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完璧に

カチッ…

時計の針がちょうど21時を指す。ここらの時間のテレビは視聴率が高いのだろう。最近よく見る女優が楽しそうに笑っている。

(昔は、この人がなんて名前で、どんなドラマに出てるのかが分かって。楽しく見れたのに)

テレビの中の歓声が一際大きくなる。私はイライラしてテレビのリモコンをとり、電源を切った。


いつからだろう。

ドラマひとつ見るのにおびえるようになってしまったのは。


いつからだろう。

誰かが楽しそうにしているのがどうしても許せなくなったのは。


ピコン

携帯の通知音。ビクリと肩を震わせ怯える。恐る恐る電源を入れるとメッセージが表示されていた。

【あと10分で帰るからな。】

最悪だ。今日は帰って来れないと朝言っていたのに。どうしてこの人はこう急に連絡をするのだろう。あたふたする娘が好きなのだろうか。


(お風呂入れた、ご飯できてる、大丈夫。大丈夫なはず…)


ピコン

もう一度なる通知。開くと今度はゆうきからだった。

【明日までの理科のプリント写真送ってくんね?頼む〜】

おちゃらけた文のあとにカエルのスタンプ。

「宿題!!!」

ゆうきのメッセージに既読をつけてしまったから、返事をしないと不審がられることはわかっているけど今はそれどころではない。

(宿題…やばいどうしよう…完全に忘れてた…やばい…)

慌てて顔を上げると21時3分を指す時計。間に合わない。そう確信した。

あの人はいつも、もう?!というような顔をする私が好きで、本当より少し遅めに到着時間を告げるのだ。


"いいか。完璧に出来なかったらお仕置だからな"


夏からずっと、私のことを縛るフレーズが脳内再生される。


「ははっ…」

もう、どうでもいいや。

21時5分。玄関からガチャリと音が鳴った。



また、夜が始まる。

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