愛すべき偶像よ。4
生きるということは、『お金』を稼がないといけない
そして、『趣味』には『推し』には『お金』がかかる。
餓死が嫌で働いてる訳では無い。
食べ物が、飲み物が、欲しいから働いてる訳では無い。
働いて2ヶ月がたった。
今は寝るだけの場所だ。
電気がない。水がない。
きっと、『寝るだけ』もなくなる。
ただ、辛くは無い。
廃棄の食品を隠れながら食べ、推しに会うために風呂に入り、携帯のために働いて、好きな人のために働いて、
最低限の生活を……
普通の一般的な人からすると最低限すらない生活を……
推しな『ひと』のために俺は『生きる』
風呂に入って、布団で寝て、推しの、『城井兎斗』の、手を握るために、
『生きる』
「ありがとう!!!今日は私のライブに来てくれてありがとう!!!」
俺の手を握る手は暖かった。
握手会に参加する有象無象の1人の俺だが……
俺の手を握ってくれた。
俺はこれで『今日』も『生きれる』
ただ、『生きれる』は心の持ちようであり肉体は疲労していた。
学校には行かなくなったと言えど年齢は学生であり体力はあるはずだ。
ただ、『好きな人』に会えるだけじゃ限界も来ていたのかもしれない
電気も水道も止められいつ出てけと言われるか分からないストレス、期限間近な弁当を食べる毎日、見ただけで異状だと思われるような体型
この生活に慣れてきた時には痩せていた。
いや、正確に言えばやつれていたが正しいのかもしれない
「大木守……大木って……しかも、その見た目……」
コンビニのバイト、店員と客、逆に会わないと思うのが不思議だった。
学校に通える範囲内の家、家の近くでバイトする俺、
「もしかして、『ブタ』か」
恐れていたことが起きた。
いや、嘘だ。恐れてなどいない。
考えもしなかったのだ。
目の前にいるのは学校にいた時の虐めてたヤツ
「……違います。『ブタ』ってなんですか?俺、『キメラ』じゃないっすよ」
声は震えていた。
確実に恐怖を感じていた。
帰るところはない、戻るところはない、
合ったとして大家か役所か警察か……
それでも、電気も水道も通ってない家に戻れるか?
職場に、コンビニに、戻れるのか?
「まぁいいや……お前、働いてるってことは金あんだろ?」
頭の中がぐちゃぐちゃになりながらそれをさえぎるように聞こえた。




