【群馬~山梨】【二〇一六年 九月十日~十一日】 山がありすぎ!突撃山梨県!
【二〇一六年 九月十日】
前橋で尋常じゃなく休んだので、そろそろルートを決めます。
次は長野県に行くべきか、山梨県を目指すべきか。
日本一周が海沿いに走るだけなら選択肢はないのですが、俺の場合は四七都道府県を回ることになっているので、海なし県である両県を巡る順番は選択肢をどうするか。
関東圏は小さい上、一筆書きにならないので、俺はどうするか。
ただ、俺はある理由から先に山梨に行くことにします。
ヒントとしては埼玉はライオンズの本拠地。ヒント二、俺は仙台出身。ヒント三、イーグルスは……まあ、つまるところ、その辺りの日程の関係ですな。というわけで。
妙義山、だそうです。なんかどっかで聞いたことのある地名ですね。
このときは気付いていなかったんだけど、この記事を書くために調べたら、【日本三大奇景】とかだそうです。ほう。色々な光景が見れそうですね。
ここを抜けて軽井沢、信州佐久市を目指します。
まずは絶景からスタート。
なるほどぉ。普通に車道なんだけど、昔から使われてる道なんだろうね。奇景ってわけでは……。
待てや。
え、何? 今、俺の前を何が通った?
なにアレ? は? 地図を見ても鉄道が走ってる風はないし、そもそも機関車としては小さすぎるし、なに、なんなの? え? 何?
奇景ってそういうのを求めてるんじゃないんだけどと思っていると、
すげぇええええええ! 岩がすげぇぇええええ! 確かにこれは奇景!
そんなこんなで、標高八〇〇メートル。
もちろんチャリに乗っている状態では山道を登れないので、全部押して登ってます。
軽井沢を抜け、辛うじて佐久のネットカフェに到着。
一日で車に鳴らされた回数の三回は新記録。
うん、まあ、路側帯走ってるだけだから法規違反でもなんでもないし、鳴らすくらいなら車の方が減速するシチュエーションなんだけどね。
足がビキビキと痛み、ネットカフェのマット席に座った瞬間、立てなくなった。
広島カープ優勝に揺れるタイムラインを眺めつつ、足ツボマッサージを試みて、回復を狙う。
【二〇一六年 九月十一日】
なんか空が不穏。
一晩空けてもまだ違和感がある大丈夫なのか、天気が悪いと思いつつ、残念なことに移動する気満々なので行きます。
ネットカフェで爆睡してしまって出発が遅れ、見る見るうちに暗くなっていきます。
不幸中の幸いで雨だけは降りませんでしたが、峠を越えた段階で真っ暗。
これ、トンネルだから暗いとかじゃないんです。十九時前で真っ暗。街灯もなし。
晩飯を食う場所もなく、かといって道路なので自炊も出来ません。飯食ってたら車に轢かれたとか笑えないでしょ?
辛うじてそば屋を発見。とりあえず腹いっぱいに補充します。ウマい!
残りは下り坂。エネルギー補給はしたし、ブレーキをガッチリ握り、神経をすり減らしながら、暗がりの路側帯を降りていく。
横を通る車も少なくなってきて、ちょっと気が楽になってきていた。
繰り返すけど、下り坂って楽なんですよ。ブレーキ調整だけで下れるからペダル漕がなくて良いし。
そんな中、路上にペットボトルが落ちていた。踏んだら危ないなと思い、何事もなく避けたけが……
「(8Д4)……え?」
通過している内に気が付く。
そこにはガードレールがなくて、俺は十センチ余分に避けていたら、道路から飛び出し、山路を吹っ飛んでいた。
車輪が崖のように切り立った道路のへりのスレスレを通った感触。その光景はヘッドライトでスローモーションのように見て、俺の網膜に焼き付いた。
何年か前の旅では凍死しかけたし、転倒して道路に飛び出したこともあったし、雨の中でパンクを修理して風邪をひくかと思った。
今回の旅でも、足が痛いと思いながら山を登ったこともある。
しかし、そんな中でもダントツの【死にかけ体験】が唐突に来た。夜行を正直、侮っていた気がする。
夜の風と恐怖で冷めた頭は、そのあと間もなく山上の道の駅に着いた。
死にかけたショックから勝手に笑えて来る。笑いが止まらない。
来る途中にサドルと太ももの摩擦で切れていたジーンズを直したり、可能な限り平常を装うが、何かが頭の中でモヤモヤして思い出すと笑えてきた。
なんというか、多分、これからの人生で何度も思い出す体験なんだと思う。
なんでもない瞬間、次の瞬間まで生きていけると確信している状態から、唐突に自分が死にかけていた事実を嫌でも認識する瞬間。
安全運転をしていたが、それでも全くガードレールがないことも崖のようになっていることも全く分からなかった。
暗がりの道の駅のベンチで眠る。
どんな状態か? 当時、こんなツイートしてました。
みんな! マジで! 路上に! ゴミを捨てたら! ダメだぞ!
あ、時計の表示がおかしいような気もするけど、なんかツイッターの仕様っぽいです。
外国の時計準拠らしい。知らんけど。




