アイドルという名の悪夢4
ねぇ?知ってる?アイドルって顔が命なんだよ?
その言葉は他のアイドルに聞いた。
それから私は可愛くなろうとした。
歌だけではなく踊りだけではなく見た目に気を使った。
ファンやスタッフだけですらなく母……いや、マネージャーから見られて変じゃないように可愛くなるように
可愛く見えるように
「兎斗ちゃんってさぁ……あ、雪ちゃんの方がいい?」
そう、話しかけてきたのは友達でありライバルのアイドルだった。
「あ、私、未来!!!みらいって書いてみくね?あ、本名だよ?芸名は……知ってるか」
彼女の芸名は知らなかった。薄情なヤツだと思った?
でも、私のことなんてみんな知らないから
「兎斗ちゃんさぁ可愛いよねー」
彼女は笑顔で言った。
その笑顔が私にとってどんなに羨ましいことだったか
彼女が人間として生きていることがトップだろうとキメラの私と普通のアイドルの差
その差は埋まらないのだ。
キメラのアイドルの私と普通のアイドルの目の前の女の子の差は埋まらい
「可愛いっていいことだよねー!!!アイドルとしても人間としても」
ブスだろうが可愛かろうが頑張って努力をすれば人気者になれる。
私はアイドルとしても一人の女の子としてもキメラとしても完璧にやり遂げた。
自分を殺しながらみんなに可愛がられながら……
でも、私は思う。
『どうせ、あなたも私のことが嫌いなのでしょ?』
みんなの目線は可愛いアイドルの城井兎斗と1番可愛い落ちぶれて欲しい敵としての周りのアイドルの目線だった。
「だって、アイドルって顔だもんね?」
私の目をキラキラとした目で言った。
それはアイドルの目では無くただ、一般のファンのように
「ねぇ?知ってる?アイドルって顔が命なんだよ?」
その言葉で私は驚いた。アイドルは歌って踊れる人間のことだと思ってた。笑ってたらそれでいい、笑顔でいればそれでいい。
そこで私は『キメラ』の『アイドル』は『可愛い』『キメラ』の『アイドル』になった。
「未来さんも可愛いよ?」
驚きを隠すため乾いた笑顔で思ってもいないことを言った。
「そう?ありがとう?」
彼女は謙遜せず悲しい目で言った。
あとで、知ったことだった。
彼女はアイドルではなく私、『城井兎斗』に憧れたスタッフで私と話したい可愛い可愛いファンの人間だった。




