影に生きた奴が残してったモノ
「すみませーん、このお菓子30個ほどくださーい。」
「はい、毎度!」
やぁ、シンだよ。
今日は完全なオフの日、休みって奴だ。
まだ正式に部隊としての発足されてないからな。
多少の融通は効くんだ。
そんな俺が向かってるのは町はずれの孤児院。
教会がやっている孤児院だ。
今買ったのは、ちょっとしたお土産ってやつだ。
人の波をかいくぐり、目的の場所に向かう。
人通りも少なくなってきたところに、目的の教会が見えてきた。
「ごめんくださーい。」
扉をノックして、声を掛けると中から「はーい!」との返事があった。
パタパタと足音が近づいてきて、扉が開く。
「どちらさま・・・シンさん!」
中から顔をのぞかせたのは、13歳ぐらいの女の子。
「よ、ワカちゃん。元気してた?」
「はい!それはもう元気です!今シスターを呼んできますので、中に入ってお待ちください。」
ワカちゃんに促され、教会の中に入る。
「あれー!シン兄ちゃんだ!」
「シン兄!」
「にぃちゃー。」
年も種族もバラバラな子どもたちが俺を迎え入れてくれた。
「おう、ガキンチョども。元気にしてっかー?」
「元気元気!この間教えてくれた、なんだっけ・・・あー・・・ぶれいくだんす?だっけ?また教えてくれよ!」
「だいぶ腕を上げたので、剣術の腕を見てください!」
「にいちゃー。」
わやわやと子どもたちが群がってくる。
「わかったわかった、後で相手してやるから。」
俺、超モテモテ。
「こらこら、あんたたち。ちょっとは落ち着きな。」
そんな子どもたちに声を掛けてくる女性が1人。
「おー、シスター。元気でした?」
この孤児院で子どもたちの面倒を見ているシスター・マーチ。
肝っ玉母ちゃんみたいな人だ。
「誰かさん達のおかげでね。あんたからもテスの奴に気にしなくていいって伝えてくれないかい?」
テスとはテステアのこと。
ここはテステアが育った孤児院、彼女は稼いだ報酬の半分以上をこの孤児院のために使っている。
「いやー、個人の考えを否定するのはやりたくないっすねー。」
「全く、困ったもんだよ。」
呆れたようにため息をつくシスターだが、どこか嬉しそうな顔をしているのだった。
「それで、あんたは何してんだい?」
「子どもタワー。」
シスターと話している間に子どもたちは俺の腕や背中や頭に登っていた。
今、10人目だ。
「ほら!子どもたち!さっさと自分の仕事を終わらせな!じゃないと1週間便所掃除当番だよ!!」
シスターによる鶴の一声で子どもたちは「きゃー♪」と離れていった。
それだけで、子どもたちが伸び伸びと育っているのがわかる。
「さてと、ちょいと込み入った話があるさね。面貸しな。」
「いいけど、なんです?」
「あの子の話さね。」
「・・・了解。」
シスターに促され、教会の応接室に入る。
「そんで、何かあった?」
「・・・あの子は【祝福】を持ってるよ。」
「【祝福】・・・。」
シスターの言っている祝福とは特別な力って意味だ。
神様から授けられた力ってところだ。
「あの子、ニアオークとグレイウルフを狩れるよ。」
「・・・まじ?」
ニアオーク、オークの幼体みたいなもんだ。
幼体といえどその力は凄まじく、常人の10倍の筋力を持ちオークの頑丈さも併せ持つ。
グレイウルフ、通称【灰色オオカミ】
オオカミ型の魔物の中でも知能が高く、非常にずる賢い厄介な魔物だ。
両方とも危険度的にはBランク。冒険者で表すとゴールドクラス並みだ。
「発覚したのもつい最近さ。服にほんの少し赤い色が付着しててね、聞いてみたら答えてくれたよ。」
「・・・。」
「あの子を普通の子どもとして、このまま育てるのかい?」
「・・・あぁ。それがあいつの・・・。」
コンコン。
俺の言葉が終わるか、終わらないかで扉がノックされた。
「入っておいで。」
シスターが声を掛けると、10歳ほどの少女が入ってくる。
短く揃えられた白い髪に健康的だが白い肌。
「・・・・・。」
彼女の名前はノア。
オボロが残して逝った、娘だ。
オボロの最後の時、俺に託していった。
騒動の後、アカネに頼み探してもらった。
「ノア・・・。」
「・・・・・。」
彼女は俺を見て、口を開く。
「おとーさん。」
俺はずっこけた。
「いててて。だから、俺はお父さんではないって。」
「・・・?」
俺の言ってる意味がわからない、とでも言いたげに首を傾げるノア。
可愛いじゃねえか。
「俺はー、そのー、なんだー、・・・知人?」
「子どもにそんなことわかるわけないだろうに。」
「・・・でも、みんな言ってた。シン兄はノアに甘いって。」
「うぐぅ。」
痛い所を。
「・・・・いやなら言わない。」
悲しそうに下を向くノア。
しょうがねえなー!
「・・・・呼びたいなら好きに呼びな。」
「・・・うん、おとーさん。」
嬉しそうに俺の隣に座るノア。
・・・娘がいたことはないけど、父親ってこんな気分なのかなぁ。
「・・・2人で何を話してたの?」
「あんたの将来のことさね。」
シスターの言葉に首をかしげるノア。
「・・・ノアの、将来?」
「そうさ、ノア。あんたは大きくなったらどうしたい?」
「・・・大きくなったら・・・。」
うーん、と考えるノア。
ふと、視線が合った。
「・・・おとーさんみたいになりたい。」
「俺?」
うん、と頷くノア。
「おとーさんみたく、強くてかっこいい大人になりたい。」
まっすぐ、俺の目を見るノア。
だが、その目が悲しそうに下を向く。
「・・・多分、ノアはみんなよりもちょっとつよい。けど、どうやって力を使ったらいいか、わかんない。」
「・・・そうさね、学校に行くにしても基礎は大事になる。けど、ここじゃ教えることはできない。いや、教えることがないって言った方がいいね。」
「・・・。」
そりゃ、危険度Bの魔物を倒せる10歳だ。
そんじょそこらの冒険者じゃ、すぐに頭打ちになる。
それに・・・。
「ノア、お前の魔術属性って確か。」
「・・・影 。」
だよな、ノアの属性は”影”。漆黒を操る魔術、【影の一族】が持つ闇属性よりも上の魔術だ。
闇属性とは、なんというか自由度が段違いに良い。
7歳くらいの時に魔術が使えるようになってて驚いたっけなぁ・・・。
腕が立ち、特殊属性にも造詣が深い人物。
「・・・・ぐぬぬぬぬ。」
考えれば考えるほど・・・っ!
「何を意固地になってんだい。さっさと決めな。」
シスターにも釘を刺されてしまった。
「お、お、俺が教えようか・・・?」
「うんっ!!!」
今まで見たことがないぐらい笑顔で即答された。
可愛い。




