可愛いの意味3
体育館裏
私は『人間様』に『キメラ』ということが……
『バレた』
あの後、すぐに帰った。
いつもの帽子を被ってすぐに帰った。
猫の耳が見えないように、獣の耳が見えないように、『キメラ』だということがバレないように
泣いてたあの子は大丈夫だろうか?目は腫れてないだろうか?
『キメラ』がそんなことを考えても仕方ない。
それよりも私のことだ。『キメラ』だとバレてしまった。
逃げなきゃ……
でも、どこに?
私のことなのに、まるで実感が無かった。
これも自分を『人間』と思いたいからなのか分からない
逃げる場所が見つからないまま家に帰った。
恐怖と逃避だけが私の中で渦巻いていた。
そして、朝になった。
朝は無情にもやってくる。行きたくない……学校なんかに……行きたくない……
「久しぶりにこんなこと思ったなぁ」
ポツリと呟いた言葉を発して1つだけ気づいた。
私、泣いてる。涙が出てる。日の光を見て私、泣いてる。
学校に行った。『木村悠』はいなかった。
『キメラ』ということが『バレた』のに
何も無かった。不安と恐怖が立ち込めた。
……『あの人達』は何も言ってないのだろうか
怖かった。なにも、言えないぐらいに……怖かった。
周りからはいつもと同じように『ひとりぼっち』の『人間』が『ひとりぼっち』でいるだけだ。
周りからだと……周りからだといつもと変わらない
私と、クラスのすみにいる。私をいじめたヤツらだけが私が『キメラ』だと知っている。
この感じあいつらは何も言ってない。言いふらしてないのだろう
少しだけ、ほんの少しだけ……『安心』した。
少しでも怯えなくていいんだと……
あの……
どこからか聞こえた。恐怖心から来る幻聴だと思いたかった。
「あの……すみません。南さん」
それは幻聴ではなく『南』と名前を呼んだ。男子の声だった。
胸は苦しくなり呼吸は荒くなり生きてる心地はしなかった。
やっぱりだ。やっぱり、『あいつら』言ってたんだ。
名前の知らない『人間様』の女の子は『私のこと』を言ったんだ。
「な、なんでしょ……」
声が聞こえるか聞こえないか分からないぐらいの微かな声で言った。
これが私にとって出せる精一杯の声だった。
「南さん……僕と、付き合ってください」
この数日で忘れていた。
私に向けられる『性的』な目は『敵意』に代わり男子達の喧嘩の原因になってたのだろう
そして、その『敵意』の終止符として『私』に告白をしたのだ。
……と、私は思うことにした。




