愛すべき偶像よ。
「おい、ブタ!!!このデブ!!!死ねよ。ゴミ」
俺はそう言われ続けた。
別にキメラじゃないのにブタじゃないのに
ただ、太ってるだけで俺は虐められた。
ゴミなキメラよりも俺は虐められた。
「なぁブタ……ブタは何食べるんだっけ?」
頭から白い液体がかけられた。
「ブタって牛乳飲めるよな?」
白く濡れた制服と惨めな俺をクラス中が笑う。
酷い……虐めだ。逃げたい。休みたい。こんな学校なんか辞めたい
ただ、こんな俺でも救いはあった。
虐められるんだったら虐めればいい
この世にはカーストと言うものがある。
カーストの最底辺は俺じゃない
酒井守じゃない……
「パパー!!!ママー!!!なんで、僕を産んだの」
優しいパパとママに聞いた。
「あなたが大事だからよ」
そんなの嘘だ。
「どうして、守って名前なの」
僕は大好きな親に聞いた。
「みんなを守ってやれるように、自分を守れるように」
パパが言ってくれた。
大事に育てられてた。この世には奇跡というものがある。
その奇跡は歯車のように噛み合っていて上手く噛み合わなかったらすぐに壊れてしまう。
父親が倒れた。
母親が看病と言う形で入院先に行った。
父親は若い看護婦と話していた。手を握っていた。
母は荒れた。俺のことを大事だという母は帰ってくると俺に手をあげる。
だから、俺は大事じゃないと思うようになった。
いつだって、誰だって、『自分』が大事なんだ。
だから、俺だって『自分』を大事にした。
カーストはピラミッドのような形をしている。
俺は下から数えて2番目だ。
『人間』だったから『独り』だったから
1番上にいるものはいつも、周りと笑っている。
2番目はそれを遠巻きで笑ってるやつら
3番目が1番上の存在から避けるように生きてるヤツら
4番目が俺みたいな避けられなかったやつら
1番下の最下層のクズでゴミで生きてる価値のないようなヤツらが『キメラ』だ。
『キメラ』にも順位があるとか聞いたが関係ないし興味がなかった。
俺の唯一の救いは……
その『キメラ』を虐めることだった。
荒れた家と荒れた学校
逃げるように引きこもるように助けを求めるように家に帰る。
虐められたことをなかったかのように
「あ、あいつ……」
馬だ。馬の『キメラ』だ。
嗚呼、そういえば思い出した。
『キメラ』のカースト
『キメラ』でも第1種と第2種がいるんだっけ
『愛玩』と『家畜』と
馬は『愛玩』であり馬肉として食されるんだから『家畜』でもあるだろう
虐めてもいっか
俺はあれから『キメラ』を虐めた。




