【長野】【二〇一七年 五月十九日】 絶景! 激闘? オヤシラズ!
【二〇一六年 五月十九日】
ガッツリとテントの中で爆睡し、早朝から景色が良い。
山の道路の横、ちょっとしたパーキングスペース横の休憩スペースで勝手に寝ていたが、神経図太くなりすぎである。
まだ山の上なので、自転車は坂道を下るだけで進める。
そして。
「(8▽4)アハハハハハハハハハハハ!!」
これから行こうとしていた親不知の通行止めを知り、思わず笑いだしてましたよ。
親不知、そこはこれまですれ違ったチャリダーたちから『あそこは凄かった』と言われていた、チャリダーの鬼門のひとつです。
迂回路が存在せず通らなければならないものの、崖沿いの道で車道しかなく、めちゃくちゃ危ないらしい。
複数のチャリダーたちだけでなく、リアカー日本一周をしようとした方は、ここで挫折したという話もありました。
もちろん、俺はチャリなので高速道路を使うわけじゃありません。
しかしながら、高速道路が通行止めということは、必然的に通常道の通行量が増えることが予想されます。
今日は中止して休むという選択肢もありますが、天気が良かったのです。
天気が良く、体力も万全。行く気力も万全。
「(8Д4) 行くぜオラァッ!」
とにかく空のキレイな日でした。
暑すぎず、汗もちょうどよくすがすがしい。
車が途切れたタイミングを狙って足を下ろし、写真撮影。
さすがに狭いので、車が走ってるときは無理っす。
そんなこんなで。
大して苦労せず、道の駅に到着。
あまり知らないけど、“げんぎょ”とかいう深海魚の天丼とか食べたり……。
「( 8Д4) ……あれ? なんか親不知、そんなに辛くないぞ?」
食べながら考えたことだが、これは俺の旅の特異性が干渉した結果だと思われる。
この旅では、一回、宮城→名古屋のときは時計回りになったが、冬に長野とかを移動するのを避けたり、野球の日程の都合で、今は逆時計に戻っている。
どうして多くのチャリダーさんが時計回りになるかといえば、日本は左側通行なのでこう回った方が海沿いを走れて景色が堪能できるからだ。
……そう、海沿いを走るのだ。通常は。
そのため、親知らずでは通常、危険で狭い海沿いを走らされるらしい。
しかし、俺は山側なので比較的安全な、路側帯のある側を走っていた。
これはこれで危ないといえば危ないのだが、そもそもトンネルを通行するときはいつもこんな感じだし、楽ではないが辛いという話じゃない。
いったい何人の方に参考にされるライフハックかはわからない。
しかしながら、逆時計回りだと親不知は難所にならなかった。
あとオマケのライフハック。
途中、お姉さんに声を掛けられたりして気付いた。
相手に“あなたA型でしょ”と聞くのは話術だったらしい。
日本人なら当たる確率高いし、外れても“マジメそうだから”で会話膨らませられるから裏目にならない。
俺自身がA型だから、“なぜか当たるトリック”的なヤツだと深く考えてなかった。
逆ナンというヤツだったような気もするが、そこまでヒマではないないのだ俺は。
人をナンパしてるヒマがあるなら景色を見た方が有益だと思うのだが。
本当に空と海が同じ青でキレイすぎる。
なんかすげぇ絶壁あった。
だ、そうです。
事故か何かが有ったと思われる位置。
ここ、車が入れないはずなのにどうやったかとは思うけど、これは目を奪われても仕方ない。
能力バトルマンガとかでコンクリートとかぶっ壊すときってこんな感じだけど、誰か世界の命運でも掛けて戦ったのかな?
ご機嫌のまま、階段を発見。
成人済みだけど、疲れと天気と景色の良さのせいで、気分はもうジブリの主人公。
ずっと大冒険してるけど、不思議な冒険が待って良そうな高揚感。
相棒の自転車は鍵をかけて待っていてもらって探検です。転ぶと大変なのでヘルメットはそのままつけていく。
リュックサックの重さで一歩ずつ、一段ずつ、どしんどしんとトトロのように体を揺すりながら降りていきます。
景色がいい。
これ、かなり俺らしくて気に入ってる写真で、ツイッターのヘッダーでも使ってるヤツですね。
(二〇二二 三月二二日現在)
階段を下って写真を撮ると、そこにはトンネルが。
途中で定年退職の旅行かな? っていうご夫妻とすれ違ったりした。
中にはトンネルを作った工事の経緯や方法が記されていた。当たり前だけど、これだけのものを手作業で作ってたと言われ、感動した。
山の形を変え、道を変える。それを機械ではなく人力でやっていた。
もちろん機械も人間の力ではあるけど、やはり人力というのは意味が違って感じた。
そしてトンネルを抜けると、階段は一点に続いていた。
ちょっとスゴい。
歩かないと来られない位置で、特に何があるわけではないし、野宿するには整地されてないしトイレもないし、フナムシがザワザワ歩いていて長く滞在できる場所ではないし、波打ち際にゴミが多かったけど、それを差し引いてもめっちゃキレイだった。
……海をトイレ代わりにすれば、野宿できるか……?
まー……人間の排泄物なら、プラスチックなんかとは違って自然に帰るから問題ないとは思うけど、まあまあクレーム付くから諦めよう。
それに。
戻りがキツイ。
キレイだけど、リュックサック背負って登るにはまあまあしんどいのだ。
来た道、階段とトンネルを戻る。リュックサックを担いで登るというのは疲れはするが、思ったより身体は楽勝である。
山道をチャリを押しながら登り、かなり肉体が鍛えられている感じがある。
マイペースに進んでいきます。
富山県に入った。
……さて。ここで、リアルタイムに更新を追ってくれている読者さんは、前回更新からこの回まで半年くらい空いていて、お待たせしたと思います。
富山はとても良いところで、当時は楽しく旅をしていた。
ただ、ここで思い出というのは、後に意味が変わってしまうもので。
連載途中、作者=作中主人公=俺、のきょうだいがひとり、亡くなっています。
この旅をしている最中、どうしても死んだきょうだいを思い出さなければならず、書くのが、ちょっと、しんどかったんですね。
ただ、ずっと、書かないというのも、引っかかってしまいまして。
ちょっとばかり、お付き合いください。




