【宮城】【二〇一六年 五月八~九日】 ・47の冒険
持っていく装備類を充電します。
ケータイ電話は一見するとガラケーですが、実はガラケーです。
表面に小さな傷が増えましたが、初めて購入したケータイ電話で、買い替えをしたことなし。
あとは多機能ラジオ(左下)、バッテリーパック(上)、ヘッドライト(下)などを持っていきます。
これらも結構重いのですが、どれも必要なのでやむなし。覚悟して行きます。
左上にあるボトルみたいなヤツは、右中段にある丸い奴とセットで、今回更新の最後辺りで登場致します。
【二〇一六年 五月八日】
そんなこんなで諸々の準備を終え、眠ろうとしますが、前日中々眠れません。
実は、四朗のチャリ旅は初めてではないのです。
五年くらい前、二十歳くらいのとき、もっと無謀だった頃にもやっています。
そのときは、初めての野宿では全然眠れなかったのです。
警察が来たらどうしよう、犯罪者や野生動物に襲われたらどうしよう、そんな心配ばっかりして眠れませんでしたが、旅の途中からは慣れてきました。
そのときはそのとき。不安になって旅を楽しめなくちゃ勿体ない、と気付いてからは、不思議と落ち着きました。
上のは最初の旅のときの画像ですね。
とはいえ、今回の不眠はそんな理由でもなく、ただただワクワクしていました。
興奮している。遠足前に寝付けない現象。
明日から冒険が始まる。そんな風に感じて深夜過ぎてから寝つき、起きたのが五時。
再び眠くなったのが、当時は日曜八時開始だった仮面ライダーを観てから。
二時間ほど仮眠を取り、出発はなんと十時半。
早朝に出発して行けるところまで行こうとしていたのですが、まー、こんなのも自分らしいと出発。
前回の旅ではサイドバックなしで、変速ギア付きの相棒でした。
この相棒の変速機回りが破損してしまったため、買い替えて今回は新たな相棒となり、こちらは変速機なしです。
この“故障の原因になるし、自分で整備できないから変速機なし”を選んだことの意味がわかるようになるのですが、それは後々。
そんなこんなで出発した昼頃。
直後に早くも『兄ちゃん、日本一周してる人? どこから来たの』と声を掛けられました。
はい、宮城県内です。
ていうか、旅をしていなくても普通に来るような交差点で、です。
もうね、リアクションが『仙台市から来ました』って失笑するしかないからね! ここも仙台市だって!
仙台市民と仙台市民が、普通に会話してるだけだからね、これ!
今回の旅は日本一周が目的なわけですが、最初に宮城から北上します。つまり岩手県を目指します。
正直、どっちからでも全部行くので関係ないような気もしたのですが、暖かい内に東北を回りたかったんです。
冬場に入って東北とか北海道で野宿をすると雪で死ぬ、ということはアホでも推測できたので。
というわけで、仙台から北上して、日本三景・松島です。
キレイなんですけど、ぶっちゃけ何度か来たことあるので、そこまで感慨はなく。
観光客の皆さんの横を通り抜け、ザクザク進みます。
今日中に岩手県まで行くぞー! という気持ちとは裏腹に、時速は十キロくらいしか出ません。
本気で全然速度が出ない。
変則ギアもなく荷物が多いので仕方ないのですが、途中で道も間違えたりして、十キロくらい戻ります。
十キロ間違うってことは、アレですからね。行って戻るとそれだけで時速十キロで移動している人間は二時間ロスするので、結構必死です。
旅の序盤だけあって、気軽に動画撮影しています。
この光ってる部分が風に合わせて揺れるんですよ。
強い風で田んぼの水が揺れて、凄くキレイなんですが、多分、地元の人にはただの日常。
ただまあ、動画を入れると小説でもなんでも無くなるので、今回は動画のスクショのみですが、同じ宮城県内でも既に感動しています。
松島のような観光地よりも発見がある。
人間ひとりひとり、キレイだと感じるものは違って、それを違う目を通して見る。
だから、本当にキレイなものは自分で探さなければいけない、そんな当たり前のことを感じつつ、初日は地図で『橋』を探します。
ネカフェもキャンプ場も道の駅も無い中、野宿場所を地図で探す方法として八十四朗が前回の旅で身に付けていたのが、『橋を探す』でした。
橋は地図上で大体、大きさがわかります。大きそうな橋はその下が河原です。
ちなみに、野宿は法的にはグレーです。
道の駅も公園も、不法滞在と云われればグウの音も出ません。
最初から【寝るな! キャンプするな!】という場所は避けましょう。
後に知ったんですが、ネット上でそういう野宿できそうな場所を調べるサイトなどもあるらしいです。
ただ、個人的にはそういうのは好きになれず、結局使いませんでした。
【自己責任で当たり前】のものを、【インターネットで収集する】ということに違和感を覚えちゃったんですね。
無責任に発信された情報に、自分が自分のために行う旅を左右される、というのが気分悪かった。
この辺り、旅はひとりひとりでツールやルールが変わる、と感じます。
話を戻すと、とにかく、自分は大きな橋の下で野宿できそうな場所を発見。
ポイ捨てされたゴミを端に寄せ、場所を確保してテントを設営。これも前回の旅から続投している五年前のモデルのテントです。
とりあえず、普段はあまり聞かないラジオの電源を入れます。
仮面ライダー俳優の半田健人のラジオが放送していて楽しい。
星空を楽しみつつ、テントの中で高卒認定の勉強をします。
ただ、橋の下は街灯もなく、テントの中は真っ暗闇。どうするかといえば。
今回の冒頭で充電していたアレですね。
電気ランタンで、ソーラー充電ができる上、光っている部分がシリコンなので衝撃にも強いです。
電気屋に行ったら良さそうだったので購入したのですが、これは本当に良かった。
これから旅に出ようと云う方にもオススメできますね。旅の終盤までしっかりと活躍してくれました。
ラジオと虫の声、頭の上では車の走り抜ける音。
ファンの野球選手、釜田佳直がホームランを浴びた情報などに衝撃を受けはしたものの、これぞ野宿と思いながら寝袋にモゾモゾと潜りこみ、初日は終わりました。
【二〇一六年 五月九日】
早めに起きて、サクサクとテント回収。
写真を見ると五時半ですが、テント撤収にもうちょっと掛かっているので、もうちょい早く起きています。
優雅にカレーライスを温めています。(レトルト)
ところで、この写真の奥に注目下さい。
こんな感じの頭のおかしいチャリで旅をしていました。
まー、荷台の耐荷重量は(出発する前段階では)セーフだったし、前カゴも(出発する前段階では)大丈夫だったので、完全に合法です。
「(´・ω・`)タブンネ」
あと、河原野宿唯一の欠点としてトイレが無いことも有りますね。
テントを出しっぱなしにするのも怖いので、早めに起きないといけない。
飯を食ってからコンビニに寄って、飲み物とか購入……これで懸命な八十は“おや?”と気が付きます。
これ、わざわざレトルト調理するより、買った方が早くね? と。
確かに安いことは安いのですが、鍋を洗ったりする時間が有り、時間はイコール体力なので、数百円をケチって数十分ロスすることは、果たして得なのか。
その辺りを考察しつつ、宮城県を進みます。
行ったことのなかった石ノ森章太郎記念館も通れると分かったので、これも寄って行きます。
県内とはいえ、意外と行ったことがなかったので……。
しかし。
なんと『月曜定休』の文字。
冒険が始まって最初の観光地で、いきなり七分の一の確率で定休日に当たる。
思わず、
「(・ω・) 笑いの神でも憑いてるのかなー、俺」
なんて思っていたんですが、後々、笑いごとではなくなっていきます。
この笑いの神、今思い返せば、この石ノ森章太郎記念館からの付き合いだったのかもしれません。
こっちは石ノ森章太郎生家。記念館以外にこんなのもあります。
記念館には入れませんでしたが、外にはサイボーグ009のジョーやフランソワ、仮面ライダーに猿飛エッちゃん、他にも石ノ森章太郎所縁の場所が数多く存在し、楽しめたことは楽しめたので、無駄とは思いませんが。
強風の向かい風。
ベルトに風を受けながら坂道を登って行きます。
うーむ、俺が仮面ライダーだったら変身できるくらいの風だ、そう思いながら漕ぎまして。
岩手県到着。
二日掛からず宮城県を脱出できた。
宮城県も割と大きい県だし、これなら四七都道府県×二日で、九六日くらいで完遂か?
そんな甘い考えが頭を過りましたが、ここから俺を待ち構えていたのは、序盤のくせに全行程の中でも最大級のピンチでした。
四七都道府県中、北海道に次いで二位の面積を誇る岩手の、鮮烈なまでの洗礼だったのです……。
ちなみに、河原で寝たり、火を使ったり、条例違反になる場合と場所が有ります。全部がOKではない。
もし万が一、場所を特定された方が居て、『お前、ここで寝るとか条例違反じゃねーか!』という指摘が来た場合、
自分は『すいませーん、実はその近くの民家に泊めて頂いて、その日は野宿してませーん、カッコつけたくて嘘吐きましたー、フィクションですー』という“告白”をする予定があるとかないとか。
まー、盛っちゃうのはよくある話だからね! 仕方ないね!
証拠となる写真は全部、84g発信。
一年以上前の野宿者の正確な日時と風体を覚えている方がいらっしゃった場合、ゴメンナサイするしかありませんが。
……っていう、逃げを先にしておくくらい、迷惑を掛ける可能性のある行為。
マネしても良いですけど、自己責任で。『84gさんがやってたからやりました』なんてクソみたいな言い訳をせず、自分の旅は自分で責任を持ってやってください。