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A fool is not necessarily a fool.~愚者が必ずしも愚かとは限らない~

「ミャ、ミャスタさん?」


ソフィアが驚きの声を上げる。それもそうだ、俺がわざわざ警戒するようにと声を掛け、3人で覚悟を決めたのに。


そこに現れたのは、メイドのミャスタさんだった。


「先ほどぶりですね、お三方。ご無事で何よりです。」

相も変わらず、表情は真顔で真意がわからない。


彼女が敵なのか、味方なのか・・・。

その答えは意外な奴がくれた。


「ミャスタ・ワイルズ・・・だと?貴様、どうやってここに来た。」


そう、ヨハネスだ。

仲間であれば、警戒する必要などないはず。

けれど、ヨハネスはミャスタさんのことを警戒している、仲間ではない?


「外にいた奴らはどうした。」

ヨハネスの声には抑えきれない苛立ちが滲み出ている。


「私がここにいますよね?」


「貴様以外に誰がいる!」


「そういうことです。」


ミャスタさんはヨハネスの問いかけに対し、表情一つ変えずにさも「それが答え」みたいな口調で答えた。

・・・・・うん、全く質問の答えになってない。


その言葉は、ヨハネスにも全く意味不明に聞こえたようだ。

こめかみに青筋が見える見える・・・。


「そういうこととは!どういうことだ!!!」

ヨハネスは苛立ちを覚えながらミャスタさんに問う。

そんなヨハネスに、非常にめんどくさそうにため息をついた。


うわ、腹立つあれ。


「めんどくさいですね。あなたの計画は全て筒抜けだった、それだけのことです。」


ミャスタさんはただ淡々と告げた


俺たちにとって衝撃だった以上に

ヨハネスにとって、それはそれは衝撃的な告白だったようだ。

奴の表情からわかる。

『これまで周到に準備してきた私の計画が、全て漏洩していた?一体誰が、どのようにして?』

って顔をしてる。


そんなヨハネスの内情を知ってか知らずか、ミャスタさんは次々と話を続ける。


「何度も言ったんです、『とっととやっちゃえー』って。それでもあの怠け者は動きやがりませんでした。何をチンタラしてるのかなと思ったら、『時が来るのを待っていた』と。やっとですよ?やぁっと動き出したんです、あの意気地なし。」


ミャスタさんは何でもないように言っているがその言葉が指すのは、現状を知る誰かがいること。

そして、すでに対策が完了しているということ。


「あぁ、そうそう。お2人に着させていただいたドレスは特殊な素材で作っており、動く際も違和感はなかったと思いますが、いかがですか?」


「・・・どう?」


「・・・確かに、動きやすくて戦いやすかった。元々来ていたドレスならだいぶ戦いづらかったと思う。」


「・・・魔力の通りも良かったと思います。イメージがすんなり具現化できましたし・・・。」


つまるところ、最高の装備をこの2人に準備してくれていたってことだ。

それは「お前たちが気付かないところでもこっちは手を貸してやってんぞ。」って言ってるに等しい。

・・・一体どこからどこまで知ってんだ、このメイド。


「ふざけるな!!!」


こちらのやり取りに、無視されていたヨハネスがたまらず声を張り上げた。


「私の計画が漏れていただと!一体何時だ!そんな冗談は笑えん!」


「・・・不自然に思われていないのも、日頃の行いの賜物ですかね。」


はぁ。とため息をつくと、ミャスタさんは指を1つ立てた。


「1つだけ、変だと思わなかったのですか?自分の計画にノイズがあった、と。」


「ノイズだと・・・?そんなものは・・・いや、違う?ま、まさか。」


「おや、思い当たっただけでも素晴らしいことですよ。」


「い、いや、ありえん。奴は・・・何者でもない!いや・・・()()()()()()?・・・違ウ!?いや、違わない?」


・・・なんだ?

コロコロ変わる、感情と表情。

相反する2つの感情が入り乱れてる・・・混じってる・・・いや、()()

よくわかんねぇ。

違ウ、違わない。と繰り返し呟くヨハネス。


「・・・ほら、出てきてください。これを待ち望んでいたのでしょう?」


ミャスタさんが道を開け、その背後の暗闇から現れたのは


「・・・・・・・・。」


三頭身のおっさん、ダレダだった。


「ダレダ?お前如きが?いや、お前ダから?」


周囲からの評価は低く、酷評されているダレダ・ダレッサ。

出会った時のおどけた調子だった人とはまるで別人。ここにいる全員が、尋常ではないほどのプレッシャーを感じている。


そう、愚者などではない。強者のプレッシャーだ。


静かに、しかし重々しい口調が響く。

「・・・私は、待っていた。主である王を救える日をずっと。」


「貴様が救う?お前如きが!・・・お前ダからデきるのか?」


「そうだ、私だから出来るのだ。ヨハネス。」


「そうか!やはりお前がか!片翼共のコードを言っタのも!マリオンを見つケ出したのも偶然ではなかったわけか!」


ヨハネスの様子がどんどんおかしくなっている。

鬼気迫る様子というか、単純に計画を邪魔されたからってだけでは説明がつかないほど感情が荒れてる。


「「・・・・・。」」


それを見ていたステラとソフィア、2人とも不安になったのか。

意識してないだろうけど、俺の服をつかんでいる。

気持ちはわかる、いつもならドギマギするけど俺にもそんな余裕はない。


「・・・ヨハネス、もう辞めにしないか。」


「なんだと・・・?」


にらみ合う両者、先に沈黙を破ったのはダレダだった、

まさかの停戦勧告に、荒れていたヨハネスも幾分か冷静になった。


「もう、お前に勝ちの芽はないのだ。諦めて投降してくれ。」


「何を言っている?勝ちの芽がない?ふざけるな!まだこちらには王妃という存在がいるのだぞ?それを放っておけるのか?おイては駄目だ!」


「それなら、もうすでに済んでいる。」


ダレダでも、ミャスタでも無論俺達でもない。第三者の声が聞こえた。

・・・あれ?この声って。


「次は誰だ!どこにいる!」


「ここだ愚か者。」


2階のバルコニーからこちらを見下ろすフードを被った一つの影があった。

襟足ちょい長めの短い銀の髪!薄く日に焼けた肌!猛獣のように獲物を狙う瞳!そして我こそ絶対と言いたげな態度!間違いねぇ!!!あれは!!!!!


「師匠!?!?!?何してんすか!?!?」


「師匠・・・ってあの女性がですか?」


「間違いねぇ!俺の身体がブルってやがるぜ・・・!」


くそぅ!あの顔を見るとボコボコにされた記憶が蘇って身体が震えるぜ!

そう、あの人が俺に戦い方を教えてくれて、俺を2人の元へ投げ飛ばした張本人。


「元気そうだなバカ弟子。何してるも何も、そこの髭に頼まれたからエレノアの行方を探ってたんだ。・・・目標は確保、ついでにこの国にあった『凶翼』の支部は壊滅させた。」


「お母さんは無事なんですか!?」


「・・・お前は・・・そうか、エレノアの子か、安心しろエレノアは無事だ。・・・隣の娘は・・・。」

じろりとステラをみる師匠。


「な、なん、です、か。」


わかる、あの目に見られると自分が獲物なんだと実感させられる。うんうん。


「まるっきり的外れのことを考えてる糞弟子は後で締めるとして。そうか・・・でかくなりおって。」


「師匠ー!?理不尽すぎません!?!?あと、後半何言ったか聞こえねーっす!ねぇ!!無視しないで!!!」


「ふざ、ふふふ、ふざけるな!!!!」


あ、師匠の登場でヨハネス忘れてた。


「わた、私の計画が!あの方の理想が!貴様らに邪魔をされてたまるか!」


「・・・ヨハネス。」


最後の切り札まで奪われ、それでもなお、敗北を認められないのか。


「おい、髭。」


「・・・わかっています、アルター様。ミャスタ。」


「なんですか意気地なし、私に何か「なにもするな。」・・・かしこまりました、主様。」


一歩、ダレダが距離を詰める。


「来るな!嫌だ、やっテくれ!」


「・・・せめて苦しまぬように。」


「やめろ!やレ!」


キン、と夜が支配する広間に音が響いた。


ダレダのそばにヨハネスが倒れている。

その身体は、未来永劫目覚めることはないだろう。


「・・・・おぬしが私を、友と呼んでくれたこと。決して忘れはせぬぞ。」


かつて、愚か者を演じていた自分を、優しく受け入れてくれた友。

友の最後に、男は一粒の雫を垂らす。

ダレダこいつ。

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