表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/38

気付く気付かないは意識の差

私は負けた。

奴の実力を知りたい、底の見えない奴の力を知りたい。

そう思って、私は模擬戦を申し込んだ。


もちろん、最初から負けるつもりはなかった。

全力で勝ちにいった。


最初の一撃、自信のある奇襲だった。けれど、躱された。

あいつと打ち合う毎に、どんどん私の中で「勝てない」って気持ちが大きくなった。

今まで鍛えた技術が通用しなかった。

トラベルさんもアイゼルさんとも模擬戦はした事がある2人とも強くて私は勝てなかった。

けど、こいつの強さは2人の比じゃない。

トラベルさん、アイゼルさんの2人にも通用した奥の手が全く通用しなかった。


私の奥の手は無属性の魔力を身体中にまとい、身体能力を上げる事。

普通の身体強化とは違い、純粋な身体強化のみに特化した魔術。

超強化(オーバー・ブースト)

自分の身体が耐えられる限界ギリギリまで能力が強化される魔術。

それすらも超えてきた奴は何者なのか。


今までの自信が粉々になった、今まで鍛えてきた事は何だったのか。


・・・けど


「・・・面白い。」


私は知らず知らずの内に笑っていた、悔しくないわけがないのに、腹が立っているのに。

それなのに、私は笑っていた。


どうしたらあれほどの強さが手に入るのか、私があの領域まで達せられるのか。

いや、絶対に達してみせる。

ソフィアのためにも


「私は、誰よりも強くならないといけない。」


その為にもまずは


「すごいですね!あんなの初めて見ました!たくさんのシンが走り回って凄かったです!」


「あー、どもども。」


「シン。」


ソフィアに話し掛けられていた、シンに声を掛ける。


「はいはい、お疲れ様でーす。」


「お疲れ様・・・じゃなくて。」


「他に何か?」


「どうすれば、私は強くなれる?」


「・・・・・。」


シンの表情からは何も読み取れない。

何を考えてるのか全くわからない。


「どうすれば、お前みたいな強さが手に入る?」


「なんで、強くなりたい?」


私を試す様な、そんな質問の仕方。


「・・・私は強くならなければいけないんだ。」


私の視線が一瞬ソフィアにむく。


「・・・そっか。」


今まで聞いた事がないような優しい声が聞こえた。

目の前にいるシンからは私の視線の動きも見えたんだと思う。

それでも、全部を受け入れてくれるような優しい声だった。


「ステラは、まだまだ強くなれる。」


「・・・うん、でもどうすれば・・・?」


「んー、とりあえず俺が教えれる事は教えるよ。」


「いいの?」


「おう!任せろ!」


「うん、任せる。」


「そんじゃー、少し休んでから始めっか。」


「今から?」


「身体も暖まってるし、いけるっしょ?」


「まぁ。」


「よし!けどー、その前にちょっと・・・御花を摘みに。」


「あぁ、トイレはそこの角を曲がってすぐにある。」


「せっかく遠回ししたのに!」


「さっさと行ってこい。」


「あいさ!」


そう答えるとシンはトイレに向かって行った。


「・・・やっぱり、変な奴。」


「ふふっ。」


隣からソフィアの笑い声が聞こえた。

ソフィアの方を見ると、ソフィアが嬉しそうに私を見ていた。


「どうかした?」


「んーん、なんでもないよ。」


「なんでもない顔してないよ。」


「えー?そんな事ないよ?」


そう答えるソフィアだが、顔がニヤけている。


「ソフィア?」


「ふふ、ごめんごめん。ただ、ステラが私以外にあんな口調で話すの初めて聞いたから。嬉しくて。」


え?


「私、どんな風に話してた?」


「えーっとね、仲良しとのおしゃべりって感じだったよ?」


え。

私が?私がソフィアと話す時のように気を許した?そんな馬鹿なことあるばずないだってあいつはついさっき会ったばかりだしそれに馬鹿だしムカつく奴だしけどさっきは何でか何でも受け入れてくれるような雰囲気だったから少しばかり気を許したのかいやそんな馬鹿な話があるわけがががが・・・・・・!


「ステラ?スーテーラー?おーい。」


遠くからソフィアの声が聞こえるような気がするけど、たぶん気のせいだと思う。

それよりも何で私があんな奴に少しでも気を許したのかやっぱりあいつは油断ならない奴だ。いやでも、さっきの会話は少し心地よかった気もするけれどいやそれはただの気の迷いかもしれないしなんなんだろなんでこんな気持ちになるのかやはり気をつけなくてはならないのであるのでどうすればばばば・・・・・・


「お待たせーって、ステラの奴どうした?」


「急に黙っちゃいまして。」


「おーい、ステラー?」


急に目の前にシンの顔が現れた。


「うわぁっ!!!」


「ぐぼほっ!?!!」


あ、急に現れたから顔を思いっきり殴ってしまった。


「な、なんばしよりますん・・・?」


「なんだその言語。急に私の前に現れたお前が悪い。」


「・・・さっきまでのステラじゃない・・・。」


「ナニカイッタカ?」


「なんでもございません!サー!!!」


やっぱり、こいつは変な奴だ。


「ふん、それで最初は何をするんだ?」


「はっ!最初にするのは柔軟でございます!」


「柔軟?」


「はい!柔軟とは馬鹿にされやすい事ですが、身体を動かす事に関して柔軟ほど大事なことはないのです!」


「それでいつまでそんな口調で話す気なんだ?」


「直していい?怒ってない?」


「怒ってないからとっとと戻れ。」


「ほーい。」


「それで、柔軟にそれほど意味があるのか?」


「ま、そう思うよね。けどねー、本当に重要なんだよ?」


そう答えるとシンは構えをとる。


「まずはー、そうだな。例えば蹴り。」


体術の基礎の基礎である蹴りの動作を実践するシン。

変わっていることが何一つない、ただの蹴り。


「何も変わった所がないが・・・。」


「まぁまぁ、焦るなって。」


笑いながら答えるシン。

再度、蹴りの構えをとる。


「そんで、これが身体を柔らかくしたら出来る蹴り!!!」



ゴゥッ!!!と風が断ち切れた。

先程の蹴りとは似ても似つかない。

いや、『全くの別物』だった。


「ま、こんぐらいの蹴りは出せるようになるな。」


「・・・何故、こんなにも違うんだ?」


「まずね?身体が柔らかいって事は全身を使えるって事にも繋がるのな。身体の芯から手足の先へ、力の伝達を上手く伝える為にも柔らかくした方が得なんだよ。」


「ふむ。」


「んでな?柔軟で自分の身体のことをよく知るのよ。そうすりゃ、戦い方にも幅が出来る。」


「自分の身体をよく知る?」


「そ。頭の先から、つま先まで。」


「頭の先から、つま先まで・・・。」


「そ、まずは自分の身体を意識する。口で言うのは簡単だけどな。」


「・・・思っていたよりも重要な事なんだな。」


「そそ。怪我しないように予防も出来るし、強くもなれる。」


適当に見えて、意外と考えてる事は考えてるんだな。


「さー、早速やってみよー。」


「あぁ。」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ