可愛いの意味5
空からは雨が降る。雪も降る。
『命』は振らない。『石』も降らない。
知ってる。だからこそ、驚いた。
『命』が『石』が降って来たことが……
『私』を襲ってきた『男』の顔で見えなかったんだと思う。
『男』の温かさと『重さ』だけを感じた。
『重い』『男』の『顔』で見えはしなかった。
だから、雨のように降ってきた。
そう、勘違いしたんだ。
あの子は、あの『人間様』は、いや、人間は
人間を殴った。『石』で……
あの『人間』は『人間様』を殴ったんだ。
助けてくれたんだ。
あの、人間は『敵』じゃない……
味方だ。
『逃げて』
走って逃げる。
でも、どこに?
昨日の考えとは違う。
ちゃん、逃げる先がある。
『私』は『可愛い』 『私』は
家に帰った。
お風呂に入った。
あの気持ち悪い『人間様』に触られた。『身体』を入念に洗った。
そして、触れられた頭を切り落とすように『髪』をバッサリと切った。
『可愛い』『可愛い』『私』は『可愛い』の一部を『切り落とした』
水に溶けていく髪は排水溝に絡まる。
『私』が『人間様』になりたいと思うようになったのはこの『可愛い』を否定するような『醜い』『虐め』ではない
『キメラ』ではなく『人間様』となるようになったのは……
『人を殺したから』
お風呂で流れたのは『髪』だけで『記憶』は流れていかなかった。
あの子……
「小学校の時にいた子だ……」
人と獣の混じった匂いは消えた。
身体から落ちる雫を拭き取って服を着た。
これから、あの人に会いに行く……
『木村悠』に……会いに行く……
何しに行くのかは分からない。
だけど、『怖かった』私は『キメラ』の私は『逃げ場所』を『求めた』私は
『キメラ』として『人間』のフリを辞めた者として
『生き物』として『生物』として
『助けて』って『木村悠』に、『悠くん』に、会いに行くんだ。
ごめんね?
顔の知らないママ
ごめんね?
キメラにするために血を分けてくれた猫
それでもね?
それでも、私は生きてるよ。
たとえ、世界が私達『キメラ』を憎もうと
たとえ、世界が私達にこんな試練を与えようと
私は好きな人に……
「好きって伝えに行く」




