今までと、これから
「わしだって…わしだって…。」
「陛下、お気を確かに。」
端っこで拗ねたおっさんをダレダに任せる。
「それで、えーっと・・・あなたがマリオン?」
こくり、とエレノアの言葉に頷くマリオン。
「・・・私がマリオン。迷惑をかけてごめんなさい。」
「待って待って!別に謝罪を要求したいわけではないの。」
ぺこりと頭を下げるマリオンにあわてて頭をあげるように言うエレノア。
「・・・でも、私の存在があなた達に迷惑をかけた。」
「あなたがやろうとしてやったことではないでしょう?あなたも私たちに巻き込まれた側。謝罪をするのは私たちの方なのよ、本当にごめんなさい。」
「・・・・・!(オロオロ)」
自分に謝罪している王妃に対して、どうしたらいいのかわからないようだ。
「マリオン、あなたは私の遺伝子が元になって産まれたのも聞いたわ。だから「もう1人の娘か!?」お黙りなさい、貴方。・・・ダレダにも言われたと思うけど、改めてあなたを家族として迎え入れさせてくれない?」
「・・・家族。」
「今ならなんとダンディーなパパも「黙りなさい。」・・・はぃ↓↓。」
シリアスな場面でふざけたことしてる王を黙らせるエレノア。
「えと・・・。」
どうしたらいいのかわからない、と顔に書いてある。
でもま、大丈夫でしょ。優しいおねーちゃんたちがいるし。
「マリオンさん。」
「・・・ソフィア。」
「私はもう1人妹が増えてくれるとすごく嬉しいです。」
「私が妹なのかは、少し議論したいが。私もソフィアに同感だよ、マリオン。」
「・・・ステラ。」
「マリオンは私たちと一緒は嫌ですか?」
ふるふる、と首を振るマリオン。
「みんなと一緒、楽しみ。よろしくね、おねーちゃん。」
ぽわわわわ~ん。って効果音が2人から聞こえた気がする。
「「もちろん!」」
ステラまでマリオンに抱き着いてるのはおもろい。
「私のことはお母さんって呼んでね。」
「おかーさん、ありがとう。」
「ほんっっっっっとに可愛い娘たちねー!!!」
あ、エレノアさんも混じった。
「にしても、眠らされてたと思えないほど元気っすね王妃様。」
「眠らされているというよりも、時間停止に近かったからな。」
「なるほど。」
「・・・・。(じー)」
師匠と会話をしているとマリオンが俺を見つめていた。
「んお?なんじゃ?」
「・・・おにーちゃん?」
「はぅ!?!?ぐっ!ぬっ!?お、俺じゃなきゃやられてたぜ・・・。」
「膝に来てるぞ、馬鹿弟子が。」
マリオン恐ろしい子!!!
「マリオンちゃん?パパのことはー??」
「王様。」
ずーんと床に沈むじじい。
そばでダレダがワタワタしてる。
「さて、坊主。私たちはそろそろ出ていくぞ。」
収集がつかなくなってきそうだったからか、師匠が本題を切り出した。
「・・・。」
ズキン、と心臓が痛んだ。
「・・・そうか。本当に世話になった、感謝してもしきれん。何かあったら必ず力になることを誓おう。」
「あぁ、覚えておく。シン、行くぞ。」
踵を返し、出口と向かう師匠の姿を、俺は・・・。
「・・・どうした。」
「ごめんなさい、師匠。俺、行けない。」
追いかけることができなかった。
たった数カ月、一緒に過ごしただけだけど。俺は2人と一緒にいたいと思った。
「俺、もっとここにいたい。2人の力になりたい。」
「・・・未熟なお前が?自惚れるな、お前はまだまだ半人前だ。そのお前が誰かの力になりたい?力が足りずまた後悔するだけだぞ。」
「・・・・。」
師匠の言葉に思わず俯く。後悔、そう俺は自分の力のなさに後悔してる。もっと強くなりたいと思った。
「俺が半人前なのも!まだまだ弱いのも重々承知してる!だけど、そんな俺に2人は一緒にって言ってくれたんだ!そんな2人と一緒なら、俺はもっと頑張れる!」
「根性論は聞いていない。どうしても認めてほしいのなら・・・。」
俺へと向き直る師匠。
その身体からは・・・。
「こい、1発入れてみろ。」
絶対的な強者のプレッシャーを放っている。
「・・・っ。」
息が詰まる、身体が震える、嫌な汗が次から次にあふれる。かちかちと歯が鳴る。膝が震える。力が入らない。目が霞む。視界が廻る。
それでも・・・。
「「シン・・・。」」
俺はこの2人の前では最強でなくちゃならない。
踏み出せ一歩を、一秒に込めろ全てを!
「ん・・・2本?」
俺の、全てを!刹那に込めて!
「雪月花!!!」
今の俺が打ち込める最高の一撃、これ以上は出せない。
「はぁっ・・・!はぁっ・・・!」
「・・・なるほどな。」
そんな俺の一撃を、師匠は指2本で止めた。
「くっ・・・そっ!バケモンかよ。」
「そうだな、今のお前では超えられない壁だ・・・。『刹那無刀流』・・・。」
あ、終わった。
「一式。」
師匠のデコピンをくらって俺の意識は途切れた。
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馬鹿弟子の意識を刈り取った。
「・・・それでどうするの、アルター。」
いままでのやり取りを見ていたエレノアが声を掛けてくる。
「どうもこうもない。決まっているだろ。」
「あの!」
「ん?」
私に声を掛けてきたのは・・・ステラだったか?
「シンは連れて行くんですか?」
「そのつもりだったが・・・「延期にはできませんか!?」・・・おい。」
「まだ!まだシンに恩を返せていないんです!お願いします!」
「私もです!」
次に声を上げたのはエレノアの娘だった。
「シンには迷惑も負担もかけて、そのままお別れはしたくないんです!お願いします!」
「いや、だから・・・!」
「「お願いします!」」
「話を聞け小娘どもが!」
「うふふ、落ち着きなさい2人とも。アルターが困ってるわ。」
エレノアの一言でやっと小娘どもが顔を上げる。
あの馬鹿弟子のどこが良いのやら・・・。
「調べねばならんことがあるからしばらく拠点が必要だった。頼めるか坊主。」
「・・・構わないが、そいつを置いていくのか?」
「あぁ。」
「はぁ、気に食わんが。そいつも一応恩人ではあるからな。こっちで面倒を見てやる。」
「頼んだ・・・私は出発する。」
後ろを振り向かず、出口から出る。その私についてくる奴が1人。
「・・・なんの用だ、ミャスタ。」
「いえ、『羅刹』と恐れられたあなたが大分丸くなられたようだったので?」
「『影ナル者』が何をほざく。・・・弟子の成長を感じただけだ。」
「シンさんですか?」
「・・・前までなら、指なんか使わなくても充分だった。」
「あぁ、それが指2本ですか。」
「・・・短い間にあいつなりの成長が見えた。」
「誰かのため、それが彼の原動力では?」
「・・・そうだな。」
思い出すのは、あいつが「強くなりたい」と言い出した日。
「『誰かを助けれる男になりたい。』・・・だったか。」
「え?」
「なんでもない。少々頼りない奴だが、たまに揉んでやってくれ。」
「承知いたしました。すぐに追い抜かれてしまうかもしれませんが。」
「実戦から離れたからだ。」
まだ子どもだと思っていたが
「・・・子の成長とは早いものだな。」
「・・・。」
「見送りはここまでで結構だ、じゃあなミャスタ。」
「はい、アルター様もお身体にお気をつけて。」
「あぁ。」
アルターが去った後にミャスタが呟いた「母親ですねぇ・・・。」はアルターの耳には届かなかった。
これにて序章が終了。次は数年後の未来にとぶかも。




