不良の内心
ババァが死んだ。
その一言が俺の耳に入った。
人は生きてれば死ぬ生き物だ。
死にたくなかったら産まれてこなければいい
産まれたら確実に死ぬんだ。
ただ、その顔は綺麗で生きてた時よりも清々しい顔をしていた。
俺は2歳でそれを受け止めることがむずかしかった。
それは俺が死なないでいい事と施設に送られなくていい事を示していたのを知ったのは中学に入る時だった。
「お前のばぁちゃんなぁ『エス』だったんだよ」
父から言われた言葉は無情に俺の心を震わせた。
「エス……?」
『エス』と言う言葉に聞き覚えが無く父に聞き返した。
「つまりは『キメラ』の母親だ。あいつは……自分の母に対してあいつは酷いな俺の母さんはお前が健康に育つため『エス』になって政府からお金をもらってたんだよ」
俺のせいでばぁちゃんが死んだ。
俺のせいで……
小学校の時は喧嘩が強いが弱い者を守り強い者とは戦い
人間や『キメラ』を守ってきた。
弱かろうが人間だって『キメラ』だって生きている。
命ある者、死あるのみと思うが生きてる命がいらないわけではなかった。
ただ、ばぁちゃんが『エス』で『キメラ』を産んで死んだ。
そこから暴れた。家族にも迷惑をかけた。
中学の時に不良と言われるようになった。
誰も話しかけなくなった。誰も虐めなくなった。
虐めてるやつを見たら殴りかかってた。
『優しい』とか『キメラ』とか関係なく俺は何をしたかったのか分からなくなった。
ババァが死んだ。ババァが『エス』だった。
頭の中でそればかりぐるぐると回ってた。
『優しい』とは『生きる』とは『お金』とは
分からないまま中学3年になった。そんな時に転校生が来た。
それは『キメラ』だった。羊の『キメラ』だ。
俺の学校には『キメラ』がいなかった。
だから、最初は人気者だったがそれはいずれ日常になりその羊の『キメラ』は別のクラスで虐めになった。
それを止めるものは誰もいなかった。俺を含めて
無視をした。
でも、俺には関係ない。『キメラ』は虐められるものであり気にしてはいけない
高校生になった。
一歩、また、一歩、歩きながら「俺には関係ない。『エス』とか『キメラ』とか『虐め』とか関係ないんだ」と言いながら歩いた。
強かった俺は強かった『安藤智彦』という男は歳を重ねるにつれ弱くなっていった。怯えるようになった。
入学式の日、俺の目の前を歩くオドオドとした豚の『キメラ』の『木村悠』を見るまでは