【青森】【二〇一六年 五月一九~二〇日】 ・みっつめの冒険は、挫折とウミネコ。
【二〇一六年 五月一九日】
第三の県、青森!
青森県に入ってから、とても素敵な名前のお店を発見。その名も『リンデン』。
いやぁ、面白い名前だ。オシャレだし。
強さとスタイリッシュさと自由さを兼ね備えた良い名前ですなァ。
…。
……。
………。
…………。
「(´・ω・`)?」
「(´・ω・`)?」
「(´・ω・`)?」
「(´・ω・`)?」
画面の前でこんな感じだと思うので、解説します。必要ですね。ハイ。
楽天イーグルスで活躍していた、というか、色々と有名な助っ人外国人に同名の選手が居るんです。トッド・リンデン。
喫茶店でしたが、普通に食事もできるということで、地元の名物らしい“いちご煮”なるものを食べてみることに。
「( 8Д4) へえ、イチゴ煮かぁ、でも定食高いな……」
「(´∀`) お客さん、イチゴ煮ラーメンの方だとちょっと安いよ」
「( 8Д4) え、イチゴ煮って甘いんじゃないんですか? ラーメンに入れて良いんですか?」
「(´∀`) 甘くないよ。郷土料理郷土料理」
「( 8Д4) ????」
釈然としないまま、イチゴ煮ラーメンを待つ84g。
すると。
「( 8Д4) 海鮮ラーメン……?」
「(´∀`) イチゴ煮ってウニとか煮たヤツだよ。その形がイチゴっぽく見えるからそう呼んでるの」
「( 8Д4) へー……うお!? 味が濃厚!?」
地物の海鮮料理ということは、地元の人が普段から『食べたい』と思える味付けなわけで。
味がラーメンのスープに入れてるのに薄まっている感じがせず、スープとも親和。
定食で食べたら別の味だったと思いますが、ラーメンもかなり完成形。
麺までしっかり絡むし、これはオススメですね。全く知らなかった地物グルメ。
なんだろう、誰かに勧められたものでもなく、青森に来なければ食べなかったであろうもの。
ただただ偶然出会い、そして感動する。時間に追われず、ただ自分の気持ちのままに食事。
これは本当に贅沢だと思えた。
んで。八戸に到着。
ここで、ちょっとした、それでいて重大な決断を迫られます。
驚くべきことに、北海道には自転車では行けません。
皆さんはご存知でしたか? 84gは旅の直前まで知りませんでした。
青函トンネルは自転車も通れると思っていたのだ。
……当小説は、バカ隠しをしない仕様となっています。
とにかく、北海道には飛行機やフェリーに乗って行かなければなりませんが、俺の自転車は解体して荷物にする輪行が出来ない。
ママチャリなのでそんな分解する機能が無いんです。
そのため、八戸・大間・青森市辺りから乗らないと行けないので、当初は大間から函館を目指すつもりだったんです。
ただ、この作品の冒頭で云った通り、俺は中卒で高卒認定受験を予定。
そのため、試験日の八月までに仙台の自宅に一度戻らないといけない。
そうなると、選択肢はふたつ。
【1】:八月までに北海道・青森・秋田・山形を回り、山形の峠を越えて戻る。
【2】:八月までに北海道を一周して函館から仙台への直通フェリーで戻る。
このふたつ。
当初から【1】を予定していたのですが、岩手の突破が当初予定より遥かに時間が掛かった。
見通しがかなり甘かった。【1】では間に合わない可能性が高く、悪天候でも強行したりしないとならず、危険性が高く、観光もできない。
が、【2】は【2】で問題がある。旅を再開するとき、再びフェリーで青森に行かないといけない。
明日から冒険だ! ってなったとき、中断地点までフェリーで行ってそこからスタートってのは気が乗らないし、それだと今度は時間が余りすぎる。北海道と青森だけで二か月掛からず、中途半端。
資金的制約からも、それは避けたかった。
そこで岩手普代村で自転車修理中に、こんな話をしていました。
「(´・ω・`) 北海道さ行くんだったら、八戸から出た方が良いんでないの?」
「( 8Д4) え? なんでっすか?」
「(´・ω・`) 今、大間のマグロ、時期外れてっぞ」
「( 8Д4) 」
そして、八戸に来てから通行人の方ともこんな話が有りました。
「(´・ω・`) 大間のマグロも八戸のマグロも変わらないぞ。上がる港が違うだけだから」
「( 8Д4) いや、それを云っちゃあ……」
マグロ以外にも大間の名所は沢山あるでしょう、八戸・大間の間にも色々な見所が有るでしょう。それこそ行かないと分からない。
ただ、この段階でそのときの気分(重要)と現実的問題から、84gの最適解は【八戸から函館へフェリー】でした。
ここで【日本一周ってなんだろう】って話になります。
海岸線沿いに一周がルールだとすると、この段階で……というか、山道を行っている段階で岩手辺りから84gの日本一周は破綻しています。
そもそも海岸線一周だと、今度は【海なし県は寄らなくても日本一周】ということになってしまいますし、そもそも山道を選びたいという自由もなくなって不便。
俺の中の日本一周は、【四七都道府県を全県ママチャリで行き、その県を楽しむ】として決定していました。
この辺り、日本一周する人ごとによって定義するしかないように思うんだけど、
【お前は海岸線回ってないから日本一周してねえ】と云われると、否定できなかったりします。
俺の日本一周は【誰かに認められるための日本一周】ではなく、【俺のやりたい日本一周】以上の何かではないので、論破する方法も意味すら持たない。
というわけで、【俺が84gもしてない海岸線ママチャリ一周してやる】みたいな人が居れば、宮城に来るとき教えてください。ずんだシェイクくらい奢ります。
とはいえ。
下北半島を丸ごとスルーするのは、自分の中でも引っ掛かります。
海岸線沿いルールではないとはいえ、下北半島は青森の小さくないパーセンテージを占めています。
いつか、リベンジとして下北半島に自転車で行ってみたい。折り畳み自転車か何かで行けないかな。
挫折もまた冒険。
ふと、旅に出ない人の気持ちが分かった気がした。
【あれが出来ないから旅に出ない】というできない理由を探すんじゃないだろうか。
俺は【できないならできないで、できる、したい旅をする】だと気付く。
というわけで、最初の設問は【1】。
ただし、青森港や大間からではなく、八戸から出発。
二日に一度の八戸→函館行フェリーですが、今日の朝出てしまったので、次のフェリーは明後日。
明日は大間に行けない分も八戸で青森を満喫します。
【二〇一六年 五月二〇日】
ネットカフェで目を覚まし、八戸観光です。
下北半島に行くルートであれば、今日観光する時間も作れなかったわけですが、切り替えて楽しみます。
さてと、どこへ行こうか……ブラブラと走っていると、何やら視界に入ります。
「(8ω4) 鳥……かな?」
ここは八戸の蕪島!
ウミネコ祭り状態!
「( 8Д4) すげーわ、これ……」
近所には無料の資料館もあり、ここがなぜ蕪島と呼ばれているか、神社に有った事件など、多くの資料が展示してあります。
自転車旅行に限らず、一度は来て損なしのスポットです。
神という概念は、古い迷信のようで実感がありませんでしたが、なるほど。
この空間にウミネコと一緒に、“何か”の存在を感じる。なぜウミネコたちがこうまで集まるのか、逆に何もいなければ、これだけ集まるのはおかしいようにすら感じる。
ウミネコたちを集めている“何か”を神と呼ぶならば、それを確かに感じる場所でした。
ネットでせんべい汁やヅケ丼というのがウマいと聞いたので、近所の方に聞き込みをし、今日の昼飯を食べるべく移動。
「( 8Д4) これ、ヅケ丼をオカズに丼飯食えるわ……」
身体の芯から温まるせんべい汁に、飲み込んでからも旨みが残るヅケ丼。
青森、恐るべし。ちょっとお高めなので諦めましたが、オカワリしたかったなー。
東北の米どころっていうと秋田や宮城のイメージだけど、青森のゴハンも好きですわー。秋田が楽しみです……って。
……いや、いくら米がウマくても、二四時間、買わないと行けない状況、って、そんなにあるかね……?
青森って云えばラーメンも激戦区だし、米もこれくらい押して行かないといけないのかね。
というわけで、青森と云えばラーメン!
つうわけで、ブラリとラーメン漫遊。これぞ青森って感じのご当地感は無いが、それぞれにレベルが高ぇ……!
この日はタップリと八戸を観光し……いや、ほぼほぼ食ってばっかりだった気はするけど、とにかく、明日に備えます。
ここまで、まだ旅の序盤というつもりだったけど、肌の色の違い、わかって頂けるかな。
色が変わっているんだけど、陰影じゃなくて、本当にこういう色。
上からの直射日光が強いから、色の差がクッキリ出て来ています。
また、上腕に比べて前腕の筋力が結構落ちてます。足回りが太くなるのに比例して、こちらに行くエネルギーが落ちてる感じです。
明日からは北海道の戦いとなりますが、五月だし寒くは無いし、暑すぎるってこともないだろう。
と、天気に関しては一切の心配をしていなかった自分ですが、それがまたまた甘い認識であることに気が付くのは、北海道が岩手以上の巨大さを誇る県であると実感する事件が起きてからでした。




