【北海道】【二〇一六年 五月三一日】 ・雨と心の街、釧路。
【二〇一六年 五月三一日】
ライダーハウスで目を覚ますと、しとしと雨が降っている。
更にこのあと強くなる予報だったため、今日は一日足止めで小休止にすることにする。
このライダーハウスのオジサンに、近場でウマいものを聞く。
「(8◇4) すんませーん! この近くでウマい飯屋さん教えてくださーい!」
「(´∀`) この近くだと、勝手丼って奴と、あとミシュランに認定された店があるよ」
「( 8Д4) み、ミシュラン!? ミシュランってあのミシュランですか!?」
「(´∀`) ミシュランらしいね」
「( 8Д4) ミシュランですか!」
……ぶっちゃけるとよく分かってないんですが、なんか有名な格付けらしいですね。
というわけで、教えられたお店を目指して移動中。
うーん、どこだろう。オジサンはすぐ見つかる、みたいに云ってたけども。
……あれ?
めちゃくちゃ普通に書いて有ったぁああああ!?
グルメぶって優雅に食おうと思ったが、めちゃくちゃ親しみやすい良いお店。
味も通じゃないとわからないとかそういうのは全くなく、何杯でも食えそうな安定感。
幸せの余韻に浸りつつ、“勝手丼”を狙う。
いつもは道に迷いながら向かう所だが、なんと今食べたラーメン屋さんのすぐ近くなのだ。
ここに来る前に視界の端にしっかりと入ってたので、テクテクと“勝手丼”と記された市場に入っていく。
逆に駐輪しても大丈夫そうな場所を探す方が大変だったが、とにかく潜入。
「(´8ω4`) すんませーん、勝手丼ひとつー」
「(^◇^) はいはい。まず白飯買ってね」
「(´8ω4`) ? いや、白飯じゃなくて、勝手丼……」
「(^◇^) 違う違う! 勝手丼ってメニューじゃないの、この白飯を持って、この市場を歩いて、それで刺身とかを買って、自分の好き勝手に丼を作るの」
「( 8Д4) な、なんですとぉおお!?」
マジで下調べをしないで旅をしているので、ずっとこんな感じです。
白米を持って歩くと、色々なところから声が掛かります。
「( `―´) 兄ちゃん! これ食ってけよ! サービスするよ!」
「(*´Д`) お兄さん! これを食べなきゃ! 味噌汁もあるよ!」
「(^◇^) これが有るよ! 茹でたて! 捕れたて! 最高だよ!」
市場を歩いて物色していると、流れるようなセールストーク。
どれを見ても美味しそうですが、やはり財布の上限を考えるとアレもコレもはできませんが、それでもこの場面で食べないとバカでしょう!
歩き回り、世界に一つだけのフェイバリットな勝手丼完成です!
鮮度も良し! 一番印象に残ったのはトキシラズ。後々で調べたらシャケの一種らしいのですが、全然別の味。
行く時期によりますが、ぜひぜひ、この日、このとき、自分だけの一杯を思い出に加えて欲しいところ。
そして、腹ごなしに歩き回っていると、釧路のオシャレな美術館を発見。
立ち寄ってみると、深瀬昌久という写真家さんの作品展をやっていた。
特に意識して立ち寄ったわけでもないし、写真展で中の写真なんか撮れるわけもないので画像は無いが、衝撃を受けた。
奥さんや父親、ただのカラスの写真、はてはただのオッサンである撮影者自身の自己撮影。
決して芸術的ではないはずなのだが、芸術たれという意思を感じるカメラワークと、それに後からやってきたような被写体の生々しい存在感。
いったい、この作者は何を以って芸術だと思っていたのか、問いかけたくなるような作品群だが作者さんは何年か前に亡くなっている。
芸術とは何か、なぜ自分がそれを撮影しなければならないのか。自分自身や家族、なんでもない街角、それらは芸術たりうるのか。
そんな疑問のようなものが全体から漂う、奇妙な作品たち。
多分、今日、雨が降らなければ決して立ち寄らなかったように思う。
ここで、このとき、こうやって深瀬昌久という人物に出会うことは、何かが掛け違っていたら有り得なかった。
ただの偶然を、天啓と思った大昔の宗教家たちの感覚を、理解した気がした。
人が生きて旅をしていると、運命としか思えない出会いというのは確かに存在していて、俺にとっては、それが今だった。
長い長い旅。
短い短い人生。
長い長い人生。
短い短い旅。
運命とかと呼ぶのは分からないが、ただ、雨が冷たくなっていた。
例によって周囲の人に聞き込みをしていると、ザンギというのが美味しいらしいのでそのお店に向かうが、その間もどんどん雨が強くなっている。
ズブ濡れになりながらも到着するが、そのまま上がると店を濡らしてしまうので拭いてから上がろうとするが、洗濯回数をケチっているので乾いたタオルが足りない。
今使ってしまうと、後々で使えるタオルが減ってしまうので、拭いては絞り、絞っては拭きで時間が掛かる。
すると、横から声が掛かった。
「(´・ω・`) お兄さん、何やってんの?」
「(8◇4) このまま上がると床を濡らしちゃうので、拭いてます」
「(´・ω・`) 良いですよ、別に、そのままで」
「(8◇4) え?」
よく見ると、このそば屋さんの店長のオジサンだった。
申し訳ないなー、と思いつつ入ると、奥さんも声を掛けてくれた。
「(´∀`*) 日本一周? へー、役に立つか分からないけど、良ければ貰ってよ」
「(8◇4) え? 良いんですか?」
頂いたのは、商店街の名前が入った白い新品タオル。
これも、そのときは大して気にしていないで写真も撮っていなかったのですが、後々にも大活躍してくれた旅のメンバーになりました。
旅の中でいつの間にか失くしてしまったけれど、重ね重ね、本当にありがとうございました。
そんな気持ちの中、当初の目的達成が出てきました。
そばザンギと、そば。
サッパリとウマいカラアゲ?のような食べ物、そばザンギとかなり出来の良いそば。
店を出ると大雨が降り続いており、来る途中で見たネットカフェに飛び込んだ。
グショグショのスニーカーに持ち歩いて居たエタノールをばら撒いてから、先ほど頂いたタオルを押し込み爆睡する……はずだったが、ネットカフェで野球が見られることに気が付く。
この当時は、ネット配信動画で楽天戦をやっており、その試合は、エース則本が圧倒的な力を見せつけ、完投勝利。
雨で体力は使っていましたが、胃袋から幸せが広がり、野球魂も最高の気分。
釧路の夜は深く、たった一日ですが、釧路も最高に楽しんでいます。




