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ミドリノキノコ5

そこにはドアが付いていなかったのだ。ぽっかりと小さな部屋だけが開け放たれていた。

そこはまるで、ネットカフェの一室の様だった。

ドアの付いていないネットカフェの個室。

そう思ったのはパソコンが一台置いてあったからだ。

ノートパソコンでなく、デスクトップタイプで、今ではほとんどのパソコンは液晶だと言うのに、やけに古めかしいブラウン管タイプのでかい画面だった。

俺だって、昔親父が使っていたヤツとか、教科書で見たことあるヤツだ。

小学校で少し触ったのだって、ノートパソコンだった。

まあ、夢だからな。

俺はもうこの辺りでこの夢に慣れてきていた。

こんな古びたボロい小屋に合わせた雰囲気になっているのだろう。


しかし、妙な点はそこだけではなかった。

もうここまで来れば、こんな小さな事は気になる点には入らないのだが、俺は気になって仕方なかった。

パソコンの周りにびっしりと、壁一面に張ってある紙。

大きさはスーパーのチラシ並みに大きなものから、手の平メモ帳サイズまで。

大きな写真がデカデカとセンターを取って、その上に「急募!」などと赤字で書き込まれたものから、これもびっしりと何か描かれているものまで。

本当に様々だった。


その部屋の前は一瞬しか通らなかったけど、電源が点けっぱなしの青くゆらゆら光る画面に照らされた張り紙達が占拠する部屋に、俺はこの夢を見てから、初めて興味を惹かれたのだ。

前の男は無言でひたひた歩いて案内している。

俺は興味を持ったが、何故か尋ねるという発想はわかなかった。

気になる。

ただそれだけだった。


一通りぐるりと回った後、


「そうですねえ、初めてのあなた様にはこちらなどいかがでしょう」


案内された先は一つのドアの前だった。

何の変哲もない。

普通の木製の色の塗られていない方のドアだ。

取っ手の真鍮はボロボロに剥がれていた。

その癖ドアの木はそんなに痛んでいないらしい。

傷もない。

相変わらず薄暗い事も、何も変わらない、オレンジの電球の下の廊下の一つのドア。


「へえ。ふうん。ここには何があるんだ?」

「それは、開けてのお楽しみでございます」

男は愉快そうに口角を上げて茶色い歯を見せてニタニタ笑った。

本当に薄気味悪い。

そう思うと同時に、どうでも良い疑問が頭を過った。

こいつはここの変な会員制クラブみたいなこの家を、一人で案内しているのか?

本当にどうでも良い。

この疑問もすぐにどこかに消えた。

ここでは疑問なんて意味はない。

 

男が丁寧な仕草でガチャリと取っ手を下げて、ドアを開けた。

そうだ、ここのドアには、一つも鍵が掛かっていない事に今気が付いた。

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