愛すべき偶像よ。3
『おい、ブタ……パンは?』『あ、俺、牛乳な』『早くしろよ』『使えねぇな』『死ねよ』
『この、ブタが』
「俺はブタじゃない!!!」
悪夢を見ていた。虐められていた悪夢をだ。
寝汗でびっちょりと濡れていた。
「気持ち悪い……着替えよう」
俺は悪夢を忘れるように着替えた。
休むようになって1週間がたった。
俺のいないクラス……
どれほど、困っているのだろう
パシリが消えた1週間はさぞ大変なのだろう
いや、俺がいないぐらいで変わらないか
「お腹空いたなぁ」
ふと疑問に思った。いつからご飯を食べてないのだろうと
2日前から食べてない。
確か、2リットルのペットボトルが5本でこの2日を生きてきた。
親からの説教は4日前から聞こえない。
リビングの机には家から出てきます。もう、帰ってきません。と書いてあった。
まるで、離婚する夫婦だなと思いながら静かにキレた。
「俺のご飯はどうするんだよ」
また、自室に消えた。
ご飯は無い。水だけで生きていけるだろうか?
「餓死か…… 」
静かにベットに埋もれ声を出した。
餓死……それは痛みよりも苦しく辛く……もっとも、今の日本では無い死に方
そんなことを考えているとテレビに流れてきた曲が気になった。
俺を嘲笑ってきた女、虐めてきた男、それを無視してきた有象無象
そんなやつらでは無い。しっかり、俺を見て言ってきた。
「私はこの世に生まれてきてよかった」
嗚呼、俺はこの子に会うために生まれてきたんだ。
そう、思えた。
もちろん、俺を見て言うはずもない。TV側からすると『カメラ目線』とでも言うのか
ただ、俺はこの子に惚れた。
次の日には外に出た。
役、1週間ぶりの外だ。
嗚呼、なんて眩しい日なんだ。なんて眩しい太陽なんだ。
俺は虐められ太陽から背を向け下を向き自分のストレスのはけ口に『キメラ』を虐めていた。
財布の中の小銭をジャラジャラと鳴らし履歴書とボールペンを買い
適当な店で自分の履歴を書きコンビニに持ってきた。
店長さんがいたのが幸いだったが来る前に電話をしてくれと注意されながら履歴書を受け取ってくれた。
俺はあの子に会うために好きな女の子に会うためにここのコンビニで働いてる。
そんな彼女の名前は『城井兎斗』
アイドルをやっている『キメラ』だ。
俺はそんな『キメラ』の『アイドル』と知らず愛し続けている。




