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アイドルという名の悪夢 終


アイドルをやめた。キメラもやめた。うさぎもやめた。


普通の『女の子』になった。


「ゆき〜ご飯よ〜!!!」


だって、これらは夢だから……

キメラなんて嘘でキメラなんていなくて人間は滅ぶことはなく衰退することもなく


全部、全部、嘘で悪夢だったんだから……

悪夢からは醒めないといけないでしょ?


「ゆき〜大丈夫?起きれる?」


私はちゃんとドアを開けた。チェーンがかかっていないドアを開けた。

あの悪夢のことは忘れよう。もう、悪夢は見ないんだから


「おはようママ」


昨日までの悪夢は夢なのだから優しいママが優しい挨拶をして優しいママが作った。優しいご飯を


食べた。



キツネ色のトーストと塩コショウのかかったスクランブルエッグとオレンジジュースが机に置いてあった。


「食べよ」

ママが言った。優しい優しいママが言った。




ー可愛い可愛いゆき、あなた以外の可愛い子なんてみんないなくなればいいのにー


ーあなたも可愛くない……なんで、可愛くならないの?ー


ーあんたは今日から中学生だ。だから、これからもっと、縛り付けるからこれからもずっと勉強だからね?ー


違う!!!これは、悪夢……ママは違う。

ママは……私を殴ったりなんか、しない……




「うん、食べよ」

私は声を出した。震えていたのかもしれない


食べた。

スクランブルエッグの味が薄い……オレンジジュースは水みたいに味がしない。トーストは発泡スチロールを食べてるみたいだ。


あれは悪夢……悪夢だけど美味しいとは言えなかった。

「ママ、美味しいよ」


食べたあとのお皿を片付けるママは私を追い出すように言った。

「ゆき、お金を渡すから洋服を買ってきな」


1人で買い物なんて久しぶりだ。


外に出かけた。夢で見た『城井兎斗』と言う名前は当たり前だが出てこなかった。


私は普通の人で、私は普通の人間で、1人で外に出かけるなんてほとんどなかった。


あれ?久しぶりの買い物?久しぶりの外へのお出かけ?


私の久しぶり……そもそも、いつ買い物に行った?いつ1人で出かけた。

そうだ。夢を見てた。長い長い夢を……


夢と現実がごちゃごちゃしているのかもしれない……


マネキンが着飾ってる『ドレス』靴擦れしそうな『ハイヒール』

普通、普通、私は普通の人間……だから、こんな綺麗な服私が着るような『モノ』じゃ……


服や靴に気を取られて私は映る自分の顔を気にしていなかった。


「なにこれ……」

ガラスに映った自分の顔は『ヒト』の顔をしていなかった。


そして、キメラの顔もしていなかった。


赤黒く腫れた『ソレ』は頭に赤黒いものを乗せていた。


嗚呼……

やっぱり、私は、キメラだったんだ。


触ると痛覚もなかった。



聞こえない声は……いや、聞きたくなかった声は口々にこういう。

「あの子、顔すごい」とか「アイドルの城井兎斗じゃね」とか「見てて痛々しいからこんなところに来るな」だとか


私はママから……いいや、母からもらったお金を握りしめ何も買わずに帰った。


その足で私は家に入り料理もしたことないのに台所に立ち包丁を持って……







『母』を

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