【岩手】【二〇一六年 五月一二日】 ・親切な人々とマルカンデパート。
【二〇一六年 五月一二日】
「( ゜Д゜) うおっ!?」
どっっしゃぁあああああーーァァっっッッ
――本当に、何が起きたか、分かりませんでした。
この日は、ネットカフェから出て、岩手県・花巻市を目指していました。
花巻というとわんこそば、が有名ですよね。日本固有の大食い文化――そんなことを考えていた矢先、それは起きました。
車道から歩道に移ろうとしたとき、車輪がその境目の段差を越えられませんでした。
小さい段差ならスロープのようになっていなくとも横向きのタイヤでも越えられるのですが、前カゴの荷物が重く、普段と感覚が違っていました。
横滑りに昇れるはずだった段差を越えられず、つまずくように自転車は横転。
俺は身体ごと投げ出され、反射的に両手を付いて受け身を取ったものの、勢いが凄くてそのまま頭を打ちました。
この日の出発前に撮っていた写真ですが、前カゴの左側に入っている黄色いステッカーが貼ってある物体に注目下さい。
愛用のヘルメットです。
「(;´Д`) 死ぬかと……思った……」
ヘルメットの前部には大きな擦過傷が残り、発泡スチロールを凝縮したような材質のヘルメットのクッション性を実感。
正直、ママチャリでヘルメットってバカみたいだと思いましたが、手はすりむき、ズボンの膝には小さいながらしっかりと穴が開いたが、命に関わるダメージは無い。
数秒間、本当に身動きが取れませんでした。リュックが重かったことも有りますが、自分が転倒というものをどれだけ甘く見てたのか、深々と理解しました。
走馬灯というか、脳内が一秒に満たない間に異常に活発になる感触。
車道から歩道に移ろうとしていたのが不幸中の幸いで、車に轢かれることもなく、軽症で済みました。
「大丈夫ですか!? 車に煽られたんですか!?」
「ふえ?」
呆然とする中、出勤直前で忙しかっただろうに、近所の方が声を掛けてくれました。
自分の不注意の転倒で、無事であることを伝えますが、気にかけて下さり、持ち合わせていたお茶を下さいました。
「(*’▽’) 気を付けて頑張ってくださいね」
「( ;∀;) あ、ありがとうございます」
身体よりも不慮の事態から来るショック状態だったんですが、声を掛けて頂いて切り替えることができた。フワフワしていた気持ちが、会話をして現実感が戻ってきたんだと思います。
しばらくは様子を見ながら自転車を押して歩き、北上していきます。
頭に違和感が有りましたが、後遺症も見られない。というわけで、と気を取り直して花巻を走ります。
花巻の町中は、宮沢賢治のモニュメントが多くあり、街並みだけで楽しいです。
わんこそばを食べられる店を探して彷徨っているとき、通りがかったお姉さんに声を掛けて頂きます。
「(*’▽’) 兄ちゃん、日本一周する人?」
「(^◇^) おかげさんで元気にやらせて頂いています!」
「(*’▽’) へー! 元気だねー! なら、そこのマルカンのソフトクリーム食べなきゃダメだよ!
昔からやってるけど、そろそろ閉店しちゃうから! 食べてってね!」
「(; ・`д・´) な、何ですとぉ?」
実際に入ってみると、確かにこんな看板が。
閉店まで一か月を切っています。運命的。
お姉さんからナイス情報を頂きました。これがなければスルーしていたことでしょう。
東北は良い人しか居ないと思っていましたが、岩手は特に良い人ばっかりですわ。ちなみに宮城県民の良い人代表は俺です。納得ですね。
……おい、そこ、今、なんで『え?』って顔した? 待てオイ。
俺、めっちゃ良いヤツだからな。本当に善人だからな。特に子供を助けたとか猫を助けたとかないけど、まあまあ良いヤツだから。
あと、84gは「女性は常に難しいお年頃」を人生訓としており、自分より年上の女性は皆さまを、“お姉さま”あるいは“お姉さん”、として表現していきます。
――もろもろ、察して。
というわけで(?)、デカイリュックを背負い、エスカレーターのタラップを歴史と共に踏みしめて、上階にある食堂を目指します。
階段まで続く行列に加わり、昭和映画のようなレジやサンプル展示に視線を移しつつ、会計を済ませます。
これ、マルカンワッフルが小さいんじゃないんですよ。ソフトクリームがデカいんです。
初の食レポは良いんだけど、フラッシュ設定ミスってなんかホラーっぽく。
普通に明るい空間です。閉店間際だから何か、ってわけではないです。
このソフトクリームはデカいものを箸で食べます。雰囲気が有って癒されます。
っていうか、これからわんこそば食うのに食べちゃうのもどうなの?とは思うが、一息付いたところでわんこそば屋さんを探して徘徊、発見、意気揚々と入ってみる。
「(*´з`) わんこそば一人分、お願いしまーす!」
「(´﹏`) すみません、うちはわんこそば、二名様からなんです。予約なしはちょっと……」
「( ゜Д゜)」
事前調べも連絡もなしで来た俺に申し訳なさそうに接客してくださり、近所の予約なしで一名から食べられる店を紹介してくれた蕎麦屋さん。ありがとうございました。
近所の観光用マップまで頂き、岩手、マジで良い人しか居ない説が着々と証明されつつあります。。
というわけで、ママチャリを飛ばしてわんこそばを食べに行きます。
だがしかし。
貸し切りだそうです。
なるほど。貸し切りですか。花巻市でわんこそばを食べるというプランは完全に破綻しました。
これから向かう岩手最大の都市、盛岡に賭けますが……これが、一二時までとかだったら待てたし、二時までとかだったら諦めが付いたんですが、どういうことなの?
笑いの神かなー、これ。あははは……花巻バーガーを食べてから出撃します。
んまい。
花巻地元の食材を詰め込んだバーガーです。
こちらも楽しみにしてたので、とても落ち着く味。一息ついて今日の寝床を目指します。
宮城とも違う魅力で溢れる岩手県。
高い山と大きな道。地平線に沿って作られているような世界が本当に好きです。
そんな中、山道にて突然、道の途中で前を走っていた軽トラックが止まりました。
大柄な男性が速足でやってきて、俺に声を掛けます。
「兄ちゃん大丈夫かい? 泊まるところないんならうちに来る?」
困ったことがあれば電話してよ、どこでも……と言い掛けてから、「岩手の中くらいだったら行くよ」と名刺を下さいました。
本当に呼んだら来てくれたんだと思います。仕事もあるでしょうに。
どこでもとか言わず、岩手県、と言ってくれたのが、本当に来てくださる気だったのだろうと思います。
良い人しか居ない。マジで岩手、良い人しか居ない。
俺は最初から予定していたキャンプ場に到着しました
岩手県はキレイで使いやすいキャンプ場が非常に多い。
夕食はコンビニで買ったチルドのトウモロコシと、その残り湯で作ったペヤングです。
良いアイデアだと思ったんですけど、チルドのトウモロコシ、湯煎するとめっちゃ時間かかるのね。
ガスの消費っていうところを考えると結構面倒臭い。あと結局炭水化物しかないっていう。
タンパク質は不足するし、ビタミンとしてもうーん、どうだろ。
晴れた空の下、ラジオを聞きながらの夕食。
転倒から始まった一日は、こうやって過ぎていきました。
あと、後々知ったのですが、マルカンデパートは閉店したんだけど、食堂自体は再出発しているそうです。
花巻に行くときは、マルカンソフトクリームを食べよう!
これも冒険の中で他の旅人さんから聞いたのですが、マルカンはラーメンも有名らしいので、俺は食べなかったけど、そちらも食べてみて下さいね。
(2018年現在)




