再開×親ばか×男
あの後、穏やか~に時間が過ぎ、夜も更けたのでステラに肩を借りて、ベッドまで運んでもらった。
物事が解決に向かっているからか、ステラはめちゃくちゃ物腰が柔らかかった。。
毛布も掛けてくれて「おやすみ。」と微笑みながら言われた時は、すんごくドキッとした。
一夜明け、早めに目が覚めた俺は現在シャワーを浴びているんだが・・・。
「・・・ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
絶賛声にならない悲鳴を上げている。
何やってんの、何やってんの俺!目と目を合わせて笑うとか!冷静になってみるとめちゃめちゃ恥ずかしいことしてるじゃん!?いやね、嫌というわけではないし、すっごく落ち着く時間だったけどさ!今日も顔を合わせるんだよ!?どんな顔してステラに会えばいいんだ!?!?
現在進行形でパニック、冷静になりたくてもあの顔を思い出すだけで、頬が熱くなる。
でも・・・。
「・・・可愛かった、な。」
『シン?こっちにいるのか?』
「はお!?!?!?」
『すまない、扉をノックしたが反応がなかったから。心配で様子を見に来たんだ。』
「あ、あぁ!大丈夫!一晩寝れば元気になるんだ、俺!」
『ならよかった。それじゃ・・・。』
「あ、ま、待って!」
つい呼び止めたけど、呼び止めてどーすんだよ!?
『どうかしたか?』
「あ、いや、そのー・・・昨日はありがとう、って言い、たくて。」
『気にするな、私が勝手にやったことだ。』
「あ、後ー、そのー・・・昨日のことは内密に・・・。」
『ふふ、わかってる。昨日のことは2人だけの秘密だ。』
どこか嬉しそうな声で返事をくれたステラ。
単純に俺の弱点を知れたからなのか、それとも・・・2人だけの秘密だからなのか。
どっちなのかを確認するなんて、出来るわけがなかった。
『また後で。』
「・・・おう。」
人の気配が薄れていき、扉が閉まる音が聞こえた。
「ハァ~~~~~~。」
なんでこんなにドキドキしてんだ。
「顔合わせづれぇ・・・。」
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朝食の用意ができたとミャスタに呼ばれて来てみると、ステラ、ソフィア、マリオンがいた。
ステラとソフィアが座ってて、マリオンの隣が空いていたのでそこに座る。
ステラとはちょっと席が離れててよかったと思う。が
「・・・・なにかあった?」
「なんにもない。」
隣に座ったマリオンが不思議そうに俺とステラを見てた。
やめてほしい。
朝食を食べている途中で師匠も合流、一息ついた所でダレダも来た。
今から王と王妃が眠る部屋へと向かう。
人目につかない隠し部屋に入ると、2人の男女が眠っていた。
1人はソフィアとマリオンにそっくりな人。一目で血縁だとわかる。
もう1人は顔色が白く、頬もこけていて死んでいるのではと、一瞬疑うほど弱っていたが呼吸はしている。
元気な姿だったら、勇ましく威厳のある王だったことが伺える。
「お母さん・・・。」
「・・・。」
ソフィアとステラも心配そうだ。
「んで、どうやって眠ってる2人を起こすんです?それに王妃様は自然に目覚めるんじゃ?」
「その予定だったのだが、アルター殿の準備が整ったとのことでな。」
ダレダの言葉で師匠に視線が集まる。
「面倒ごとはまとめてやるに限る。」
「また雑なんだから・・・副作用とかないんすよね?王妃様はともかく王様は・・・」
「ん。」
これを見ろと言わんばかりに、差し出された師匠の手には水が入った小瓶があった。
「・・・もしかしてー??」
「バーレスの涙。」
「”精霊龍の雫”やんけ!えらいもん準備しましたね師匠!!!」
魔物と違い意思の疎通が可能な龍族。
その中で極稀に生まれる精霊に愛されし龍を精霊龍と呼ぶ。
会うどころか、その存在を感じるだけでも難しいと言われる幻の龍、その涙。
ありとあらゆる呪いや呪術を跳ね除けると言われている品物。
たったの一粒でも数万金貨の価値がある。それが小瓶で、価値もつけられん。
「そ、それは大変貴重な物を・・・本当によろしいのでしょうか?」
ダレダでさえ、若干震え声になってんのよ。ミャスタも目を見開いているし。
鋼鉄の心臓を持つ2人でも特大に驚く代物。
「かまわん、道具は使わなければただの置物だ。」
そう言って、王夫婦のそばに歩み寄りながら小瓶を開ける師匠。
この人のこーゆー所はほんとーーーーに尊敬する。
「さっさと目を覚ませ、寝坊助共が。」
一切のためらいもなく、小瓶の中身を2人に振りまいた。
雫がそのまま2人に掛かると思いきや、空中で雫の動きが止まった。
そして、一粒一粒が意思を持っているように、ベットの周りを回る。
赤や青、オレンジ、黄色、紫と白など一粒ごとに輝きが違う。
「・・・・?」
「どうした?」
幻想的な光景にみんなが気を取られている中、ステラが周りを気にしていた。
「声が・・・。」
「声?」
「あぁ、『危ないね?』とか『こっちの方は黒に食われかけてる』って。子どもみたいな声が聞こえる。」
「んー・・・俺は何も聞こえないな。」
様々な色に光る雫が踊るように動き回っているはいるが声は聞こえないし、変な気配も感じない。
「確かに聞こえるんだが・・・『そっちの子のは離せない』?」
・・・少なくとも、俺には聞こえない何かをステラは感じ取っている。
その何かは俺の中にあるモノもわかっているっぽい。なら正体は
「・・・すげぇな、精霊の声が聞こえるんだ。」
「精霊の声?」
「俺もよくわかってないけど、この世界にいる目に見えない力の源らしい。意思を持った力ってのが精霊。精霊自体、滅多なことで人のいる場所には現れないってことらしいけど、今回は精霊龍の雫を使っているからそれに引っ張られて来たのかも。もっとも、精霊の声が聞こえる人なんて聞いたことないけどね。」
「・・・。」
ステラはじっと目の前の光景を見つめている。
徐々に動きが緩やかになっていき、雫の回転が収まるとパッと消えた。
「「うぅ・・・。」」
「陛下!」
「お母さん!」
どうやら精霊龍の雫はその役目を果たしたようだ。
眠っていた2人がゆっくりと目を覚ます。
「ダレダ・・・か?あれからどうなった?」
「陛下、もうよいのです。問題は解決できました。」
「解決できた・・・それは・・・「貴方・・・?」エレノア!?」
目を覚ました王は隣で横になっている王妃に気付いた。
「待て、何故お前が、いや・・・解決した、と言ったな・・・すまない、少し取り乱した。ダレダ、現状を教えてくれ。」
「はい、陛下。長くなりますが・・・。」
落ち着いた王にダレダは今まであったことを話した。
犯人はヨハネスであったこと。暗部であった影の壊滅。
どうにかするために、ソフィアの存在を明るみにしてしまったこと。
全ての責任は自分にある、とダレダは締めくくった。
「・・・そうか、どうやら相当負担をかけてしまったようだな。」
「私もみんなに迷惑をかけてしまったみたい。」
王と王妃エレノアさんが師匠を見る。
「そなた達には多大なる恩ができてしまったな、アルター殿。」
「気にするな、坊主。」
「私を坊主と言える存在など数える程もいないのだが、その姿で言われるのは慣れんな。」
「では、そちらの若人たちは。」
師匠に向いていた視線がステラを見た。
「あの子はステラ、私とソフィアのもう一人の家族。」
王妃に教えられ、王は目を見開く。
「私には娘が二人いたのか!」
・・・・・・・・ん?
「貴方、落ち着いてください。彼女はアルターが私たちの所に預かってくれって連れてきた子なの。」
「養子か?それでも私の娘であることに変わりはない。」
んーーーーーーー???
「2人とも今まで苦労を掛けてすまない。今日から何不自由させん、安心してパパに任せなさい。」
確定この人「娘バカ」や。
「ごめんね、2人とも。娘に会えなかったのが相当堪えてるみたい・・・。」
聖母のようなエレノアさんの笑顔が引き攣っている。
「それで、君は何だい?」
まっすぐと俺を見る瞳にハイライトがなかった。
え?ラスボス?
「えっと、私は「死刑。」待てやじじい。」
ロールプレイ「いい子ちゃん」を使用しようとした矢先にこのじじい。
「俺に立てついたな小僧!死刑!!!」
「敬ってほしいならそれなりに威厳見せろやじじい!!!」
ガルルルルルル!
「・・・この馬鹿は私の弟子だ。私に断りなく”私刑”をするなら私も考えねばならないが?」
「む!」
「えっと、お父さん?シンは私たちの命の恩人なんです。」
「むむ!」
「貴方、ダレダも言っていたでしょう。彼がいたからソフィアも無事だったし、計画も上手くいったって。」
「むむむ!」
「失礼ながら陛下、エレノア様のおっしゃる通りでございます。」
「むむむむ!」
「シンのおかげで私も動きやすかったです。」
「むむむむむ!」
非常に、ひっじょーーーーーに複雑そうな顔をしている王。
「ふん!ならとっとと帰れ!去れ!」
「貴方?」 「坊主?」 「お父さん?」
「ご、ごめんなさい。言い過ぎました・・・。」
悲しきかなこの場にいる女性陣は俺の味方であった。