割とどこにでもある説明会
「ちーっす!この度新しく配属になったしnおぼぅっ!?」
私が案内してきたバカが部屋に入るなりふざけたので一発ぶん殴った。
「お・・・おふぅ・・・ステラはん、なにしますん・・・?」
腹を抑えながら私を見るバカ、さっき雇われた『シン・ガナスト』
「言ったはずだ、怪しい動きをしたら容赦はしないと。」
「いや、ただの挨拶ですやん・・・?」
そんなふざけた挨拶があってたまるか。
「あ、あのー、大丈夫ですか?」
ソフィアが困ったような顔でバカを見る。
しまった、あまりにも苛立ったからここがソフィアの部屋だと忘れていた。
「だ、だいじょび。俺は強い子だから」
そうソフィアに言うバカ。
「腹を抑えて言う言葉ではないな。」
「あんたの所為だと思うんだけどなぁ!?」
「そうだよ、ステラ。いきなりお腹を叩くのは・・・」
ソフィアに言われてしまった、少しやりすぎたか。
「すまなかった、少しイラっとしてな。」
「えぇー・・・?」
「何か言ったか?」
「いえ!何も!」
こちらに敬礼をしてまっすぐ立つシン。
「ふん、ソフィア様。こいつが新しくこの屋敷に配属されるバカです。」
「ども、シン・ガナストです。よろしくお願いします、ソフィア様。」
「あ、はい。こちらこそよろしくお願いします。後、私の事はソフィアと呼んでください」
「ん?なんでですか?一応、俺の主人ですよ?」
ソフィアの提案にもっともな意見を言うシン。
だが・・・
「見た感じですと、シンは私たちと同じ年ぐらいですよね?」
「あー、そうですね。自分、今は13歳です。」
「よかった。同い年ですね。それなら、私と友だちになって欲しいんです。」
「ほ?」
よくわからんという顔をして私を見るシン。
私はソフィアの言う事に反対はしない。無駄だとわかってるから。
「いや、でも、立場が。」
「お願いします、私は主人として見られるのがあまり好きではないんです。・・・ダメ、ですか?」
悲しそうな目でこちらを見るソフィア
「いやぁ、でm・・・分かりました!ソフィアと呼ばせていただきます!」
「本当ですか!ありがとうございます!嬉しいです!」
ちっ、感のいい奴め。
「・・・怖かった、後ろからすごい殺気がきた。」
なんの事やら。
「あ、そーそー、聞きたい事あるんだけどいい?」
「はい、私たちに答えられる事ならなんでも聞いてください。」
私たちって、私も含まれてるし。まぁ、いいけど。
「それじゃ遠慮なく。あのさ、ここってどこ?」
「「・・・・・・」」
「ん?」
「バカだとは思っていたがここまでのバカだとはな。」
「あの、何か辛い事でもあったんですか・・・?」
本気でソフィアと一緒に心配になった。
「うわぁー、2人がかわいそうな子を見る目で俺を見てるー・・・。いやね、俺ってかなり特殊な方法でここに来たからさ。今どこにいるのか全然わかんなくて。」
「・・・流石に六国連合は知っているだろう?」
「おう!知ってるぜ。」
六国連合
この世界を構成している六大陸。大陸毎に存在する都市を中心とした六つの国が結んでいる連合。
大陸毎に文化が違く、様々な特色がある。
「ここはエルステア王国、六国連合の一つだな。」
「おー、なるほどな。となると、種族比率は平均か。」
種族比率
エルフ族 亜人族 獣人族など、この世界に存在する意思の疎通がこなせる種族が人以外にも存在する。
種族間のトラブルは少ない。
大陸毎に特定の種族が多いなどの比率を種族比率と言う。
エルステア王国は全ての種族がバランスよく存在する。
「あぁ、その分特色としては薄いが、学校などでも様々な分野を学ぶ事が出来るのは特徴だと思う。」
エルフ族は魔術 亜人族は工芸や鍛冶 獣人族は戦闘など種族によって得意分野は異なるため様々な種族のいるここエルステアは学べる事は多い。
「そうなると、ギルドとかもある?」
「はい、ギルドもちゃんとありますよ。」
ギルド
冒険者と呼ばれる物が所属する組合。ギルドにも様々な種類があり、冒険者ギルド 魔術ギルド 商会ギルドなど他にも存在する。
冒険者ギルドに所属する者にはランクが定められ、ランクによって受けれる依頼の内容も異なる。ランクは一種のステータスでもある。
魔術ギルドでは日夜様々な魔力、魔術に関する研究が行われている。
魔力とは全ての人が持つ力である。しかし、魔力は個人によって持てる量が異なる。身体の成長と共に増える事もあるが、訓練を積む事でさらに鍛える事も可能だ。しかし、増える限界もある。
商会ギルドでは様々な物の売買がされている。
基本的に商会ギルドに登録されていない者は商売をしてはいけない。商会にもランクは存在する。
「やっぱり、騎士団だけで魔物に対処するのにも限界があるもんな。」
魔物とは、瘴気によって生み出された害を与える生き物の事である。
魔物の強さにもランクが存在し、ランクが高い程強力な魔物である。
その魔物に対抗するため、各国は騎士団を設立する。しかし、魔物には大型から小型まで数多く存在し、騎士団だけでは対処しきれていない。
そのために冒険者ギルドが存在する。
「・・・と、今までで何か質問があるか?」
「はーい、2人は魔術適正あるの?」
魔術適正
その名の通り、魔力を使い魔術を使う適正の事だ。
いくら魔力が高くとも、魔術適正がなければあまり意味はない。
魔術適正を持つ者は、大きく八つの属性にわかれる。
火 水 風 雷 氷 土 光 闇
これらを基本属性と呼ぶ。
「・・・あぁ、私もソフィア様も適正はある。」
「私は『光属性』です。」
「ほー、ステラは?」
「・・・私は『無属性』だ。」
「おろ、特殊属性持ちっすか。」
特殊属性
基本属性に属さない属性の事を指す。
特殊属性は数多くの種類がある。
まさに『個性』と呼ぶほど、人による属性だ。
「お前は持っているのか?」
「おう!俺も特殊属性持ちだぜ?」
「ふむ、珍しいな。数多くの特殊属性があると言ってもそれこそ一人一人違うから多くあるだけで、人数自体はそんなにいないのだがな。」
特殊属性持ちがこの屋敷だけで2人か。
「説明としてはこんなものか。」
「ありがとな。おかげで頭ん中整理できた。」
「ステラは頭が良いんですよ。」
「いや、さすがステラ先輩っすわ。」
「・・・なんなんだお前は。」
軽く頭痛がしてきた。
まぁ、いい。キリも良いだろうし。
「ソフィア、中庭まで付き合ってくれる?」
「え?うん、いいけど・・・訓練?」
「うん、こいつがどれぐらい強いのかも知りたいし。」
「ん?俺が相手すんの?」
「不満か?」
「滅相もありません!」
こんな適当な奴だけど、影を一瞬で倒した奴なんだ。今の私でどれだけ戦えるのか、知りたい。