【岩手】【二〇一六年 五月一七~一八日】 ・アイラブ普代村、アイラブ銀次(後)
【二〇一六年 五月一七日】
自転車の修理が終わり晴れたんですが、観光の時間はなさそう。
時間的に厳しいので、今日の寝床であるキャンプ場を目指します。
銀次に所縁のある食堂なんかにも行ってみたかったんですが、仕方ない。
普代村観光はできなかったけど、良い人にたくさん会えたからオッケーです。
……と、思いきや。
キレイな海と空。
雨が止んだばっかりで空と風が潤んでいるというか、心に染みます。
磯の香りがするのに全く嫌じゃないというか、月並みですが懐かしさもある。
名の売れたスポットではありませんが、これが観光でなくてなんなのか。
村民の皆さんが元気で忘れそうになりますが、この辺りも東日本大震災の被災地。
沿岸部にも重機が入っていて、色々と修理をしているようでした。
海はこんなに綺麗なのに恐い。だから凄い。
一応自分も宮城県民で被災者だったりするわけですが、場所や人が違えば、災害の捉え方も違う。
多分、ひとりひとりの中に東日本大震災はあるんだな、とか真面目な実感を持ったり。
そんな実感を持ちつつ、仮設店舗に立ち寄って飯にします。
時間が遅いためか、他にお客さんは居ませんが、壁には、なんと。
「(^へ^) すい、すいません、壁の写真を撮っても良いですか!?」
「(´∀`) 大丈夫ですよー」
なんと、壁には多くの輝かしい銀次ポスターの中、まさか!
銀次ポスターだけでなく、普代村と俺のスーパースター、銀次のサインまで!
そのときの写真はあえて掲載しませんので、皆さんも普代村へ行き、是非是非銀次のサインを探してみて下さいませ。
地物の海鮮ラーメンとめかぶ丼。
この日は昼食を食べておらず、二人前をしっかりと食べてしまうが、とにかく美味い! 大自然に溢れる普代村!
海の恵みは潤沢で、空の青がじわりと滲むようで温もりがある。そしてキャンプ場のある山は険しくそびえ……て、え?
そう、84gにはまだ、自転車で山を登り、キャンプ場に到達するという仕事が有ります。
時間が時間で大分遅いのですが、頑張ります。
海沿いの断崖を登って行き、キャンプ場を目指します。
例によって自転車を押して行きますが、景色がキレイなので頑張れます。
肉体的には大分限界で、数百メートルごとに一息入れています。
なんとか到達したキャンプ場の管理棟には管理人さんが居ないものの、“後ほど集金に伺います”の張り紙。
まー、管理人さんひとりで管理するのに常駐していたら何も仕事できないし、オフシーズンではこんなもんかな、と思いつつテントを設営しようとすると、すぐに軽トラがやってきました。管理人さんのおっさんの登場である。
最初はちょっと高圧的でしたが、どうにも俺がテントの張ろうとした場所がフリーサイト(値段が安い)ではなく、オートサイト(値段が高い)だったらしく、そのことを注意して下さった。
疲れと確認不足で間違えた旨や車ではなくチャリであることを伝えて雑談をすると、良い人だった。
最初高圧的だったのは、他のお客さんに間違えたことを伝えて逆ギレされたことでもあるのかなー、とか思いつつ周辺の情報を聞く。
どうやら近所にお風呂さんが有るらしい。しかも温泉!
そして、キャンプ場では普通にコンセントを借りられたので、風呂に入っている間、バッテリー類はコンセントに指しっぱなしで充電。
携帯電話とデジカメは手元から離せないので充電できませんが、エボルタが充電さえできれば大丈夫。
多機能ラジオやヘッドライト、ソーラーランタンも延長コードを利用して充電。
ふっふっふ。賢い84gくんは、こんな状態を見越して延長コードを持参しているのですよ。
……ふっふっふ。完璧です。
そんなことを思っていました。まあ、はい、もちろん前フリですよ。
とある問題に気付きすらせず、84gはチャリを置いて、舗装されていない林の中の近道を歩いて通り、いざお風呂屋さんこと『くろさき荘』さんへ。
どうやら宿泊もできるらしいし、普通に車で普代村観光に来るならここに泊まっても良いのではないだろうか。
風呂場は撮影できないので残念ですが、断崖のパノラマを観ながら疲れを身体から押し出すようなぬくもり。気になる方は『国民宿舎くろさき荘』さんのホームページをチェックしてみて下さいませ。
自分は風呂に入りに来ただけですが、それでも立ち寄れるお土産コーナーの一角、銀次サインとポスターが飾って有り、例によって例の如く。
「(´;ω;`) アイ・ラブ・フダイムラ……普代村大好き……」
最高すぎる。
ここに来るのを悩んでいたのは一体なんだったのか。
最高の気分と余韻に浸り、暗くなった道を戻り……あれ?
「( ゜Д゜) まっくらやん……」
そう、田舎の山奥にある宿泊施設から、キャンプ場に向かう道に街灯が満足にあるわけがない。
ライト機能のある多機能ラジオやランタンは充電中で、手元にあるのはケータイとデジカメくらい。
「( ゜Д゜) ライト類、全部置いてきちゃった……」
最悪の形でフラグを回収してしまう。笑いの神、またもや降臨。
来るとき、未舗装の道を抜けてきており、知っている道はその道だけ。
林の切れ間のような道を月明かりの中で探すという、風呂で汗を流したばかりで冷や汗モノのイベント。
数百メートル先のテントまで戻れないと、まさか朝までこの辺り? シャレにならん。風邪引くしメンタルブレイクじゃ。
目を細め、手探り・足探りで虫たちが鳴く中、力を振り絞って道を探し、林の中を彷徨い、数分間の暗がりでの激闘を経て、辛くも開けた道を探しぬきキャンプ場へ帰還。
そんな最後まで中々にヘヴィなバトルを経てなんとか戻ったテントで寝袋に潜りこみ、普代村での長い一日は終わりました。
【二〇一六年 五月一八日】
本当に良い村でした。登りは辛かったキャンプ場、下りはラクラク、シャーっと。
この日の朝食の調理で、カセットガスのひとつが終了。
最初に使っていたのはガスジュニア。容量が少なく購入したコンロに付属していた物。
何回使ったかは覚えてませんが、多分家でのテストも含めて10回くらいですかね。
今ネットで調べてみたらジュニアサイズの容量は一二〇グラム。だから一回ごとに一二グラムくらい使うイメージで良いのかな?
ここからはバラ売りのカセットガスを使っていきます。三本組とかの方が安いんですが、深刻なレベルで嵩張るので。
山道も来るときは雨も有って時間が掛かりましたが、晴れていて無事に走り抜けます。
この日は一度来た久慈市を通過するだけということで、観光らしい観光もなく無事。
途中でゴルフ客さんかな? からノンシュガーの飴を頂いたりしながら、何事もなく進みます。
地図によると、ここをスルーしてしまうと大きな橋やネットカフェのありそうな町も暫くないので、今日はこの野営場を目指します。
昨日に続いて野営場近くの温泉でひとっぷろ。
ご当地サイダーを飲み、改めてさっきみた野営場を目指そうと地図を確認します。
さっき道路標識で確認した北侍浜キャンプ場というところを捜し……ん?
「(;´∀`) ……おやぁ?」
「( ゜Д゜) 今、五月なんですけどおおおおおおおお!?」
キャンプ場が使えないなら他の宿泊先を探さなければなりませんが、山の中、移動して安全に眠れる場所なんて見付かるのか……!?
昨夜の林の中、彷徨った恐怖がフラッシュバックする中、日は非情にも傾き始めているのだった……。
※上記地図の写真は、リアルタイムではなく、今回の小説を書くために撮影しています。
(地図は旅に使った実物)
っていうか、寝床未定の状態で写真を撮る余裕が僕にあるはずがない。