ヅカ先輩の卒業
少し遅くなったけど、ヅカ先輩はまだ教室に居るかな?
"ガラガラガラ"
居た。ヅカ先輩は教室に居た。
「おっ、タカシ君。遅かったじゃないか。」
女のヅカ先輩はブロンドのショートヘアーをかき上げながら、何故か男物の学ランを着ていた。
しかもその学ランにはボタンが1つも付いていなかった。謎だ。
「あはは、見たまえタカシ君、卒業式ということで私のファンが何か欲しがると思い、学ランを用意したら全部取られてしまったよ。」
相変わらず芝居掛かった物言いだ。これを聞いてるとタマに疲れるんだよなぁ。
彼女の名前は塚本 深雪、演劇部で部長を勤め上げながら、男役で学校の女子のほとんどを魅了し続けて、我が校の男女カップル率を著しく下げた迷惑な存在。
「コレで私は彼女達の中で色褪せずに輝き続けることだろう。」
キザだなぁ、はぁ、早く本題に移りたいんだけど。
「君も私のボタンを貰いに来たんだろうが、ご覧の通り諦めてくれ。まぁ、君とは家が近所だから、いつでも遊びに来てくれたまえ。」
チッ、明らかに上から目線。だが今日は誤魔化されてたまるか。
僕はツカツカと勇気を持ってヅカ先輩に詰め寄った。
「ん?どうした?」
ツカツカ。
「おい?」
ツカツカ。
「ちょ、ちょっと!?」
たじろぎながら後退し、壁に背中をぶつけるヅカ先輩。ここですかさず僕は右手で壁ドーン。
「きゃ!!・・・オホン、どうしたんだタカシ君。」
おっ、今一瞬女になったな。畳み掛ける。
「先輩、二駅先の町のファンシーショップに通ってますね。」
「えっ?・・・ひ、人違いだろう、あ、あはは。」
「へぇ、じゃあペットショップでニャンニャン語で猫コーナーを徘徊してたのも先輩ではないと?」
「き、君は私のストーカーかね!?」
慌てるヅカ先輩は可愛いな。よし、更に責めたる。
「確かに僕はストーカーかもしれません。」
「み、認めるの!?」
「けれど先輩はどうなんです?」
「ギクッ、な、なんの話?」
「ある日の移動教室の時です、僕が忘れ物をして教室に帰ると、何故だか、とあるブロンドの先輩が僕の体育服をクンカクンカ。」
「きゃああああ!!」
「クンカクンカ!!」
「ギャアアアア!!」
完全にメッキが剥がれて膝から崩れ落ちるヅカ先輩。
よし、こっからが本番だ。
「先輩、夏に僕が誤って着替えを覗いてしまい。その時の『きゃ!!』と隠れ巨乳を手で隠した辺りから好きでした。付き合ってください!!」
顔を赤くする先輩。だがここで先輩の最後の抵抗。
「ふん、君のような庶民が私と付き合おうなんて・・・」
「あっ、そうですか。じゃあこれで。」
「ちょ、ちょっと!!待ってよ!!」
ふっ、これが古代から伝わる【押しても駄目なら引いてみろ作戦】。やはり今日の僕はキテる。
「僕と付き合うんですか?付き合わないですか?」
「えっ、いきなり返事とか・・・。」
「早く!!」
「付き合います!!正直、君が入部してきた時から目をつけてました!!今日から貴方の昼御飯は私が作らせて頂きます!!」
「よしっ!!」
こうして念入りに計画した僕の告白は成功した。




