豚という男 終
そんなことを、思い出していた。
目の前の女は、目の前のキメラは、
『泣いていた』
なぜ、泣くのか分からなかった。
『人間』が、『動物』が、『人間様』が、『キメラ』が、
泣く理由は知っている。
悲しいから、嬉しいから、感情を押し殺した『代償』
泣く理由は感情的なことが多い……
だから、こそ……南 春香さんの泣いてる理由がわからなかった。
お互い愛し合っていた。
だから、付き合うのはいいとは思う。
だけど……
「ごめん、付き合うことはできない」
相手がキメラだからだ。
お互いに好きだ。たぶん、愛し合っている。
だけど、だから、キメラ同士が付き合うなんて……
『人間様』が黙ってない
彼女の気持ちをわかってないと言えばそうなんだろう
自分の気持ちに蓋をしたと言えばそうなんだろう
だけど、だけど……
この世界が、この国が、キメラなど作らなかったら……
『人間様』のように、『人間』のように……
にんげんのように……
正しく美しく、愛を育んでいけると思う。
「なんで、君はキメラで、俺はキメラなんだろうね……」
言葉は虚空に消えた。
南 春香さんは俺の唇にキスをした。
照れくさそうに……
「『人間』が1番偉いって勝手な都合で決めてさ、キメラの中でも2番目に使役動物のキメラが上でさ、1番下が家畜動物のキメラが偉いんだってさ……」
唇を離した。南 春香さんは笑顔で、そして泣いていた。
「使役動物のキメラが最初で最後のお願い……キス、させて……あと、『人間』がいない時だけでいいから、一緒にいて欲しい」
『キメラ』の『命』の温かさを感じながら笑った。
「はは、それじゃ2つだよ」
キメラができた。キメラが世間に出された。
ただ、人間は強欲で人間が1番偉い生き物であり猫や犬などの使役動物を2番目に偉いと言い3番目に牛や豚や鶏などの家畜動物などを偉いと言った。
人間が1番偉いなどキメラとしては当たり前のことだ。
人間以外のキメラなど、それ以下で、初めて使役動物のキメラに命令やお願いをされた。
だけど、俺は、いや、僕はそれほど嫌じゃなかった。
付き合うとは違う関係、友達とも違う関係、二匹の生き物の、二匹の動物の、二匹のキメラの、
ただただ、いるだけ……二匹でいるだけ……
僕らの関係はそんな適当なものでいいと思った。




