人を探すところから始めなければならないけど、ここに居る皆さんは、少なくともグライブと同年か、それ以上の人たちばかりに見える。つまり、きっと何かしらの情報は持っているはずなのだ。
今まで黙っていた私が突然、声を上げたことで部屋にいた全員の視線が私に集まった。
そして、私の質問に最初に答えてくれたのはジェリエルさんで。
「神の許しが与えられるという水のことか?」
そう言って私の顔をじっと見つめるから、少しだけ居心地の悪さは感じつつも、私はしっかりと頷き返して見せた。
「グライブに聞いたことなんですけど、それがあれば、もしかすれば呪いが解けるかもしれないって」
そう言葉を続けた私に、この場の全員が難しい顔をさらに難しくしかめて見せた。
「奇跡の水なんて、医者をやってれば嫌でも耳にする機会はあるが、実際、本物を見たことは一度もないな」
と言うドクの言葉に全員が納得するように頷いていた。
「私も存在は知ってるけど、見たことないね。まあ、ただ作れるものではあるらしいけど。ほら、なんだっけ。ジェリは天使だから知ってるんじゃない? 神殿で作る、奇跡を起こすっていう、ホラッ」
ファランスさんがそう言って、ジェリエルさんに「アレだってば」と、詰め寄って行くと、ジェリエルさんは「アレ?」と呟きながら、懸命に思い出そうとしていて。
そしてふと、ジェリエルさんは何かを思い出したように手を打った。
「ファラの言う『アレ』とは、『生命の犠牲の儀式』のことを言っているのか?」
「そうそれ!」
なんてファランスさんが嬉しそうにうなずいた。
うん。奇跡からちょっと遠のいたと思うのは私だけか?
「その儀式って、確か奇跡を起こす類のものじゃなかったかなって」
ファランスさんがうろ覚えな感じでそう言うと、ジェリエルさんは「うーん」と唸りながら、腕を組んで見せた。
「あれはその名の通り、祈りを捧げ、己の何かを犠牲に奇跡を願うものだ。厳密に言えば奇跡でも何でもない。いわば取引のようなものだな」
そんなジェリエルさんの言葉に、ますます私が思っている奇跡から遠のいて行くばかりなような気がしてならないが、続けて。
「おまけに、何を差し出すかは自分で決められないし、その儀式をしたからと言って、必ずしも奇跡が起きるとは言えない。むしろ、あの儀式を成功させた実例は今までで2件しか残ってないな」
と、ジェリエルさんは言葉を締めくくる。
今までと言うと、つまり、神殿ができたであろうはるか昔から、今までと言う話なのかと、私は両手で自分の頭を抱えてしまう。
そもそも『奇跡の水』と関係があるのかもわからない上に、別の奇跡の話なのだとしても、そんなモノを実践して奇跡を起こすなんて、事実上無理じゃないかと。
「古い文献が残っているのだが、成功例の2件には『奇跡は成った』と記載されているだけで、結果、何が起きて、どんな奇跡が与えられたのかまるで分らない」
ジェリエルさんは思い出したようにそう言葉を付け足した後で、ふとモニカさんが顔を上げ。
「でも確か、神の呪いを解いた話って残ってたよね? しかも2つ」
そう言うと、みんなが同時に口を閉じる。
私も思わず考え込んでしまって。もしかすればと言う考えに至っている。
多分、ここに居る誰もが、同じ考えに至っているのではないかと思った。
神殿に残る『奇跡』の成功例が2つ。そして、それとは別に残っている『神の呪いを解いた』と言う話も2つだ。これは、偶然と呼ぶにはちょっと見過ごせない。ように思う。
「どう思うよ。ワシは無関係には思えんのだが」
アーケイさんがそう言ってわずかな沈黙を破ると、この場のそれぞれが思い思いに頷き、みんなが同じ答えに至っていることを確認していた。
例えば、グライブに『奇跡の水』の話をしてくれたエルフさんに直接、話を聞けたなら、確認のしようもあるのかもしれないけど、そのエルフさんがどこの誰なのかもわからないから聞きようもない。
それに、それらしい手掛かりも何もない今、可能性があるなら試してみる価値はあるようにも思う。もしも違うなら、また1から探さなければならないだろうけど、それなら、グライブが話を聞いたというエルさんも探しながら、他の方法を探と言うだけの話だ。
私自身も、自分の記憶や、家に帰る方法を探すつもりでいるのだし。
「その儀式について、教えてください」
私がそう言ってジェリエルさんを見つめると、彼はじっと私を見つめ返し。
「試すつもりなのだろう? 止めはしない。だが、辛いぞ?」
そう言って、心配そうに顔を歪める。
「そうよっ。どんな儀式かは分からないけど、神殿の儀式なんて、どれをとっても人間の体じゃ負担になるようなものばっかりよっ。私たちも試してみるから、リオはそんな無理をしなくても大丈夫よっ」
ジェリエルさんの横に居たモニカさんも、慌てた様子で私にそう言ってくれて、他のひとたちも体を壊すからと、止めてくれるが。
「私がやりたいんです。もし私がダメだったら、皆さんにも試してもらえたら、嬉しいかなって思います」
私がそう言って笑えば、なぜか私の隣に座っていたサンタナさんが、私の頭をなでながら。
「リオの気持ち、分かっちゃうのよねぇ」
そう言って、苦笑いを見せる。
そんなサンタナさんの言葉に、他の人たちも、どこか諦めたような、呆れるような顔で笑っていた。
サンタナさんの言う通り、きっと私がそうしたいという気持ちをなんとなく察してくれているのかもしれない。なんて思う。だからだれも『出会ったばかりの彼に、どうしてそこまでするのか?』と聞いてはこないのだろう。
理由ならいくらでもある。
彼を置いて自分だけ逃げた後ろめたさ。助けられたことへの感謝。彼の残り少ない時間を奪ってしまった罪悪感。彼の与えてくれた温もりや、優しさへの執着。縋り付きたいという甘えや、依存。
そのすべてが正しくて、そのどれでもない『特別な感情』で、今はまだ、その感情に名前は付けてあげられないけど、出来る限りのことをしたというのは本当の気持ちで。
自分が前に進むためには、絶対に避けて通ってはいけないことなのだ。
もしも、自分可愛さに彼を諦めてしまったら、彼の友人たち全員が許してくれたとしても、私が自分を許せない。
たとえグライブが許してくれても。
裏切ったわけじゃないと、見捨てたわけではないと、彼が笑ってくれたとしても。
私は、嫌なのだ。
彼に死んでほしくないと願ってしまったのだから。