フレンドリーフレンドリー3
『うるさい』
みんなが静かになった。
湿った空気、飛び降りなんてなかったかのように笑うみんな、後ろにはロッカーにランドセル、前には消すはずの黒板は消えずに前の授業の国語の内容がビッシリ書いてあった。
俺の……俺の言葉で……空気が固まった。
固まっただけで止まってはいない。
証拠だというように蝉の鳴き声だけがしていた。
「……優斗?」
友達が2人こちらを見て言った。
虐めてはいた。俺も、お前も、何も言わなかったお前らも、
この教室、全員で『キメラ』を虐めてたんだ。
俺の「うし」という言葉は空虚に消えたのは昨日だ。
次の日に俺は呼び出しを食らった。
「高橋くん……来てもらえるかな?」
いつもは使われていない無人の教室で先生と2人きり
口を切ったのは当然、先生だった。
「昨日のことなんだけど……君なのかい?『キメラ』を落としたのは」
名前では無い。『キメラ』の品種でもない。『キメラ』……この先生はキメラと言った。
名前なんて呼を主張するだけのものだ。だけど、この先生は『キメラ』と言った。
俺ですら、名前を知らないせいで「うし」としか言えなかったのに……
「いいえ、俺じゃないです。彼は自殺をしたんです」
自殺ではない。殺人だ。だが、自分の非を認めたくなかった。
「わかった」
先生は一言言った。
教室に戻るとザワザワとした空気感が無くなった。
どうしたんだよ……なんで、俺をあの『キメラ』のように見るんだ。俺は……人間だ。
先生から一人呼ばれ、また、一人呼ばれた。
俺を含めた3人が呼ばれた。
他の2人が静かな口を開いた。
「優斗が言ってたから俺らも言ったんだ」
「そうだ、優斗が言ってたから」
優斗が言ったから?俺が何を言った?
『キメラ』だとか?『消えろ』だとか?『死ね』だとか?
じゃ人が言ったら他の人が言ってもいいのかよ。
いや、俺が言えたことじゃないか……
だって……
だって、俺だって言ってたからな……
むしろ、『うし』と手を伸ばしたから飛び降り自殺するまで追い込んだのが俺の間違いだ。
「そうか……わかった。3人は思うことはいっぱいあるだろう。だけどな、『人間』だろうが『キメラ』だろうが同じ『命』なんだよ」
先生が俺ら3人に向かって言った。
命を救うことが出来なかった。命を奪う形になった。
3人に向かって言った言葉だが俺は辛い思いをした。
ただ、あいつの方が……あの『うし』の方がすごい辛い思いをしたんだ。
「『うし』……俺が悪かったんだ。何を言っても無駄だとは思う」
頼む、許してくれ……俺を……許してくれよ。




